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恐竜は信じられてきたよりも「4倍遅かった」かもしれない


イギリスのリヴァプール・ジョン・ムーア大学の研究チームが行った実験によれば、現代の鳥類を使った解析結果から、恐竜の速度は従来の化石足跡から推定されたよりも遅かった可能性が示されています。特に、二足歩行恐竜の足跡が「走っていた」と解釈されていたものの多くが実は「歩いていただけ」であった可能性が高まっています。実験では、ホロホロチョウという鳥を使い、泥上での歩行速度を観察。アレクサンダー式という旧来の速度推定式が実測値と大幅に異なることが確認されました。研究チームは、恐竜の足跡からのスピード推定には大きな誤差が含まれる可能性が高いと警告し、恐竜の行動再現の見直しが必要としています。

映画では、恐ろしい速度で走る恐竜たちが登場します。

ジュラシック・パーク』のラプトルが猛スピードで獲物を追いかける姿は、多くの人の脳裏に焼き付いているはずです。

でも実際は、彼ら恐竜たちのスピードは私たちが思っているほど速くなかったかもしれません。

イギリスのリヴァプール・ジョン・ムーア大学(LJMU)の研究チームは、現代の「走る鳥類」を使った実験により、これまで化石の足跡から推定されていた恐竜のスピードが過大評価されていた可能性があると発表しました。

特に、二足歩行の恐竜ではその傾向が顕著であり、「走っていた」とされていた足跡が、実は「歩いていただけ」だったかもしれないのです。

この研究成果は、2025年6月25日付の『Biology Letters』誌に掲載されました。

目次

  • 恐竜の足跡は本当のスピードを語るのか?
  • 足跡のスピード測定は間違い!?恐竜の「歩いてただけ」が「全力疾走」に見えていた?

恐竜の足跡は本当のスピードを語るのか?

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恐竜の足跡 / Credit:Wikipedia Commons

恐竜の化石足跡は、数千万年も前に生きていた動物たちの動きを記録する貴重な証拠です。

研究者たちは長年にわたり、これらの足跡からスピードを推定する手法を用いてきました。

その代表的なものが、1976年に動物学者アレクサンダーが提唱した計算式です。

アレクサンダー式は、歩幅や脚の長さから速度を算出する経験式で、特に恐竜のような大型の絶滅動物の行動再現に広く使われてきました。

しかし、今やこの式に懐疑的な人は少なくありません。

なぜならこの式は、「動物が固くて乾燥した地面を歩いている」という仮定のもとに構築されたからです。

一方、研究対象となる「恐竜の足跡」は、柔らかい泥の上を恐竜の足が踏んだ時に形成されるものであり、その状況ゆえ、足跡が伸びたり歪んだりして、歩幅が誇張される可能性があります。

そこで今回の研究では、地上を走る鳥類を使い、実際に柔らかい地面を歩かせて、アレクサンダー式の精度を検証することにしました。

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ホロホロチョウの足跡からスピード計算法の正確性を分析 / Credit:Tash L. Prescott(LJMU)et al., Biology Letters(2025)

選ばれたのは「ホロホロチョウ(学名:Numida meleagris)」という鳥です。

彼らは二足歩行で歩く姿が小型獣脚類に似ており、脚の構造や関節の動き、そして足の形も非常に類似しています。

また、歩行速度や走行速度にもバリエーションがあり、今回のような速度検証には最適なモデル動物でした。

実験では、泥の硬さを「固い・柔らかい・非常に柔らかい」の3段階に分け、それぞれの状態でホロホロチョウに自由に歩行・走行させました。

各トライアルの動きを高速度カメラで撮影した後、足跡を3Dスキャンして、実際のスピードとアレクサンダー式による推定スピードを比較しました。

足跡のスピード測定は間違い!?恐竜の「歩いてただけ」が「全力疾走」に見えていた?

実験の結果は驚くべきものでした。

ホロホロチョウが「時速1km(秒速0.28m)」というゆったりとしたスピードで泥の上を移動していた際に観測された例では、その足跡をアレクサンダー式で解析すると、時速4.7km(秒速1.3m)と算出されたのです。

これはなんと、実際のスピードの4.7倍

このズレを大型恐竜にスケーリングすると、時速4kmで歩いていた恐竜が、足跡解析では時速19kmで走っていたと推定されることになります。

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足跡から恐竜のスピードを推定するアレクサンダー式では大きな誤差が生じる。恐竜はもっと遅かったのかもしれない / Credit:Canva

さらに注目すべきは、同じ歩幅であってもスピードが異なる場合があったという点です。

ホロホロチョウが連続して踏んだ足跡のうち、歩幅が0.37mのものでも、全く異なるスピードで前進するケースがありました。

泥のような「柔らかく変形しやすい地面」では足が沈んでしまい、抜くときに引っ張られるため、自然と歩幅が変化するためだと考えられます。

これらの影響が、恐竜の足跡に残された情報に「スピードの錯覚」を生じさせていたのです。

研究チームは、「恐竜の化石足跡も同様の誤差を含んでいる可能性が非常に高い」と警告しています。

つまり、これまで足跡を根拠に「走っていた」「獲物を追っていた」とされてきた恐竜の多くが、実はただ「歩いていた」だけかもしれないというのです。

これは、過去に行われたスピードや行動の再構築を、根本から見直す必要があることを示唆しています。

今後、恐竜のスピードや行動をより正確に理解するためには、柔らかい地面での動物の動きをもっと多く検証していく必要があります。

そして、計算式だけに頼らず、実験と観察による検証を重ねていくことが不可欠です。

この研究は、恐竜のダイナミックなイメージに新たな視点を投げかけてくれました。

今後も科学は、恐竜の姿をいっそうリアルに映し出していくことでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Dino-slow? Dinosaurs may not have run as fast as we thought
https://www.scimex.org/newsfeed/dino-slow-dinosaurs-may-not-have-run-as-fast-as-we-thought

Dinosaurs may have been 4x slower than we’ve been led to believe
https://newatlas.com/biology/dinosaurs-slow-tracks/

元論文

Speed from fossil trackways: calculations not validated by extant birds on compliant substrates
https://doi.org/10.1098/rsbl.2025.0191

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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