starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

中国で急増中の「なんちゃって出勤」ビジネスとは?周囲の目が気になる若者がたどり着く場所だった


中国の都市部で「なんちゃって出勤」ビジネスが急成長している。これは失業中にも関わらず、働いているふりをして社会的ステータスを保ちたい人々のためのサービスである。利用者は月額費用を払い、偽のオフィスに出勤することで、他人の目を気にせず精神的な安心感を得る。背景には、高い若年失業率や競争の激しい就職市場でのプレッシャーがあり、中国の社会不安を映している。こうしたサービスはSNSで広まりつつある一方で批判もある。このビジネスが他国に広がる可能性も示唆されている。

会社をクビになったものの家族に言い出せず、毎日公園で時間をつぶす。

日本でもそんなエピソードが話題になったことがありますが、中国の都市部では、そんな「なんちゃって出勤」がビジネスとして発展しています。

“オフィス”は存在しますが、そこに出勤する人は本物の従業員ではありません。

運営元は一応「会社」ですが、その目的は何かの業務をこなすことではありません。

一体なぜ、そんな場所に人が集まり、お金まで払って通っているのでしょうか。

この奇妙な現象の背後には、中国社会の深い不安が透けて見えます。

目次

  • 無職だけど「周囲の目が気になる」人向けの”なんちゃって出勤”ビジネス
  • 「なんちゃって出勤」ビジネスの実態とは?

無職だけど「周囲の目が気になる」人向けの”なんちゃって出勤”ビジネス

画像
「働いている」という社会的ステータス / Credit:Canva

社会において「仕事をしている」というステータスは、単なる収入源を超えた意味を持ちます。

特に家族や社会とのつながりが強調されるアジア文化圏においては、自分の職業が他者からどう見られるかが精神的な安心感に直結することもあります。

広東出身の女性ゾンファさん(仮名)もまた、そのような安心感を欲していました。

しかし彼女は金融業界のプレッシャーに疲れ、2024年に退職しました。

無職のままでいることが周囲に知られるのを恐れ、最初は図書館やカフェに身を寄せていました。

そして、やがて彼女は、北京にある“偽装オフィス”に月額400元(約8000円)を支払い、通うようになります。

そこには机が並び、Wi-Fiとコーヒーがあり、社員証らしきものを首から下げた人々がパソコンに向かっています。

けれど、それはすべて“演出”なのです。

画像
無職のゾンファさんが毎日オフィスに通う理由とは? / Credit:Canva

この「なんちゃって出勤」スペースでは、30~50元(約600〜1000円)で1日を過ごすことができます。

実際の上司や仕事は存在しませんが、その代わり、架空の業務が割り当てられるケースもあります。

追加料金を支払えば、“管理職”を装うなどの演出も得られます。

こうしたサービスが急成長した背景には、中国の高い若年失業率があります。

中国国家統計局の報告によると、2025年第1四半期の都市部の失業率は5.3%ですが、25歳未満の非学生層では16.5%、25〜29歳でも7.2%に達しています。

特に競争が激化する都市部では、就職活動に失敗したことを“知られる”ことが大きなストレスとなるのです。

SNSでは、この“偽装就業”サービスを宣伝する投稿が急増し、何百万回も閲覧される人気トピックとなっています。

一方で、ネットユーザーの間では「自分をごまかしているだけだ」という批判の声もあり、社会的な議論も活発化しています。

では、この中国のなんちゃって出勤サービスの実態はどのようなものでしょうか。

「なんちゃって出勤」ビジネスの実態とは?

実際にある“偽装就業”オフィスを訪れた人によると、その受付にはオフィスを所有する「法律事務所」の看板が掲げられていました。

中には会議室が複数あり、36人の従業員を収容できるラウンジもあります。

水曜日の午前中、このオフィスでは、静かな空間と数人の若者がパソコンに向かう様子が見られました。

ある者は真剣な表情で作業をし、またある者はソファでスマホをいじっています。

画像
使用されていない法律事務所を貸し出すケースもある。利用者は各々時間をつぶしたり、仕事を探したりする / Credit:Canva

サービス提供者の一人は「流行っているから真似した」と語っています。

このオフィスはもともと看板どおり法律事務所でしたが、弁護士たちはオフィスを滅多に使用しないため貸し出すことにしたのです。

この場所はコワーキングスペースとして運営されており、「なんちゃって出勤サービス」として広告を出して人々を引き付けています。

実際、このオフィスを使う理由は人それぞれで、文字通り「働くふりをする」だけでなく、「フリーランスが作業場所を得るために活用している」といった声もあります。

それでも、最大のポイントはやはり“心理的安心感”でしょう。

無職であることが恥とされる社会において、日中に行く場所があること自体が救いになるのです。

こうした状況は、中国に限らず、同様のプレッシャーを抱える他国でも広がる可能性があります。

日本でも「働くこと=社会的存在価値」と捉える人は少なくありません。

そのような価値観の国では、この“なんちゃって出勤”ビジネスが輸入される日も近いかもしれません。

人間が「他者の目」を意識する生き物である以上、「働いているフリ」ができる環境がどこかには必要なのかもしれません。

あなたは、もし無職になったら、このサービスを利用してみたいですか?

全ての画像を見る

参考文献

Going to an office and pretending to work: A business that’s booming in China
https://english.elpais.com/international/2025-05-31/going-to-an-office-and-pretending-to-work-a-business-thats-booming-in-china.html

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2025
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.