「男らしくない」と言われて嫌な気持ちになったり、悩んだりしたことはありますか?
現代社会では、多くの男性が見えないプレッシャーや期待に悩まされています。
米国の臨床心理士であるフィル・レイン氏(Phil Lane, MSW, LCSW)は、自身の10年以上にわたる臨床経験から、男性が「心のなかで詰まりやすい」3つのポイントを指摘しています。
それは、自分を許すこと、さらけ出すこと、男らしさに関してです。
この記事では、それぞれの問題点と対処法を詳しく解説していきます。
目次
- 自分を許す
- 自分をさらけ出す
- 「男らしさ」という幻想を壊す
自分を許す
人は誰でも間違いを犯します。
しかし、男性はとくに自分の過去の過ちに対して厳しくなりがちです。
フィル・レイン氏によれば、彼のセラピーを受ける男性の多くは、「あのとき子どもに怒鳴らなければよかった」「パートナーを傷つけたことが忘れられない」といった後悔を、何年、時には何十年も引きずっているといいます。
このような自己批判は、うつ状態や怒り、不機嫌といった形で表面化し、自分だけでなく周囲の人間関係にも悪影響を与えます。
では、どうすれば自分を許すことができるのでしょうか?

レイン氏は「内なる子ども」の視点をもつよう提案しています。
もし、あなたのもとに小さな子どもが「ぼく、失敗しちゃった。ごめんなさい」と泣きながら来たとしたら、あなたはその子にどんな言葉をかけますか?
おそらく優しく受け止め、「大丈夫だよ、誰でも間違えることはあるよ」と言うでしょう。
そのような優しさを、自分自身にも向けてみるのです。
紙に過去の出来事とそのときの感情を書き出し、それを読みながら「当時は精一杯だった」と認める作業も効果的です。
自分を許してあげることは、甘えでも妥協でもありません。
それは過去の自分に責任を持ちつつ、今をよりよく生きるための第一歩なのです。
自分をさらけ出す
他者と親密な関係を築くことは、多くの男性にとって一種の「恐れ」を伴います。
「自分をさらけ出したら拒絶されるのではないか」「うまく振る舞えなかったら失望されるかもしれない」といった不安が先立ち、つい感情を隠してしまうのです。
例えば、ある男性は悩みを持っているものの、「頼られたい」「強くありたい」という思いから、パートナーに何も言わずに抱え込み、結果的にすれ違いが生じることがあるかもしれません。
では、自分をさらけ出せずに孤立してしまいがちな男性たちは、どのように対処すべきでしょうか。

フィル・レイン氏は、「結果」や「評価」から離れて、今この瞬間に意識を向けることの大切さを強調しています。
他者と共に過ごす時間においても、「何が正しいか」「どんな結論になったか」「何を成し遂げられたか」「効率はどうだったか」という思考を捨てるべきです。
本当に大切なのは、その瞬間に得られる「身体的な感覚」「感情的な繋がり」「安心感」であり、そこに集中してみましょう。
余計な雑念を手放し、『今ここ』に集中することで、心の壁が少しずつ下がっていきます。
この感覚を意識するなら、自然と自分をさらけ出すことができ、他者とより親密な関係を築けます。
「男らしさ」という幻想を壊す
「男なんだから泣くな」「感情的になるのはみっともない」
そんな言葉を、子どもの頃に聞いた記憶はありませんか?
こうした考え方の中で過ごすと、男性たちはいつも強いプレッシャーを感じたり、劣等感を抱いたりするようになります。
フィル・レイン氏は、自身の子ども時代を「感受性が強く、読書や芸術を好み、すぐに疲れてしまう少年」と表現しています。
そんな自分を、「男らしくない」として批判された経験もあるといいます。
しかし現在、彼はセラピスト、著者、父親として、その「感受性」こそが最大の強みだったと振り返ります。

「男らしさ」は、固定された一つの形ではありません。
むしろ、その定義は人それぞれであり、社会や文化によっても異なります。
そのため、「“男らしい”って、誰が決めたのか?」と考えてみることは固定観念を打ち崩すのに役立ちます。
もし今のあなたが、感情的な表現をしたり、他人に助けを求めることに抵抗があるのだとしたら、それは「男らしさ」という幻想に縛られている可能性があります。
例えば、感情的な場面で泣いた経験を「弱さ」と思い込み、人前で涙をこらえた人がいるかもしれません。
しかし実際には、その場で涙を流すことが相手との共感を深め、信頼を築く第一歩となることも多いのです。
「男らしさ」の価値観を見直し、自分自身のあり方を再定義してみましょう。
そこから、自分らしく自然体で生きる人生が始まります。
ここまでで、男性が悩みやすい3つのポイントを考慮できました。
あなたが男性なら、これらの観点で自分の見方が狭くなっていないか、自問してみてください。
それは、自分を苦しめる鎖を断ち切り、本来のあなた自身と向き合う旅の第一歩になるはずです。
参考文献
The Top 3 Hang-Ups of Men and How to Cope
https://www.psychologytoday.com/us/blog/am-i-dying/202506/the-top-3-hang-ups-of-men-and-how-to-cope
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部