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蛇口をひねって「水飲み行動を習得」したオウムを発見!


オーストラリア南東部のシドニーで、キバタンというオウムが人間用の水飲み場の蛇口を操作し、自分で水を飲む技術を習得しているという発見がされました。この行動は一個体だけではなく、地域全体に広がる“文化”として定着し、キバタンたちは順番に水を飲む様子が撮影されています。研究では、キバタンがハンドルを足でひねり、水を出し続ける複雑な動作を学び、延べ525回の試行で41%が成功。性差はないものの、この行動はシドニーの特定地域に限られ、他地域には広がっていません。異なる地域の水飲み場が異なる設計(例:ボタン式)であるため、普及が制限されています。

水飲み場に列をつくって、順番に水を飲む。

そんな秀才オウムたちがこのほど、オーストラリア南東部のシドニーで確認されました。

独マックス・プランク動物行動研究所(MPIof Animal Behavior)を中心とする研究チームは、オウム科の一種である野生の「キバタン(学名:Cacatua galerita)」が、人間用の水飲み場の蛇口をひねって、自ら水を飲む行動を習得していることを発見しました。

さらにこのスキルは、一部の個体だけではなく、地域全体に“文化”として広がっていることが示されています。

研究の詳細は2025年6月4日付で科学雑誌『Biology Letters』に掲載されています。

目次

  • 水飲み場を攻略したオウムたち
  • 「水飲み技術」が文化として広がる

水飲み場を攻略したオウムたち

この驚きの行動は、偶然ではありませんでした。

キバタンたちは、公園などに設置されたツイストハンドル式の水飲み場を器用に操作していたのです。

水飲み場は、当然ながら、人間が使うことのみを想定して設計されており、ハンドルをねじっている間しか水が出ません。

つまり、キバタンが水を飲むには、足でハンドルをつかんでひねり、さらに体重をかけてハンドルを保持し、水を一定時間出し続けるという複雑な連携動作が必要になるのです。

こちらが実際の映像。

※ 視聴の際は音量にご注意ください。

研究チームは、2018年に野生のキバタンがこの行動を行っている現場を発見し、そこから本格的な調査を開始。

周囲の水飲み場10カ所を調べたところ、そのうち5カ所でキバタンによる使用の痕跡(くちばしの噛み跡など)が確認されました。

さらに動体検知カメラを設置して、44日間にわたる映像記録を分析した結果、延べ525回の「水飲みチャレンジ」が記録され、そのうち41%が成功していたことがわかりました。

特筆すべきは、研究者が目印をつけた個体(24羽中17羽)が全体の70%もの成功率を示していた点です。

この数字は、以前に観察された「ゴミ箱のフタ開け行動(=ゴミ箱を開けて、中の食料を漁る行動)」とほぼ同じ成功率で、キバタンの高度な学習能力と行動の洗練を示しています。

また、朝と夕方に活動が集中することや、雨の日には試行回数が減ることなど、行動パターンにも明確な法則性が見られました。

「水飲み技術」が文化として広がる

この水飲み行動の興味深い点は、単なる「賢い個体の特技」にとどまらず、地域全体に広がる“文化”のように根付いていたことです。

研究では、同じ水飲み場に列を作るキバタンたちの姿も確認され、1羽が水を飲んでいる間は他の個体が順番を待つ様子も映像に収められています。

キバタンたちは、それぞれに少しずつ異なる動作パターン(片足操作か両足操作かなど)を持ちながらも、共通の目的を達成するために動作を調整していたのです。

また、成功した操作パターンは構造的に似ており、失敗した動作よりも規則性や一貫性が高いことも判明しました。

これは、それぞれの個体が試行錯誤を通じて効率的な操作法を学び、それを維持していることを示唆しています。

画像
水を飲むキバタンたちと調査された場所/ Credit: Barbara C. Klump et al., Biology Letters(2025)

さらに重要なのは、この行動には性差が見られなかった点です。

以前のゴミ箱開け行動では、体力のあるオスが主に行っていたのに対し、水飲み場の操作はオスもメスも平等に実施していました。

ただし、この水飲み文化は今のところ、シドニーの観察された1つの地域に限定されています。

他地域に広がらない理由としては、水飲み場の設計が自治体ごとに異なることが大きいと考えられています。

別の地域では、ボタン式のものや水平の皿型であり、現在のキバタンのスキルでは対応できない可能性があるのです。

今回の研究は、都市化がもたらす新しい生態系の中で、動物たちがいかに柔軟に、そして創造的に適応しているかを示す好例となりました。

キバタンのような賢い鳥たちは、人間の作った道具を柔軟に利用して、生存戦略に役立てているのです。

全ての画像を見る

参考文献

Australian ‘trash parrots’have now developed a local ‘drinking tradition’
https://www.livescience.com/animals/birds/australian-trash-parrots-have-now-developed-a-local-drinking-tradition

Wild cockatoos are learning how to use water fountains
https://www.popsci.com/environment/cockatoo-drinks-from-water-fountain/

元論文

Emergence of a novel drinking innovation in an urban population of sulphur-crested cockatoos, Cacatua galerita
https://doi.org/10.1098/rsbl.2025.0010

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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