恐竜時代のモンゴルに生きていた新種の哺乳類が発見されました。
報告を行ったのは、岡山理科大学とモンゴル科学アカデミー古生物学研究所(IPMAS)の共同研究チームです。
本種は白亜紀に生息していた哺乳類の一群「ゼレステス科(Zhelestidae)」の新種新属とのこと。
ゼレステス科はこれまで大陸周辺の沿岸部でしか見つかっていませんでしたが、今回の研究はこのグループが大陸の内陸部にも進出していたことを示す初の証拠となりました。
一体どんな哺乳類だったのでしょうか?
研究の詳細は2025年4月の国際古生物学雑誌『Acta Palaeontologica Polonica』に掲載されています。
目次
- 白亜紀にいた哺乳類の新種を発見
- 内陸部にも進出していたことを示す初の証拠
白亜紀にいた哺乳類の新種を発見

研究チームは現在、モンゴルのゴビ砂漠にて化石の発掘調査を続けています。
その中で2019年に、ゴビ砂漠東部に分布する白亜紀後期の地層「バインシレ層(1億〜8500万年前)」より哺乳類の化石を発掘しました。
回収された歯や顎の形態を詳しく調べたところ、哺乳類の中でも白亜紀に生息していたことで知られる「ゼレステス科」に属する種であることを特定。
さらに他のゼレステス科の標本群と比較した結果、既知のゼレステス科とは異なる特徴を持つ新属新種であることが判明したのです。

そこでチームは新種のゼレステス科を「ラウジャア・イシイイ(Ravjaa ishiii)」と命名しました。
ラウジャアは化石の産出地周辺で広く尊敬されている19世紀の高僧Dulduityn Danzanravjaaに由来し、イシイイはモンゴルでの化石発掘調査の基盤を構築した林原自然科学博物館の元館長、石井健一氏(故人)に敬意を表して命名したとのことです。
またラウジャア・イシイイは、ゴビ砂漠地域で見つかった初めてのゼレステス科となりました。
内陸部にも進出していたことを示す初の証拠

ゼレステス科は白亜紀後期において、ヨーロッパから中央アジア、日本、北アメリカに至るまで、広い地域に分布していたことが知られています。
しかし東アジア内陸部、特にモンゴル国からの報告はなく、分布の空白地帯とされていた上に、ゼレステス科が見つかっている場所は基本的に大陸周辺の沿岸部のみでした。
そうした背景の中で、今回の発見はゼレステス科の哺乳類が東アジアの内陸部にも進出していたことを示す初の証拠となったのです。

さらにラウジャア・イシイイの歯の形状から、種子や果実を主な食料としていたと推測され、当時急激に拡散していた被子植物(花を咲かせる植物)との関係も示唆されています。
これは恐竜だけでなく哺乳類もまた、植物の進化とともに多様化していったことを物語る重要な証拠といえるでしょう。
以上の結果から、恐竜を含む豊かな陸上動物相が現在のゴビ砂漠一帯に存在していたことを示す貴重な発見となりました。
チームは今後について次のように話しています。
「IPMAS との共同調査では、本標本だけでなく、小型の恐竜類、トカゲ類、両生類、魚類などを含む多様な小型脊椎動物化石の採取と分類群的検討を、現在も継続して行っています。
今後、IPMAS とも協力しながら、恐竜学科を中心に、恐竜時代のゴビ砂漠に存在した多様な陸上動物相の解明へつなげられると期待されます」
参考文献
恐竜時代に生きた新属新種の哺乳類化石をモンゴル・ゴビ砂漠で発見
https://www.ous.ac.jp/topics/detail.php?id=5392
元論文
New Late Cretaceous zhelestid mammal from the Bayanshiree Formation, Mongolia
https://doi.org/10.4202/app.01213.2024
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部