猫との生活をもっと幸せに送るために。
今回の猫壱よみものは、獣医師で米国獣医行動学専門医であり、そして猫愛にあふれる入交先生のご寄稿第6回です。
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今回は第5回の「猫のトレーニング」について、続きになります。
ぜひ前回の内容もチェックしてみてくださいね → こちら
猫との生活を送る上での知識や、解決策のヒントがたっぷり詰まっていると思います。
「猫が幸せ、私も幸せ」な毎日の実現に、お力添えできますように…。
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ハズバンドリートレーニングとは?
トレーニングの技術を用いて、「ハズバンドリートレーニング」をなさる方がたくさんいらっしゃいます。
いわゆる健康を維持するのに必要ないろいろなお手入れやハンドリングを嫌がらせることなくできるようにするためのトレーニングです。
猫の場合、爪切りや歯磨きを苦なく喜んで受け入れてくれたらどんなに楽しいかと思いますよね。
このお手入れを受け入れるトレーニングである「ハズバンドリートレーニング」は、動物園でも最近よく飼育員さんが使っている技術です。
動物園で例えばトラの健康診断のために採血をしたいとします。
トラを押さえつけて血を抜くことは危険でできませんし、採血のたびに、健康診断のたびに、全身麻酔をかけるのもトラにも飼育員にも負担がかかって大変です。
そのため、今は採血をはじめとする健康診断を動物園の獣医さんがスムーズに行えるように、飼育員さんたちが合図でトラがケージの横に来させて、しっぽを自ら出させて、動かずにケージの外から採血している間動かないでいさせる訓練をしたり、歯を見るために、コマンドで口を開けて中を見せてもらえるように訓練したり、爪を整えるために手をケージの特定の場所に手足をおいて、爪の手入れをじっとしてさせるような練習をさせています。
すべておやつや大好物のフードを使って、こちらの指示があったら、ここに動かないでじっとしていたら、怖くないし、美味しいし、お手入れは気持ちいいよ、ということを教える技術です。
ご興味がある方はぜひオンラインで動物園のハズバンドリートレーニングを調べてみてください。
多くの動物園や水族館が取り入れていますし、実際に訓練している様子を見せてくれるところもあります。
YouTubeで配信しているところもあるので探してみてください。
ハズバンドリートレーニングは、猫にもできる?
さて、動物園の大きな動物でもできるこのハズバンドリートレーニングはもちろんみなさまの猫たちにもできます。
例えば爪を切る間、じっとして手を出していてくれたら最高です。
その練習として、まずは目の前で決まった座布団に座ることをおしえ、そのあと、爪切りを持ってもおとなしくしているように教え、爪切りを持って、猫の手を触ることを教え、爪切りを持って猫の手を持ち上げることを教え、爪切りを持って猫の手を持ち上げて猫の手に爪切りで触れることを教え、次に爪切りで猫の爪を1秒撫でることを教え、こんな感じで少しずつおやつを使って1歩1歩爪切りへの道を教えていきます。
いきなりハズバンドリートレーニングをうまくやることは難しいので、まずは一般的なトレーニングで楽しい時間を一緒に過ごし、猫が、「家族とトレーニングゲームは楽しいな」「もっと色々教えてくれないかな」と思ってくれるところまでいかないと成功しません。
トレーニングを一緒に楽しくできてコミュニケーションが取れるようになったら、ハズバンドリートレーニングに挑戦してみてください。
トレーニングは技術なのでこの文章だけではなかなか理解出来ないと思います。
実際に成功させるのも難しいと思います。
これを読んで興味があると思ったら、ぜひ教えてくださるトレーナーの所に教わりに行ったり、犬のトレーナーの技術を見学して、自宅で猫で教わった方法を応用するような方法で学んでみてはいかがでしょうか?
犬も猫も極端にいえば人も同じ動物ですから学習する過程や基本は同じです。
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入交眞巳先生 プロフィール
どうぶつの総合病院 行動診療科 主任(獣医師・獣医学博士)
米国獣医行動学専門医(ACVB)、学術博士
東京農工大学 動物医療センター 特任講師
著書:猫が幸せならばそれでいい:猫好き獣医さんが猫目線で考えた「愛猫バイブル」