外を出歩く猫は、野生動物にとって脅威
アムステルダム市当局は、外を出歩く猫に首輪か鈴を装着することを義務付ける方針です。猫が近くにいることを、鳥などの野生動物が気づきやすくするためです。
この規制案は、オランダの首都としてアムステルダム市が「動物にやさしいまち」であり続けるための実施計画の一部です。現在は、さらに詳細な議論が進められています。
猫はほかのペットと違い、自由に市内を歩き回って鳥などを襲っています。Wageningen大学の研究者によると「飼い猫は年間約1800万羽の鳥を殺している」というのです。
同市はまた、野良猫の数を減らすため飼い主に向けたキャンペーンとして、猫へのマイクロチップ装着と不妊手術を奨励する活動を始めます。野良猫を捕まえて不妊手術したあとは、猫たちを「野生動物が危険にさらされている地域」には戻さないことも決めています。
政府を相手に「断固とした措置」を求める訴訟も
これまでも、飼い猫が野生動物に与える悪い影響を減らそうとする努力が行われてきました。
2021年には、「Huiskat Thuiskat財団」が、猫を屋外で自由に歩き回らせている飼い主に対して断固とした措置をとるよう、政府を相手に訴訟を起こしています。この財団は、今回のアムステルダム市の「鈴の装着案」を歓迎しているものの、殺される野生動物の数が33~50%程度減るだけだと想定しています。
生態学者たちも猫の室内飼いと外出禁止を求めています。2019年、Tilburg大学の環境法教授Arie Trouwborst氏とHan Somsen氏は、「Journal of Environmental Law」誌に論文を掲載し、「家猫がオランダ国内の約370種の野生動物に深刻な脅威を与えている」と説明しています。
ヨーロッパ各国は「The European Bird and Habitat Directives」(欧州鳥類生息地指令)のもとで、野生生物を保護する法的義務があるのだから、「猫が出歩いて野生動物を殺すことを見逃すことは違法である」と教授らは考えています。
飼い主探しにも役立つ「マイクロチップ」
オランダ政府は、国内のすべての飼い猫にマイクロチップを装着させることで、飼い主がすぐに判明できるとともに、野良猫への対応も迅速化できるとしています。
国内には約290万匹の飼い猫がいて、そのうち毎年6万匹が行方不明になっているといいます。一方、野良猫問題に対処するために地方自治体は年間480万ユーロ(約7億6千万円)も支出しているのが現状です。
一般社団法人「ペットフード協会」の2020年調査によると、日本における猫の完全室内飼育率は79.6%と高くなっていますが、希少な野生動物を守るために、この割合を増やしていく努力が世界各国に広がる動きは、今後も続きそうです。
出典:Amsterdam to ask cat owners to give their pet a bell
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