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健康に良い”あのオイル”の過剰摂取が「脂肪細胞を増殖させる」と判明


オクラホマ大学とイェール大学の研究チームが、オリーブオイルに含まれるオレイン酸を過剰摂取すると、マウスの脂肪細胞の数が増加することを発見しました。脂肪細胞は肥満に直接関与し、新たな細胞が増えることで長期的な肥満につながります。この研究では、オレイン酸の過剰摂取が脂肪細胞の増殖プロセスを抑える“ブレーキシステム”を抑制することがわかりました。ただし、この結果はマウスでの観察であり、ヒトにも同様に当てはまるかは不明です。オリーブオイルの健康効果もあるため、バランスを保ち摂取することが重要です。

オリーブオイルといえば健康的な油として知られています。

サラダやパスタ、揚げ物まで、さまざまな料理に使われ、「ヘルシーな油」として世界中で推奨されてきました。

ところが、この油の働きを分析したところ、過剰摂取は体に毒かもしれないことが分かりました。

アメリカのオクラホマ大学(University of Oklahoma)とイェール大学(Yale University)の研究チームは、オリーブオイルの主成分であるオレイン酸の過剰摂取が、マウス実験において、脂肪細胞の“数”を増やしてしまうことを突き止めたのです。

この研究成果は2025年4月22日付の『Cell Reports』誌に掲載されました。

目次

  • 肥満の敵!?「脂肪細胞の数」を増加させるものとは?
  • オリーブオイルに豊富に含まれる「オレイン酸」の過剰摂取が、マウスの脂肪細胞の数を増やすと判明

肥満の敵!?「脂肪細胞の数」を増加させるものとは?

肥満といえば、一般には「摂取カロリーが多すぎたから太る」と考えられています。

しかし実際には、それだけでは説明しきれない現象がいくつも存在します。

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脂肪細胞の数が多いと肥満になりやすい / Credit:Canva

肥満には大きく分けて2つの仕組みが関わっています。

1つは、脂肪細胞が大きくなることで、既に存在している脂肪細胞が脂肪を取り込んで膨らみます。

もう1つは、脂肪細胞の数が増えることであり、脂肪細胞の元になる細胞(前駆脂肪細胞)が分裂・分化し、新しい脂肪細胞が生まれます。

前者は短期的な肥満に関与しますが、後者の“数の増加”は、長期的で慢性的な肥満の元凶です。

いったん数が増えた脂肪細胞は、痩せても減らず、リバウンドの原因にもなります。

このように、肥満がなかなか解消されない背景には、「脂肪細胞の増加」が関与している可能性があります。

今回の研究では、この肥満の原因にさらに迫るべく、「オイルの“種類”が脂肪細胞の数に与える影響」に着目しました。

そのためにも研究チームは、マウスに対して様々な種類の高脂肪食を与えました。

ラード、ココナッツ油、大豆油、オリーブ油などに含まれる特定の脂肪酸を豊富に含む特殊飼料を与え、脂肪細胞の増加数に与える影響を調べたのです。

オリーブオイルに豊富に含まれる「オレイン酸」の過剰摂取が、マウスの脂肪細胞の数を増やすと判明

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オレイン酸を過剰摂取したマウスでは脂肪細胞が増殖した / Credit:Matthew S. Rodeheffer(ale University)et al., Cell Reports(2025)

研究の結果、唯一、オレイン酸を多く含む食事を与えられたマウスでは、脂肪細胞の新生が誘導され、新たな脂肪細胞が多数形成されました。

オレイン酸とは、オリーブオイルに豊富に含まれる脂肪酸であり、他にも牛肉やアーモンドなどに含まれています。

血管の健康を保ち、生活習慣病を予防するとも言われています。

ちなみに、他の脂肪酸では、脂肪細胞の増殖は観察されませんでした。

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オリーブオイルに豊富に含まれるオレイン酸 / Credit:Canva

ではなぜ、オレイン酸だけがこのような作用を持つのでしょうか?

通常、脂肪が形成されるプロセスはある程度制御されています。

しかし研究チームは、オレイン酸の過剰摂取が前駆脂肪細胞を活性化させ、普段働いている脂肪細胞増加のブレーキシステムを抑え込むことを発見しました。

研究チームは、脂肪細胞を軍隊に例えています。

オレイン酸を摂取すると、軍隊内の「脂肪細胞の兵士」の数が増え、余分な栄養素を蓄える能力が高まります。

そして過剰な栄養が送り込まれると、それらの兵士(脂肪細胞)がすべて“備蓄モード”に入り、結果として肥満が生じてしまうのです。

このように、脂肪細胞の数そのものを決定づける生体メカニズムに、食事の脂質構成が直接的に関与しているというのは、極めて重要な発見です。

一方で、この研究にはいくつかの限界も存在します。

まず、マウスモデルを用いた実験であるため、ヒトに完全に当てはまるとは限りません

また、オレイン酸の量がかなり高く設定されている(研究では摂取カロリーの45%をオレイン酸由来に設定)ため、通常の食生活に当てはめることはできません。

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大切なのはバランス。オレイン酸を適度に用いるなら健康の維持に役立つ / Credit:Canva

では私たちは、これをどう受け止めればよいのでしょうか?

オリーブオイルは動脈硬化や心疾患予防に良いとされてきた実績があり、すぐに「悪い油」と見なすのは早計です。

しかし、「健康に良いから」といって過剰に使うことは避けた方がよいことは明らかです。

近年では糖質をカットして脂質を大量に摂取するダイエット法にも注目が集まっています。

そうした特殊なダイエットでは、もしかしたらオレイン酸の過剰摂取に繋がってしまうかもしれません。

脂質も糖質も、身体に必要なものです。

しかしその“質”と“量”には注意が必要です。

健康のカギは、摂りすぎず、足りなさすぎず、バランスにあります。

全ての画像を見る

参考文献

Too much “good fat”tells the body to make more fat cells, study finds
https://newatlas.com/diet-nutrition/oleic-acid-fat-cells/

New Research Shows Excessive Oleic Acid, Found in Olive Oil, Drives Fat Cell Growth
https://ou.edu/news/articles/2025/june/excessive-oleic-acid-found-in-olive-oil-drives-fat-cell-growth

元論文

Dietary oleic acid drives obesogenic adipogenesis via modulation of LXRα signaling
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2025.115527

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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