猫の「糖尿病」とは?
猫の糖尿病は人間と同じように、血液中のブドウ糖(血糖)が正常値よりも高い状態が続く病気です。通常血中の糖は、膵臓から分泌される「インスリン」という物質によって調節されています。
しかしさまざまな原因によって、インスリンが分泌されない・インスリンの分泌量が少ない・インスリンが分泌されているのにちゃんと使われていないといった状態になると「糖尿病」になるのです。
そして糖尿病は、次のような2つのタイプに分けられます。
【1型糖尿病】
膵臓のランゲルハンス島β細胞(インスリンを分泌する部位)が破壊され、インスリンが分泌されない、または分泌量が不足する。
【2型糖尿病】
インスリンの分泌量が正常でも、インスリンに対して抵抗性を示し、血糖値を正常に下げることができない状態。
1型糖尿病の場合は根治は難しくインスリンの注射をしながら血糖値のコントロールをします。2型の場合は完解する可能性もあります。なお猫の糖尿病はほとんどが2型と言われています。
また猫の糖尿病は犬の糖尿病と比べても発生頻度は高く、近年増加傾向に。とくに7歳以上の中高年期のオス猫に多く見られます。
猫の糖尿病の原因5つ
猫の糖尿病の原因には、たとえば次のようなものが考えられています。
1.肥満
体重過剰となると、脂肪組織がインスリンの働きを妨げ糖尿病のリスクが増加します。肥満は特に糖尿病の発症と密接な関係があります。
2.遺伝
トンキニーズやバーミーズといった特定の猫種は糖尿病を発症しやすいといわれています。
3.ストレス
猫はストレスがかかると血糖値があがります。一時的であれば心配はありませんが、慢性的なストレスにさらされると血糖値が上がった状態が継続することになり、糖尿病を発症するリスクがあがります。
4.食事
肉食動物の猫は、人や犬とは違って「炭水化物」を主なエネルギー源としていません。そのため炭水化物をたくさん与えていると血糖値が上がりすぎてしまい、糖尿病のリスクを高めることに…。
5.膵炎
膵炎は膵臓の組織が炎症を起こす病気のことです。膵臓は消化酵素やホルモンの一部を生産し、特にインスリンの分泌には重要な役割を果たしています。
しかし膵炎に罹患すると、膵臓の正常な機能が妨げられインスリンが出にくくなり、血糖値の異常上昇などの症状を引き起こすようになるのです。
猫の糖尿病の症状は?
猫の糖尿病は、次のようないくつかの特徴的な症状があらわれます。
代表的な症状
【多飲多尿】
糖尿病の猫は、糖が含まれた尿をします。体の水が糖にひっぱられてしまうため多尿がおこり、それによって多くの水を飲む、多飲多尿という症状がおこります。
【体重減少】
猫が糖尿病になってしまうと体内で糖が効率的に利用されなくなり、結果として食べているのに体重が減少する状態になります。
【食欲増進】
糖尿病の猫は食欲が増えることがあります。これは糖がきちんと吸収できていないため、体内で「エネルギー不足」の状態になっているからです。
そのほかの症状
【毛艶が悪い】
体の中で糖がうまく吸収されないと、被毛や爪を作るたんぱく質もエネルギー源としてたくさん消費されてしまうため、被毛に艶がなくなったり爪が割れやすくなったりします。
【異臭のする尿】
糖尿病が進行し「ケトン体」という有害な物質が発生するようになると、甘酸っぱいにおいがする尿が出ることがあります。
これらの症状が一つ以上見られる場合は、獣医師の診察を受けましょう。とくに糖尿病が進行して、ケトン体が血液中に増え過ぎてしまう「糖尿病性ケトアシドーシス」の状態になっていると、非常に深刻です。
猫の糖尿病の治療法は?
猫の糖尿病の治療法は、獣医師の診断と指導に基づき猫の個々の状態に合わせて調整されます。一般的な糖尿病治療法は、次のようなものです。
食事療法
食事は猫の糖尿病管理において非常に重要です。低炭水化物で高タンパク質の食事を摂ることで、血糖値をコントロールします。
運動
猫に定期的な運動を取り入れることは、体重管理や血糖値の調節に効果的です。運動により筋肉が活性化されブドウ糖の代謝が促進されたり、ダイエットにも役立ちます。
インスリン療法
糖尿病の猫のほとんどは、インスリン注射が必要な場合が多いです。正確な投与量とタイミングは獣医師によって調整されますが、1日1~2回決められた量を飼い主が自宅で愛猫に投与します。
猫の糖尿病治療は継続的であり、飼い主の積極的なケアと獣医師との密な連携が必要です。猫それぞれに合わせた適切な治療を行うことで、完治は難しくても、猫のQOLをある程度守ることができます。
まとめ
猫の糖尿病は予測不可能な病気ではありますが、飼い主の「気づき」と「ケア」が猫の健康を守る鍵です。
肥満や遺伝的な要因に留意し、今回紹介したような症状が見られたらすぐに適切な治療を受けるようにしてください。
また日ごろから肥満にさせない・ストレスをかけさせないといった、糖尿病の予防につながることを意識するのも大切です。
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