物価高がペットを脅かす
オーストラリアの都市アデレードに住むKaren Mooreさんは、猫の養育ボランティアをしています。自宅にはすでに9匹の猫がいますが、最近ある家族から「経済的に苦しいので、ペットを手放したい」とのメールをもらいました。
「物価が上がっていて、以前の2倍ほどになっています」というKarenさん。
困窮者に食品を提供しているFoodbankの調査によると、4人に1人がペットの餌代のために自分の食事を抜いていると答えています。
また過去1年間に経済的事情でペットを手放した人が14%にのぼりました。飼い続けている場合でも、8%の人が慈善団体から餌を寄付してもらっているといいます。
「本当に心が痛みます」というKarenさん。取材中に送られてきたのは、次のようなメールでした。
「うちは経済的に苦しく、犬を飼い続けられません。残念ですが、引き取ってくれる家庭を探すことにしました。でもなかなか見つかりません。犬も気づいたのか、不安そうにしていてずっと家の中に籠っています」
ペットの放棄や犯罪も発生
Karenさんは動物保護団体「Paws and Claws Adoptions」のために養育ボランティアを続けてきましたが、最近になって飼っていたペットを手放す例が急増しているといいます。
「子猫を生んだばかりの母猫が捨てられて、空き家になった賃貸住宅に置き去りにされました。経済的に世話ができないとか、引っ越し先の住宅ではペットを受け入れてもらえないなどの理由で、このように捨てられる動物が増えています」
Karenさんは続けます。
「人々は、自分の子とペットのどちらに食べ物を与えるかの二者択一を迫られているのです。本当に惨酷なことです。ペットは家族みんなを幸せにしてくれます。それなのにどちらかを選ばざるを得ないなんて、なんて悲しいことでしょうか。ペットを捨てると決めたとき、子どもたちはひどく悲しむのです」
「ペットフードの価格は少なくとも以前の2倍になりました。でもそれだけでなく、毎年のワクチン接種やノミ退治の薬剤など、次々に必要なものがありお金がかかります」
この経済状況で、ペットフードが盗まれるという事件も起こっています。先日も、South Australia警察は3人のティーンエージャーを逮捕しました。キャットフードを数箱盗んだ容疑でした。
工夫と努力で克服を
FoodbankのGreg Pattison地区代表は、「援助を受ける手立てもあるので、ぜひ利用してほしい」といいます。
「Foodbankでは人間の食品だけでなく、ペットフードも用意しています。調査によると、このことを知っていた人は9%しかいませんでした」と彼は話しています。
ほかにも、ポイントサービスやペット保険を利用してコスト高に対処する方法もあります。南オーストラリアに住むDeb Cleggettさんは、こうした工夫でペットにかかる経費を少なくする努力を続けています。
「ポイントを使って地元のペットショップで餌を買い、できるだけ出費を抑えています。毎月同じ店で購入すると、割引が受けられるのです。ここで買った良質なフードに、スーパーマーケットで入手した安いフードを混ぜ、合計金額が下がるようにしています。味も変わるので、猫はよく食べてくれますし」とDebさん。
同時に彼女はペット保険料も払い続けています。もし不測の事態で多額の医療費がかかっても、保険がカバーしてくれるからです。
世界各国でまだまだ続きそうなインフレーション。愛するペットを守るため、飼い主のたゆまぬ「工夫と努力」が欠かせないようです。
出典:'Petflation' forcing Australians to surrender their beloved pets as food and vet bills rise
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