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地獄の門が54年ぶりに閉まり始める


トルクメニスタンのカラクム砂漠にある炎のクレーター「地獄の門」が、1971年に地質学的な事故によって発生して以来、54年間燃え続けてきました。しかし、2025年6月5日にトルクメニスタンで開催された国際科学会議で、科学者たちはこの巨大な火口の炎がようやく消え始めていると報告しました。トルクメニスタンの国営ガス企業「トルクメンガス」が、新たなガス採取井戸を掘削し、天然ガスを直接採取することで炎を縮小させる取り組みを行っています。この努力により、「地獄の門」の炎は従来の3分の1程度にまで縮小したとのことです。今後もこのシステムを拡充して、最終的に完全に消火することを目指しています。

トルクメニスタンには延々と燃え続けるクレーター「地獄の門」が存在します。

この恐ろしげな名前で知られる炎の穴は、1971年から現在に至るまで、トルクメニスタンのカラクム砂漠で絶え間なく燃え続けてきました。

しかし、2025年6月5日、国際科学会議「TESC 2025」にて、トルクメニスタンの科学者らは、この「地獄の門」が、ようやく消え始めていると報告しました。

では、この地獄の門とはいったい何でしょうか?なぜ今になって「閉まり始めた」のでしょうか?

目次

  • 炎のクレーター「地獄の門」とは何か?
  • 「地獄の門」の炎が小さくなっている

炎のクレーター「地獄の門」とは何か?

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トルクメニスタンの「地獄の門」 / Credit:Wikipedia Commons

地獄の門とは、トルクメニスタンのカラクム砂漠に位置する直径約70メートル、深さ30メートルに及ぶ巨大な火口です。

カラクムの輝き」という正式名称があるにもかかわらず、炎が延々と燃え続ける恐ろしい姿から、いつしか「地獄の門」と呼ばれるようになり、その名が定着しました。

この地形は自然現象ではなく、人為的な事故によって誕生したものです。

1971年、旧ソ連の地質学者チームが油田を求めて掘削調査を行っていました。

しかし遭遇したのは、地下に広がる大規模なガス空洞。

掘削機の重みもあって地盤が崩落し、巨大な穴が開いてしまったのです。

当然ながら天然ガスが漏れ出るようなりました。

調査隊は、有毒なメタンガスの拡散を防ぐため、「ガスを燃やして消費すればすぐに鎮火するだろう」と考えて点火しました。

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消えずに燃え続ける炎。まるで地獄の炎だと話題に / Credit:Wikipedia Commons

ところが、地下には予想を遥かに超える天然ガスの貯留層が存在しており、それから半世紀以上、クレーターの炎は燃え続けているのです。

トルクメニスタンは、世界有数の天然ガス埋蔵量を持つ国ですが、その資源が無為に燃やされている状況は国際社会からの批判の的となってきました。

さらに、燃焼の過程で温室効果ガスであるメタンが漏れ出すリスクや、観光地として訪れる人々の安全確保といった課題も指摘されています。

この問題を重く見たのが、ベルディムハメドフ大統領です。

2022年、彼は「地獄の門を封鎖すべきだ」と明言し、具体的な対応策の検討を命じました。

とはいえ、それまでに何度も消火を試みては失敗してきた経緯もあり、実現性については懐疑的な声が多かったのです。

【地獄の門】実在する「地獄の門」はもう誰も閉じることができない!

 

しかし2025年6月、ついに地獄の門が閉まり始めたというニュースがもたらされました。

「地獄の門」の炎が小さくなっている

2025年6月5日、トルクメニスタンの首都アシガバートで開催された科学会議「TESC 2025」において、トルクメニスタンの科学者たちは、地獄の門の炎がようやく消え始めていると発表しました。

54年も燃え続けた地獄の門が、なぜ閉じ始めたのでしょうか?

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地獄の門は閉じ始めている / Credit:Wikipedia Commons

同国の国営ガス企業「トルクメンガス(Turkmengaz)」の取り組みが関係しているようです。

彼らが行う閉鎖作業の要となっているのが、「坑井(こうせい)」と呼ばれる新たなガス採取井戸の掘削です。

地獄の門の近くに新たな坑井を複数掘削し、地下から噴き出す天然ガスを直接回収してパイプラインへと導くシステムを構築しているのです。

加えて火口付近に存在する坑井のいくつかを再び稼働させています。

これらの方法を用いるなら、天然ガスを地獄の門の火口に届く前に回収できます。

地獄の門の炎の規模を縮小できるだけでなく、天然ガスの有効利用も可能というわけです。

実際、プロジェクト関係者によれば、2025年春の時点で炎は従来の3分の1程度にまで縮小し、遠くからでは炎が確認しにくくなったと報告されています。

2013年には地獄の門の輝きは数キロメートル先まで見えていましたが、現在ではごく近くでしか確認できません。

プロジェクトチームは、今後さらに坑井を増やし、地中からの天然ガス供給を減らしていくことで、最終的には完全に炎を消すことを目標にしています。

かつて人々が「数日で消えるだろう」と軽く考えてつけた火は、54年にわたって燃え続けてきました。

しかし今、その火がようやく小さくなっています。

地獄の門は完全に閉じる日も、そう遠くないのかもしれません。

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参考文献

“Door to Hell”starting to close after 54 years
https://newatlas.com/environment/darvaza-gas-crater-door-to-hell-closing/

Turkmenistan’s achievements in reducing methane emissions were announced at the TESC 2025 conference
https://oilgas.gov.tm/en/posts/habarlar/14198/turkmenistans-achievements-in-reducing-methane-emissions-were-announced-at-the-tesc-2025-conference

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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