starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

外身を失い「骨まで剥き出し」になった超新星を世界で初発見


星が死ぬとき、最後に残す壮大な輝き――それが「超新星爆発」です。

しかし今回、世界中の天文学者を驚かせる超新星が見つかりました。

まるで星が“皮膚”や“肉”を脱ぎ捨てて「骨まで」むき出しになったような爆発だったのです。

京都大学の研究者を中心とする国際チームは、超新星「SN 2021yfj」を詳しく観測することで、これまで理論でしか存在が語られてこなかった「大質量星の最深部の姿」を直接とらえることに成功しました。

これは星がどのように生まれ、どのように死ぬのかという問いに迫る、歴史的な発見です。

詳しく見てみましょう。

研究の詳細は2025年8月20日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。

目次

  • 星の死に潜む「玉ねぎ構造」とは?
  • 骨までむき出しの超新星「SN 2021yfj」

星の死に潜む「玉ねぎ構造」とは?

私たちが見上げる夜空の星は、ただ輝いているだけではありません。

内部では核融合と呼ばれる壮大な反応を繰り返し、莫大なエネルギーを生み出すと同時に、新しい元素を生み出し続けています。

とくに太陽の10倍から100倍もの質量をもつ「大質量星」は、宇宙における“元素工場”の役割を担っています。

水素から始まり、ヘリウム、炭素、酸素、シリコンといったより重い元素が中心部で次々と合成され、最終的には鉄の核が形成されます。

この過程で星の内部は「玉ねぎの皮」のように層を重ねる構造になり、外側には軽い元素、内側には重い元素が積み重なっていくのです。

星は寿命の終わりに近づくと、自らの重さに耐えきれず中心部が崩壊します。

その瞬間に起こるのが「超新星爆発」です。

この爆発は膨大な光とエネルギーを放ち、星の内部で作られた元素を宇宙空間へとまき散らします。

私たちの身体を形づくる鉄やカルシウム、さらには地球を構成する物質も、かつて遠い宇宙で死んだ星が残した“遺産”なのです。

しかし、ここで大きな問題がありました。

理論上は玉ねぎ状の層構造があると考えられてきましたが、その「最深部」が本当に存在するのか、直接証拠はこれまで誰も見たことがなかったのです。

観測で確認されたのは、せいぜい外側のヘリウムや炭素、酸素の層まででした。

鉄の核を取り囲むシリコンや硫黄の層は、長年「存在は予言されているが、観測はできない領域」だったのです。

骨までむき出しの超新星「SN 2021yfj」

そんな状況を一変させたのが、2021年9月7日にカリフォルニア州のツヴィッキートランジェント天体探査装置(ZTF)が発見した「SN 2021yfj」でした。

地球からおよそ22億光年離れた銀河で光り輝いたこの超新星は、これまでの常識を覆す“異常な爆発”でした。

国際研究チームは、SN 2021yfjから届いた光を分解する「分光観測」を実施。

これは観測された光を波長ごとに分け、その中に含まれる元素の特徴を探る方法です。

すると驚くべきことに、通常の超新星で見られるヘリウムや酸素のサインが弱く、代わりにシリコンや硫黄の強い輝きが検出されました。

さらにはアルゴンといったより重い元素までもが観測されたのです。

これはつまり、爆発前の星が外層のほとんどを失い、中心部に近いシリコン・硫黄の層まで露出した状態で爆発したことを意味します。

研究者が例えるように、これはいわば「骨まで剥き出しになった星」が、宇宙に最後の光を放ったのです。

さらにチームは、京都大学が開発したオープンソースのシミュレーションコード「CHIPS」を使い、爆発の光の変化を計算。

その結果、観測された光の特徴が「外層を失った星が爆発した場合」とぴたりと一致したのです。

このことから、SN 2021yfjが従来の理論では説明できない、極端に“裸にされた星”の爆発であることが裏付けられました。

しかし、ここで新たな謎が浮かび上がります。

通常の恒星風では、せいぜい外側のヘリウム層までしか吹き飛ばせないはずです。

ではどうして、これほど深い部分まで削り取られたのか。

これについてはまだ解明されておらず、今後の大きな課題となっています。

幸い、近年はZTFのように広範囲を高頻度で観測するプロジェクトが次々と始まっています。

さらに南米チリに建設された「ベラ・ルービン天文台」の大規模探査計画(LSST)が本格稼働すれば、SN 2021yfjのように短期間で暗くなってしまう特殊な超新星も、次々と捕らえられるでしょう。

その結果、「骨まで剥き出し」になる進化経路がどれほど珍しいのか、またその背後にどんな物理現象が隠れているのか、統計的に解き明かされる日が来ると期待されています。

全ての画像を見る

参考文献

「骨」まで剥き出しになった超新星―宇宙で稀に見る爆発、元素工場の直接的証拠―
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-08-22

元論文

Extremely stripped supernova reveals a silicon and sulfur formation site
https://doi.org/10.1038/s41586-025-09375-3

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2025
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.