春の池で、黒いオタマジャクシがひとかたまりになって水底を泳いでいるのを見たことがある人は多いでしょう。
ヒキガエルのオタマジャクシが群れるのは、捕食者から身を守るためと考えられています。
京都大学の研究チームは、アズマヒキガエルのオタマジャクシを1匹だけで育てると、相手が兄弟でも他人でも仲間のそばで過ごす時間が減ることを明らかにしました。
多くの動物で知られる「血縁を見分ける能力」にもとづく兄弟びいきは、今回の実験では見られませんでした。
研究チームは育て方と水を変えた4通りの飼育で幼生を育て、兄弟の群れと他人の群れのどちらに寄るかを確かめています。
研究内容の詳細は2026年8月6日に『Animal Cognition』にて発表されました
目次
- 水道水でも池の水でも、兄弟びいきは出なかった
- ぼっち育ちは真ん中にとどまった
水道水でも池の水でも、兄弟びいきは出なかった

実験に使ったのは、東京大学の植物園にある4つの水たまりから集めた4本の卵のひもで、ふ化したばかりの幼生を互いに関わり始める前に容器へ分けました。
条件は2つを掛け合わせた4通りです。水道水か池の水か、そして兄弟20匹の群れで育てるか1匹だけで育てるかを組み合わせました。
池の水を使ったのは、水の中の微生物がにおいを通じて社会行動に影響するかもしれない、と考えられていたからです。
幼生はおよそ2週間、18℃の飼育器で育て、一定の発生段階の範囲にあるものを実験に使いました。
実験では水槽の片側に兄弟の群れ、反対側に他人の群れを10匹ずつ置き、真ん中に入れた幼生が兄弟側、他人側、どちらでもない「中立ゾーン」のどこで過ごすかを60分間追いました。
結果は、兄弟びいきなしでした。4通りのどの育て方でも、兄弟側と他人側で過ごした時間に、はっきりした差はなかったのです。
池の水で育てればにおいの手がかりが変わって兄弟を見分けやすくなるかもしれない、という予想も外れました。
ぼっち育ちは真ん中にとどまった
この節の画像(ライセンス未確認。編集者が可否を決める): 結果のイメージ(出どころの図2が使えれば優先。滞在した場所の違いを表す模式図で、動きの速さの違いは描かない)(Credit: 長谷和子(京都大学) / 図2.選択テストの結果 — 図2 の作成者表示は抜粋に無い(図1 の直下に「作成・撮影:長谷和子」)。リリースの利用条件)
代わりにはっきり効いていたのが、仲間と一緒に育ったかどうかです。1匹で育った幼生は、水の種類にかかわらず、真ん中の中立ゾーンで過ごす時間が長くなりました。
群れで育った幼生は、兄弟だろうと他人だろうと、仲間のいる側で長く過ごしました。幼いころの孤立が仲間への反応を鈍らせた、と研究チームは考えています。
似た現象は魚でも知られていて、孤立して育ったゼブラフィッシュの仔魚は、仲間を避ける反応が強まることが報告されています。
兄弟を優先する行動が見られなかった理由について、研究チームの見立ての一つは、群れの目的が捕食者よけである以上、大事なのは「誰と」より「何匹で」いるかだ、というものです。
黒い体色は敵への警告で、寄り集まるほど効くという説があるため、隣にいるのが兄弟である必要はない、という理屈です。
ただし、兄弟側を選ばなかったからといって、この種に血縁を見分ける能力がないとは言い切れない、と研究チームは注意しています。
全体の運動量を別に測っていないため、孤立した幼生が仲間に鈍くなったのか、単に動く量が減ったのかも区別できていません。
今回分かったのはアズマヒキガエルの幼生での話で、血縁を見分ける力があるのかどうかは、まだ決着がついていません。
飼育下で増やした希少種を野外に戻すときにも、幼いころに仲間と過ごしたかどうかが、その後の行動を左右するかもしれません。
参考文献
ぼっち育ちのオタマジャクシは仲間への関心が低くなる―社会性は血縁よりも経験が育てていた―
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-09-07-0
元論文
Social isolation, rather than kinship, influences association behavior in toad tadpoles (Bufo formosus)
https://doi.org/10.1007/s10071-026-02090-0
ライター
天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。
編集者
ナゾロジー 編集部
