starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

「大卒で夜型」だと認知機能の低下スピードが速まると判明


オランダ・フローニンゲン大学の研究によると、夜型の人は朝型の人と比べて認知機能の低下が速まる可能性があり、特に大学レベルの高等教育を修了した人たちに顕著です。研究では、約2万4000人を対象に10年間の追跡調査が行われ、夜型傾向の強い人の方が認知機能の低下スピードが速いことが判明しました。高学歴者の場合、社会的時差による不十分な睡眠が脳への悪影響をもたらす可能性があります。また、夜型の人の認知機能低下の一部は、睡眠の質の低下や喫煙習慣に起因しており、これらの要因が約25%の影響を占めています。したがって、夜型の人は睡眠の質を保ち、禁煙することによって、認知機能の低下リスクを軽減できるかもしれません。

私たちはそれぞれ個別の「クロノタイプ(個人の体内時計の活動パターン)」を持っており、大きく「朝型」「夜型」の2つに分けられます。

そしてこのほど、オランダ・フローニンゲン大学(University of Groningen)の最新研究で、夜型の人は朝型の人に比べて、認知機能の低下スピードがより速くなる可能性が示されました。

特にその影響を受けやすいのは、大学レベルの高等教育を修了している人たちでした。

反対に中学卒業レベルの方々は夜型でも、認知機能のより速い低下は見られなかったとのことです。

なぜ高学歴の人は夜型だと、認知機能が低下しやすくなるのでしょうか?

研究の詳細は2025年4月の学術誌『The Journal of Prevention of Alzheimer’s Disease』に掲載されています。

目次

  • 大卒の夜型は認知機能の低下が速まる?
  • 2つの生活習慣が脳に追い打ちをかけていた

大卒の夜型は認知機能の低下が速まる?

人には「クロノタイプ」と呼ばれる、体内時計に基づいた睡眠・活動の傾向があります。

朝早くから元気な“朝型”もいれば、夜遅くに覚醒する“夜型”もいます。これらは遺伝的要因も大きく、生まれつきの体質に近いものです。

今回の研究では、オランダ北部に住む40歳以上の約2万4000人を対象に、睡眠習慣と認知機能(非言語的な流暢性や実行機能)との関連を10年間にわたり追跡しました。

そしてデータ分析の結果、夜型の傾向が強い人ほど、認知機能が低下するスピードが速いことが明らかになったのです。

画像
Credit: canva

さらに注目すべきは「高学歴(大学レベル以上)」の参加者にこの傾向が顕著に表れていたことでした。

反対に、義務教育レベルまでを修了した人々では、たとえ夜型であっても、認知機能の低下スピードが速まることはなかったのです。

では、なぜ高学歴者に限ってこの影響が強く出てしまったのでしょうか?

研究者はその理由の一つとして「社会的時差(ソーシャル・ジェットラグ)」を指摘しています。

夜型の人は本来、朝ゆっくり起きて夜に活動するリズムを持っています。

しかし高学歴者の多くはオフィス勤務など朝早く出勤しなければならない仕事に就いており、自分の体内時計と社会のリズムがズレたまま生活することを強いられているケースが多いのです。

このズレによって十分な睡眠がとれず、脳が回復する機会を失い、長期的には認知機能に悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。

2つの生活習慣が脳に追い打ちをかけていた

チームはさらに、夜型が認知機能に与える影響の一部は、2つの生活習慣によって媒介されていることも突き止めました。

具体的には、

・睡眠の質の低下

・現在進行形での喫煙習慣

です。

この2つが、夜型の人の認知機能低下の原因の約25%を占めていたのです。

たとえば夜型の人は、深夜にスマートフォンやテレビを見る時間が長くなりやすく、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が遅れて睡眠の質が低下しがちです。

また、ストレスや眠気覚ましを理由に喫煙に依存する傾向も見られました。

このような習慣が、さらに脳に悪影響を与え、認知機能の持続的な低下を招いていると考えられます。

興味深いのは「飲酒」や「運動不足」も夜型に多い傾向があるものの、これらは認知機能の低下には直接的な影響を示さなかったという点です。

つまり、夜型であっても睡眠の質の維持と禁煙にポイントを絞ることで、ある程度、認知機能の低下リスクを軽減できる可能性があります。

画像
Credit: canva

チームは「高学歴の人々は責任の重い仕事や長時間労働によって、生活リズムを自分に合わせる柔軟性がない」とも指摘しています。

一方で、学歴が中程度か低い人々は、比較的自分のクロノタイプに合った勤務時間を選びやすい職に就くことができ、体内時計に逆らわない生活ができていることが、リスク回避につながっているのかもしれないと述べました。

「夜型」の生活が決して悪いわけではありません。

ただし大切なのは、自分のクロノタイプをしっかりと理解し、それに合わせた生活習慣(十分な睡眠や禁煙など)をいかに確保するかということでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Night Owls May Be at Higher Risk of Cognitive Decline. Here’s Why.
https://www.sciencealert.com/night-owls-may-be-at-higher-risk-of-cognitive-decline-heres-why

Night Owls Face Faster Cognitive Decline
https://neurosciencenews.com/night-owls-cognition-29175/

元論文

Chronotype as a potential risk factor for cognitive decline: The mediating role of sleep quality and health behaviours in a 10-year follow-up study
https://doi.org/10.1016/j.tjpad.2025.100168

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2025
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.