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鳥も友達を作る――20年の研究で明らかに


コロンビア大学の研究チームは、ツキノワテリムクという鳥が血縁を越えた長期協力関係を築いていることを20年以上の調査で発見しました。ケニアで行われたこの研究は、鳥たちが非血縁の仲間を支援する行動を示すことを観察し、これが「友情」に似た関係であることを示唆しています。特に繁殖しない「ヘルパー」たちが、餌運びや巣の防衛などで繁殖するペアを支援する行動は、一過性ではなく長期間にわたるものです。この研究は、人間以外の動物も持続的な協力関係を築くことができることを明らかにしました。

私たちには、時に家族よりも心を許せる親友ができるものです。

でも、それは人間だからこそ可能な関係なのでしょうか?

他の動物たちに、血縁にとらわれない「友情」のような関係はあるのでしょうか?

この問いに対して、アメリカ・コロンビア大学(Columbia University)の研究チームが、驚きの答えを示しました。

彼らはケニアに生息する色鮮やかな鳥「ツキノワテリムク(Lamprotornis superbus)」を対象に、なんと20年以上にわたるフィールド研究を実施。

その結果、鳥たちもまた、血の繋がりを越えて長期的な協力関係を築くことがあると明らかにしました。

それはまるで“友情”です。

この研究成果は、2025年5月7日付の科学雑誌『Nature』に掲載されました。

目次

  • 鳥も友達を作るのか?社会性あふれるカラフルな鳥「ツキノワテリムク」を調査
  • 鳥の間に築かれていた“友情”のような協力関係を発見

鳥も友達を作るのか?社会性あふれるカラフルな鳥「ツキノワテリムク」を調査

動物が血縁者と助け合うことはよく知られています。

その理由として、「血縁者の子ども=自分と同じ遺伝子を共有している相手」だからこそ支援するという説が広く受け入れられています。

「遺伝子を長く残す目的で本能的に助け合う」と考えられるわけです。

ですが、たまに見られる「非血縁の個体を助ける行動」は、その説明だけでは理解できません。

そして血縁関係のない動物同士が長期にわたる友情を築くかどうかは、長年議論されてきました。

そこで研究チームは、「非血縁者間にも、継続的な協力関係があるのではないか?」という仮説のもとに、長期にわたる野外調査を実施しました。

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ツキノワテリムク / Credit:Columbia University

対象となったのは、血縁関係以外でも助け合うことで知られているムクドリでした。

アフリカの広大なサバンナに生息するツキノワテリムク(学名:Lamprotornis superbus)は、ムクドリの一種です。

名前のとおり、胸元にはくっきりとした白いバンド模様「ツキノワ」を持っています。

また、青緑の光沢を持つ背中と鮮やかなオレンジ色の腹を持ち合わせており、その美しい体色でよく知られています。

体長は20cmほどと中型で、観光地などでも人懐っこく姿を見せるため、人気の鳥でもあります。

しかしこの鳥の真の魅力は、その「見た目」ではなく「社会性」にあります。

ツキノワテリムクは、「協同繁殖」を行う種のひとつなのです。

では、この鳥たちの間では、どのような助け合いが見られるのでしょうか?

調査は2002年から2021年にわたり、ケニア中部に生息する9つのツキノワテリムクのグループを対象に行われました。

各個体には色分けされた足輪をつけ、数百羽の個々の行動を識別。

40の繁殖シーズンを通じて、毎回の支援行動(エサ運搬、防衛、巣の掃除など)を詳細に記録しました。

さらにDNA検査を通じて、「血縁関係」がもたらす行動への影響も調査されました。

鳥の間に築かれていた“友情”のような協力関係を発見

研究の結果、それぞれの群れは60~70羽から構成されており、その中には血縁関係もあれば、血縁関係のない鳥たちも含まれていました。

研究チームは、「ムクドリの社会は、単なる家族ではなく、はるかに複雑で、血縁関係のある個体と血縁関係のない個体が混在して共存している」と解説しています。

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ツキノワテリムクは血縁関係以外でも長期にわたり助け合う / Credit:Dustin R. Rubenstein(Columbia University)et al., Nature(2025)

そして、研究チームが注目したのは、観察された協力行動において、血縁のない相手に対する支援が数多く見られたという事実でした。

繁殖するペアを最大16羽の繁殖しない個体(つまりヘルパー)が助けていたのです。

このサポートには、幼鳥のエサ探しや、捕食者から巣を守ることまで含まれます。

彼らは血縁関係のある個体を優先するものの、そうでない仲間も助けていました。

つまり、ツキノワテリムクは「家族・親戚だから助ける」だけではなく、「友だから、仲間だから、相手を助ける」行動をとっていたのです。

さらに注目すべきは、その関係性が一時的なものではなく、数シーズンにわたって維持されていたという点です。

例えば、ある年にAがBの巣を手伝った場合、翌年にはBがAの巣を支援する。こうした相互的な協力(互恵的利他主義)が何年にもわたって続いていたのです。

これはまるで人間の間にある友情や助け合いの仕組みに似ています。

鳥も人間のように長年の「友」をつくるのです。

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鳥たちも人間のような「友」の関係を築く / Credit:Canva

もちろん、ツキノワテリムクがそんな友に対して、私たちと同じ感情「友情」「信頼」を持っているとは断言できません。

しかし、彼らが長期的な協力関係を築くための社会的記憶と行動パターンを持っていることは間違いないでしょう。

今後は、こうした協力関係がどのように築かれ、どのように維持・変化していくのか、さらには「一方的な支援が続いた場合にどうなるのか」といった関係性の変化が注目されます。

また、他の鳥類や哺乳類にも類似の協力関係が見られるかどうかも、今後の大きな研究課題となるでしょう。

今回の研究が教えてくれたのは、「協力」や「持続的な関係」は人間だけの特権ではないということです。

次に仲が良さそうな鳥たちを見た時、「彼らは家族かな、それとも親友かな」なんて考えてみるのも楽しいことでしょう。

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参考文献

Birds make friends too, 20-year study finds
https://newatlas.com/biology/birds-friend-behavior/

New Study Shows That Birds Form Bonds That Look a Lot Like Friendship
https://news.columbia.edu/news/new-study-shows-birds-form-bonds-look-lot-friendship

元論文

A cryptic role for reciprocal helping in a cooperatively breeding bird
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08958-4

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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