「サメが空から降ってきた」と聞けば、誰もが冗談かB級映画の話だと思うでしょう。
しかしこの出来事は、現実にアメリカで起こった出来事です。
2025年5月18日、米国東部サウスカロライナ州マートルビーチのゴルフ場で、突如として頭上からハンマーヘッドシャークが降ってきました。
周囲は森に囲まれており、海からは少し離れた場所。
にもかかわらず、木々の間に“海の捕食者”が突っ込んできたのです。
この奇妙な現象に立ち会ったのは、地元に住むジョナサン・マーロウさん。
彼の証言から、その真相が明らかになりました。
目次
- 事件の真相とは?
- カラスは群れで猛禽類と戦う
事件の真相とは?
事件が起きたのは、マートルビーチにある「スプランター・シティ・ディスクゴルフ場」。
マーロウさんが11番ホールでプレイしようとしたその時、上空に何かを掴んで飛ぶミサゴを見かけました。
ミサゴは「ウオタカ(魚鷹)」とも呼ばれる猛禽類で、魚を捕食することで知られます。

「ミサゴが獲物を運んでいるのはよく見る光景ですが、やっぱり目を引かれるんです」と語るマーロウさん。
ところがその日は様子が違っていました。2羽のカラスがどこからともなく現れ、1羽のミサゴを執拗に追いかけはじめたのです。
この3羽のバードチェイスは近くの木へと突入し、そのとき“何か”が木の上から落下。バサッという音と共に地面に転がってきたのは、なんと小さなハンマーヘッドシャークでした。

ミサゴがサメを捕らえていたという事実だけでも驚きですが、それを森の中で落とすという展開は、さらに想像を超えています。
ミサゴは水面に漂う魚を上空から見つけ、時には高さ30メートルから時速80キロで急降下して狩りを行う驚異的なハンターです。
しかし通常、ミサゴが狙うのは30センチ未満の魚。
サメのような大型の獲物を持ち上げることは珍しく、今回のようにシュモクザメの幼体とはいえ、かなり異例の出来事といえます。
カラスは群れで猛禽類と戦う
では、なぜミサゴはこの貴重な獲物を落としてしまったのでしょうか?
そこには自然界のもう一つのドラマが潜んでいました。
原因はカラスのモビング行動。
これは繁殖期に入ったカラスが、自分たちの巣や餌場を守るために協力して天敵を追い払う行動のことです。
ミサゴのような猛禽類も例外ではなく、特に春になると複数のカラスが一斉に攻撃を仕掛けることが知られています。
今回も2羽のカラスが連携してミサゴを追い、結果的に木の上でミサゴがサメを落とす形となったと考えられています。
その後、マーロウさんと仲間たちは、落ちたサメをそのまま木の下に残してコースを後にしました。
ミサゴが戻ってきて、再び食事にありつけるかもしれないと思ったからです。

ところが後日、マーロウさんがFacebookにこの出来事の写真を投稿すると、他のゴルファーから「例のサメを見つけた」とコメントが寄せられました。
その人物も「森の中でサメを見つけたことに、最初は何が起きたのか理解できなかった」と語ったそうです。
ちなみに、マートルビーチ周辺の大西洋沿岸には10種以上のシュモクザメが生息しており、2013年には新種「カロライナハンマーヘッド(Sphyrna gilberti)」も発見されています。
今回落ちてきたサメがどの種であったかは分かっていませんが、幼体であったことから沿岸で生まれたばかりだった可能性も指摘されています。
参考文献
Hammerhead shark falls from sky in South Carolina, interrupting disc golf game
https://www.livescience.com/animals/hammerhead-shark-falls-from-sky-in-south-carolina-interrupting-disc-golf-game
He Was Playing Disc Golf—Then a Tiny Hammerhead Shark Fell from the Sky
https://gardenandgun.com/articles/he-was-playing-disc-golf-then-a-tiny-hammerhead-shark-fell-from-the-sky/
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部