ロシア科学アカデミー(RAS)はこのほど、カスピ海北部に新たな「島」が誕生したことを確認しました。
地図にまだ載っていないこの新島は、カスピ海の水位の低下によって姿を現したもので、現在も調査が進行中です。
一見すると平坦な砂地にしか見えませんが、今後のさらなる水位低下により、標高が徐々に高くなっていくと見られています。
目次
- 水位の低下による島の出現
- 未来の「鳥の楽園」となる可能性も?
水位の低下による島の出現
この発見は、ロシア科学アカデミーの海洋学研究所のチームによる合同調査の中で確認されました。
場所は、カスピ海北部にあるマールイ・ジェムチュージヌイ島の南西約30キロメートルの海域です。
もともとこの一帯は「スレドニャヤ・ジェムチュージナヤ」と呼ばれる浅瀬で、2024年11月にはすでに衛星画像で“何かが浮上してきている”兆候が捉えられていました。
しかし、それが本当に島と呼べる存在なのかどうかは、現地での直接観測が必要でした。
2025年春、ロシアの研究チームが現地へ向かったものの、浅瀬と悪天候のため上陸は断念。
ただしドローンによる撮影により、平坦で湿った砂地に波のような砂丘が形成されている地形が確認され、その存在は正式に「島」として認められることになったのです。
実際の画像がこちら。

この島の誕生は、カスピ海の水位が周期的に上下する自然のサイクルの一環です。
1930年代や1970年代にも水位の大幅な低下が観測されており、近年は2010年以降、再び水位が減少傾向にあります。
これには気候変動による蒸発量の増加や、海底の地殻変動といった複合的な要因が関与しているとされています。
未来の「鳥の楽園」となる可能性も?
現時点ではこの島には名前がつけられておらず、今後の調査結果を踏まえて、地理的特徴にちなんだ名前や、地域の科学・文化に貢献した人物の名が候補となる予定です。
現在、この島はヴォルガ川の増水による洪水期にあたるため、水面からわずかに突き出た状態にとどまっています。
しかし夏から秋にかけて河川の流入が減少すると、島の地形がさらに浮上し、より明確な“陸地”としての輪郭を見せる可能性があると研究者たちは述べています。

さらに注目すべきは、この島が将来的に持つ「生態系の拠点」としての潜在力です。
研究チームは、今後カスピ海の水位がさらに下がれば、この島が希少な鳥類の営巣地や、カスピ海固有のアザラシ「カスピカイアザラシ」の休息地となる可能性を指摘しています。
これは単なる砂の塊ではなく、新たな命が息づく“未来の楽園”へと変わる予兆かもしれません。
もちろん、そうした希望が現実となるには、今後の水位変動や人間活動による影響を見守る必要があります。
だが、地形の変化を通じて環境が動き、命が移り変わるという自然のダイナミズムが、ここには確かに存在しています。
参考文献
Russian scientists discover a new island in the Caspian Sea — the world’s largest inland body of water
https://www.livescience.com/planet-earth/rivers-oceans/russian-scientists-discover-a-new-island-in-the-caspian-sea-the-worlds-largest-inland-body-of-water
На севере Каспийского моря появился новый остров
https://tass.ru/obschestvo/24066833
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部