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水分補給を怠ると「体内でストレスホルモンが溢れる」と判明


「美肌のため」「食欲を抑えるため」「集中力を高めるため」といった理由で、水を飲むことにはさまざまなメリットがあると知られています。

しかし、私たちがまだ気づいていなかった水分補給の驚くべき効果が、最新の研究で明らかになりました。

それは、体内のストレスホルモン「コルチゾール」の反応性を左右するという事実です。

イギリスのリバプール・ジョン・ムーア大学(LJMU)の研究者たちは、水をあまり飲まない人はストレス時に体内でコルチゾールが過剰に分泌される傾向があることを発見したのです。

この研究成果は、2025年8月13日付の『Journal of Applied Physiology』誌に掲載されました。

目次

  • 水分不足と「ストレスホルモン」の関係は?
  • 水分が不足しているとコルチゾールが55%も多く分泌される

水分不足と「ストレスホルモン」の関係は?

私たちの体の約60パーセントは水で構成されています。

汗や尿、呼気などで常に失われる水分を補うことは、生理的な健康維持に不可欠です。

軽度の脱水でも集中力の低下や気分の悪化を招くのです。

では、水と同じく、体の様々な機能に影響を及ぼす「ストレスホルモン」と水分不足には何か関連性があるでしょうか。

これまでの研究では、体の水分調整とストレスホルモンの分泌には関わりがあることが示されてきました。

そこで研究チームは、この点をさらに調査したいと考えました。

彼らが注目したのは、ストレス反応の主役であるストレスホルモン「コルチゾール」です。

このホルモンは副腎から分泌され、ストレスに対処するために血糖値を上げたり、免疫反応を調整したりする役割を担います。

ただし、コルチゾールの分泌が過剰または慢性的に高い状態になると、心血管疾患、糖尿病、うつ病などの健康リスクが高まるとされています。

そこでチームは、水分摂取量の違いがコルチゾールの分泌反応にどのように影響するかを検証することにしました。

研究では、イギリスの健康データベースを使って、18歳から35歳の健康な男女100名の中から、習慣的な水分摂取量が特に多いグループ(平均4.4リットル/日)と、特に少ないグループ(平均1.3リットル/日)の計32名が選ばれました。

参加者は1週間にわたり、日常的な水の摂取量を記録しました。

その後、Trier Social Stress Test(TSST)と呼ばれる社会的ストレス誘発試験に参加しました。

この試験では、模擬面接や暗算課題を行い、心理的ストレスを意図的に引き起こします。

研究チームは、TSSTの前後で唾液中のコルチゾール濃度、血中のコペプチン(水分調整を行うホルモン「バソプレシン」の安定な指標)、尿の色と浸透圧(体内の水分状態の指標)、そして主観的な不安感、心拍数、血圧を測定しました。

水分が不足しているとコルチゾールが55%も多く分泌される

研究結果は驚くべきものでした。

ストレステスト中、両グループとも主観的な不安感や心拍数の上昇は同程度でしたが、コルチゾールの反応には明確な差が出ました。

コルチゾール濃度の変化は、水分摂取が少ないグループで平均6.2ナノモル/リットル、水分摂取が多いグループで平均4.0ナノモル/リットルでした。

これは、水分摂取量が少ないとコルチゾール濃度が約55%も高くなり、その反応が強まることを意味しています。

統計的に有意であるだけでなく、生理学的にも重要な差と評価されました。

では、どうして水分摂取量が少ないと、体内でストレスホルモンが溢れるのでしょうか。

研究チームは、水分摂取量が少ないグループは、コペプチンの濃度も水分摂取の少ないグループで有意に高くなっていることも発見しました。

これは、体が慢性的な脱水状態にあることで、水分調節を促すバソプレシン系が過剰に働いていたことを示しています。

しかし、バソプレシンは腎臓で水分を保持する作用を持つだけでなく、下垂体に働きかけてACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌させ、最終的にコルチゾールの分泌を促します。

つまり、水分不足が続くことで活性化される水分調節機能は、別のルートとして脳にも作用してしまい、結果としてストレスホルモンであるコルチゾールを大量に作ってしまうのです。

もちろん、この研究には限界もあります。

サンプル数が32名と少ない点や、水分摂取量が自己申告ベースである点、他のホルモンや長期的健康影響までは評価されていない点などが挙げられます。

今後は、より詳細なテストや長期的な健康リスクへの解明が課題となるでしょう。

それでも、この研究が示した「水分不足がストレスホルモン反応を増幅させる」という事実は、私たちの生活習慣に直接影響を与える重要な知見であることは間違いありません。

明日、あなたにプレゼンや試験、あるいは大事な予定が控えているなら、まずはコップ1杯の水を飲んでから出かけましょう。

その一杯が、あなたの体をストレスから少し守ってくれるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Not drinking enough water floods your body with harmful stress hormones
https://newatlas.com/diet-nutrition/water-stress-cortisol/

Drinking too little puts body under extra stress
https://www.ljmu.ac.uk/about-us/news/articles/2025/8/22/dehydration-and-stress-study

元論文

Habitual fluid intake and hydration status influence cortisol reactivity to acute psychosocial stress
https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00408.2025

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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