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幻の生物とされる巨大甲殻類「ダイダラボッチ」、実は世界中の深海にいた⁈


深海の巨大甲殻類「アリセラ・ギガンティア(ダイダラボッチ)」は、稀少とされていましたが、豪ウェスタン・オーストラリア大学の研究により、実は世界の深海底の約60%に分布していることが示されました。調査では、アリセラ・ギガンティアが太平洋・大西洋・インド洋に点在し、3,890メートルから8,931メートルの深海に広く生息していることが確認されました。また、これらの個体は遺伝的にほぼ同一であると判明。この発見は、稀少と思われた生物が実は深海の普通種である可能性を示唆し、観察手法の見直しを迫っています。

深海探査の際、運がよければ稀に見つかる巨大な甲殻類アリセラ・ギガンティア(Alicella gigantea)」

なんと体長30センチを超えるこの深海生物はヨコエビ類(端脚類)のなかで世界最大種とされており、和名では日本に伝わる巨人にちなんで「ダイダラボッチ」と呼ばれています。

ダイダラボッチはこれまでの調査で稀少な生物と考えられていましたが、豪ウェスタン・オーストラリア大学(UWA)の研究で、実は世界の深海底の60%に分布している可能性が浮上したのです。

伝説ポケモンくらい珍しいと思っていたら、わりと普通にいるモンスターだったのかもしれません。

研究の詳細は2025年5月21日付で科学雑誌『Royal Society Open Science』に掲載されています。

目次

  • 幻とされた巨大ヨコエビ
  • 深海の巨人はレアじゃなかった?

幻とされた巨大ヨコエビ

アリセラ・ギガンティアは、体長30センチを超えることもある世界最大級の端脚類(ヨコエビの仲間)です。

他の端脚類のほとんどが、ほんの指先くらいの大きさしかないことを考えると、異常なサイズであることがわかります。

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ダイダラボッチ/ Credit: ja.wikipedia

この種は、1899年に初めて記載されて以来、記録や標本が極めて限られていたことから、「非常に希少な生物」とされてきました。

特に1970年代以降、その姿がカメラに映ったのはごくわずか。

2000年代に入ってからも、南太平洋のケルマデック海溝などでごく少数が確認されただけで、ほとんどの深海探査では出会うことがありませんでした。

そのため、研究者の間でも「個体数が少ないのでは」「絶滅寸前かもしれない」との見方が広がっていたのです。

しかし問題は“数が少ない”ことではなく、“探している場所が偏っていた”ことにあったのかもしれません。

研究チームは今回、過去の記録を徹底的に調査し、さらに独自に深海探査を行うことで、驚くべき事実にたどり着きました。

深海の巨人はレアじゃなかった?

研究チームが集めたデータは、太平洋・大西洋・インド洋に点在する75地点・195件の出現記録

生息深度は3,890メートルから8,931メートルに及び、アビサル帯からハダル帯までの深海全域に広く分布していることが明らかになりました。

さらに、得られた標本からはミトコンドリアDNAと核DNAの配列が解析され、世界中の個体がほとんど同じ遺伝型を持つことが判明したのです。

このことから研究者らは「アリセラ・ギガンティアは地球規模でほぼ同一種として存在している」と説明。

そしてこれらのデータから生息範囲を地図上で計算すると、なんと地球の深海底の約59.45%に達することが示されたのです。

つまり、私たちがこれまで「ほぼ見ることができない」と思っていたダイダラボッチは、実はとても普通に、深海のあちこちに存在していると見られています。

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撮影されたダイダラボッチの群れ/ Credit: Paige J. Maroni et al., Royal Society Open Science(2025)

また、解析の結果、アリセラ・ギガンティアには大きな天敵が存在しない可能性も示唆されました。

そのため、警戒色の赤を帯びる必要がなく、体色に色素をほとんど持たない特徴を示していると見られます。

これがまた調査時の「見つかりにくさ」につながっていたのかもしれません。

さらに近年の深海探査の進展によって、浅い海では確認されていなかった「密集した群れ」が深海平原で撮影されるようにもなっています。

「少ないと思っていたのは、ただ正確な場所にアクセスできていなかっただけ」であり、研究者たちは、観察バイアスという人間の手による調査の限界をデータで浮き彫りにしました。

この発見は、深海に生きる多くの生物に対する私たちの認識を覆すものです。

なかなか見つからないからといって「稀少」や「絶滅危惧」と判断するのは、科学的観察としてはまだまだ不十分なのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

60% of The Ocean Floor Could Harbor ‘Rare’Supergiant Crustacean
https://www.sciencealert.com/60-of-the-ocean-floor-could-harbor-rare-supergiant-crustacean

Study finds deep-sea giant may inhabit more than half the world’s oceans
https://www.uwa.edu.au/news/article/2025/may/study-finds-deep-sea-giant-may-inhabit-more-than-half-the-worlds-oceans

元論文

The supergiant amphipod Alicella gigantea may inhabit over half of the world’s oceans
https://doi.org/10.1098/rsos.241635

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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