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大学進学しても「性格は変わらない」と判明―ただし慎重さは身につく


親が大学に進学しなかった背景を持つ「第一世代大学生」が大学に進学することで、性格が変わるかどうかをスイスのローザンヌ大学の研究チームが調査しました。ドイツの大規模調査データを使用し、第一世代大学生の性格特性について追跡調査を行った結果、性格の中核部分は大きく変わらないことが明らかになりました。ただし、リスクを好む傾向が下がり、慎重さが増す変化が見られました。大学環境がリスク回避的な性格を育む可能性が示されています。

「うちの子、大学に行ったら性格変わっちゃうんじゃないかしら……」

そんなふうに、親が少しだけ不安を感じるのは無理もありません。

特に自分が大学に行った経験がない場合、子どもが自分とはまったく異なる世界に踏み込むことに、一抹の心配が生まれるのも自然なことです。

しかし、最新の研究によると、その心配は少しだけ杞憂だったようです。

スイスのローザンヌ大学(University of Lausanne)の研究チームが、ドイツの全国調査データを使って明らかにしたのは、そのような第一世代大学生であっても、性格の中核部分はほとんど変化しないという事実でした。

ただし、一部の性格傾向には興味深い変化も見られたようです。

この研究結果は2025年3月31日付で『Social Psychological and Personality Science』誌に掲載されました。

目次

  • 家族で初めて大学に進学すると性格は変わる?
  • 大学に行って「変わらなかった性格」と「身につく慎重さ」

家族で初めて大学に進学すると性格は変わる?

人の性格は年齢とともに少しずつ変わる傾向があります。

特に10代後半から30代前半にかけては、人生の大きな転機が重なりやすく、責任感や感情の安定性が高まるといった変化が多く見られます。

こうした性格変化の原因は、「社会的な役割の変化」だと考えられています。

就職や結婚、親になること、そして大学進学などが、新しい環境に適応するための行動や思考のパターンを促すからです。

今回注目されたのは、教育による社会階級の移動(教育的上昇移動)が性格に与える影響でした。

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第一世代大学生は環境の変化に伴い性格が変わってしまうのか / Credit:Canva

研究では、「第一世代大学生」—つまり親が大学に行っていない中で、子どもが大学進学を果たす人々に焦点を当てました。

このような若者たちは、家庭の文化資本とは異なる、より高い教育階級の文化に適応することを求められます。

研究者たちは、第一世代大学生が新たな社会階層に適応する過程で、性格特性にも変化が生じるのではないかと仮説を立てていました

その点を調べるために、研究者たちは、ドイツの全国代表調査「SOEP(Socio-Economic Panel)」のデータを用い、約4,776人の若者を10年以上にわたって追跡。

対象は17歳から30代に至るまでで、大学進学の有無によって2つのグループ「第一世代大学生グループ」と「進学しなかった同世代グループ(安定低学歴群)」に分けました。

さらに、出発点での性格傾向や家庭環境を統制するため、高度な統計手法を用いて、比較の公平性を担保しました。

そして研究で分析されたのは、ビッグファイブ性格特性(外向性、協調性、誠実性、情緒安定性、開放性)と、リスク選好の傾向(リスクを好むかどうか)、コントロール感(自分の人生に対する影響感)といった心理指標です。

分析の結果は、研究チームの予想を裏切るものでした。

大学に行って「変わらなかった性格」と「身につく慎重さ」

研究チームにとって結果は意外なものでした。

まず、両グループで年齢とともに誠実性(責任感)が上昇するという傾向は共通していました。

これは大学進学と関係なく、成人期に入ると責任感が高まる傾向にあることを示しています。

また、大学に行くかどうかで、外向性、協調性、開放性、情緒安定性など、ほとんどの性格特性に大きな差は見られないことも分かりました。

つまり、たとえ家庭とは異なる文化的環境に身を置いても、人間の基本的な性格はあまり変わらないのです。

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大学進学は短期的には人の性格に大きな影響を及ぼさない / Credit:Canva

研究チームは次のように述べています。

「全体的に性格の変化がほとんどないことに驚きました。

もしかしたら性格の変化は、もっと長い期間、もしくはより微妙なメカニズムを経てはじめて生じるのかもしれません」

こうした結果は、第一世代大学生本人やその親を安心させるものかもしれません。

家族で初めて大学に行こうが、その人の性格は変わらないのです。

しかし、ひとつだけ明確な変化がありました。

それは、リスクを取る傾向が徐々に低下していく(つまり慎重になる)というものです。

第一世代大学生たちは、大学に進学しなかった同世代よりも、時間とともに「冒険しなくなる」傾向が強くなったのです。

この慎重さの変化は、大学生活の中で繰り返し求められる「計画性」「自己管理」「長期的視点」の影響かもしれません。

また、第一世代大学生が「異文化環境」である大学で過ごすことで、より用心深くなった可能性も指摘されています。

興味深いことに、追加の分析によって、この傾向は親も大学に行っていた人たちにも見られることも分かりました。

つまり、大学という環境自体が、人をリスク回避的に育てる効果を持っているのかもしれません。

ただし、本研究には限界もあります。

分析対象はドイツ国内の学生であり、大学の種類や学部ごとの文化的差異は分析上区別されておらず、全体としての効果にとどまっています

それでも、この研究は私たちに1つの理解を与えてくれます。

人の本質は、たとえ環境が変わっても、そう簡単には変わらないのです。

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参考文献

Personality stays mostly the same after moving up in social class, new study suggests
https://www.psypost.org/personality-stays-mostly-the-same-after-moving-up-in-social-class-new-study-suggests/

元論文

Social Class and Personality: The Effects of Educational Mobility on Personality Trait Change
https://doi.org/10.1177/19485506251326333

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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