「朝日を浴びると目覚めが良くなる」──そんな話を一度は聞いたことがあるはずです。
でも、いざ眠るときには迷いが生じます。
「カーテンは閉めて寝るべき?それとも開けておくべき?」
朝の光を取り入れるために開けて寝たほうがいいのか、それとも外の光で眠りが浅くなってしまうのか。どちらが本当に良いのでしょうか?
そんな疑問に答えるべく、大阪公立大学の研究チームが立ち上がりました。
研究では、3種類の起床環境を比較。その結果、もっとも快適な目覚めをもたらす「ベストな起床環境」が明らかになったのです。
この研究成果は、2025年2月14日付で『Building and Environment』誌に掲載されました。
目次
- カーテンは開けて眠る?それとも閉めて眠る?爽快な目覚めを追求する実験
- 最も快適な目覚め得るには、「起床の20分前の朝日」が大切だった
カーテンは開けて眠る?それとも閉めて眠る?爽快な目覚めを追求する実験
誰もが経験する「目覚めのつらさ」。
現代社会では、十分な睡眠時間を取っているにもかかわらず、朝の眠気や疲労感が抜けないという人も多いのではないでしょうか。
この「寝起きの悪さ」は、睡眠の質や長さだけでなく、「目覚め方」にも関係していることが近年の研究で明らかになっています。

特に注目されているのが、朝の光です。
朝の光には、私たちの体内時計をリセットし、覚醒を促す働きがあります。
しかし、自然光をうまく取り入れる方法については、意外にも明確な答えが出ていませんでした。
光を浴びすぎると睡眠を妨げてしまうリスクもあるため、「どのタイミングで、どのくらいの光を浴びるのが良いのか」は謎のままだったのです。
そこで大阪公立大学の研究チームは、自然光の「入り方」が目覚めの質にどのように影響するのか検証しました。

研究では、以下の3つの異なる条件で行われました。
- 起床20分前から自然光を取り入れる
- 夜明けから起床まで自然光を浴びる
- 起床前は完全遮光(自然光なし)
この3つの状態を19人の大学生(20~30歳)に3日ずつ体験させ、眠気や疲労、覚醒度などを測定する比較実験を行いました。
最も快適な目覚め得るには、「起床の20分前の朝日」が大切だった
実験の結果、もっとも目覚めが良かったのは「起床の20分前にカーテンを開けて自然光を浴びる」パターンでした。
この条件では、客観的な覚醒度の上昇(脳波測定)や主観的な眠気の低下が顕著に見られ、最も快適に目覚めることができたのです。

一方、夜明けから自然光を浴び続ける環境では、同じように覚醒度や眠気の低下が見られるものの、「起床の20分前」条件よりも効果は低いことが分かりました。
研究チームは、朝日を浴びることは目覚めに良いものの、光が強すぎたりタイミングが早すぎたりするなら、途中で目が覚めてしまい、かえって睡眠の質が下がるリスクを指摘しています。
そしてカーテンを完全に閉めて寝る条件では、光による刺激が得られず、起床時の眠気が最も強くなるという結果になりました。
この研究から導かれる結論は明快です。
「起床の20分前に自然光を浴びると、目覚めがスッキリする」
つまり、カーテンは「閉めて寝て、朝に自動で開く」のがベスト。
最近ではスマート家電として、時間を設定すると自動でカーテンが開く「自動カーテン」が販売されています。
今回の研究は、まさにそのような使い方が科学的に有効であることを示しています。

大切なのは、「起きる前に光を取り入れる」というタイミングです。
導入はいくらか大変かもしれません。
それでも、目覚めは1日の活動に大きく影響し、それが毎日続くことを考えると、なんとかして「起床の20分前に朝日を浴びる」ようにするのは重要なことかもしれません。
そして何より、「目覚めが良いと気分もいい」はずです。
自然のリズムに逆らうのではなく、調和した環境を整えることで、私たちの生活の質は大きく向上することでしょう。
(今回の研究には、サンプル規模が小さいこと、対象者が大学生に限られることなど、いくつかの限界があります)
参考文献
起床前に自然光を浴びると目覚めの質が向上
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-16768.html
Scientists tested three wake-up routines. One type of bedroom lighting clearly stood out.
https://www.psypost.org/scientists-tested-three-wake-up-routines-one-type-of-bedroom-lighting-clearly-stood-out/
元論文
Natural light control to improve awakening quality
https://doi.org/10.1016/j.buildenv.2025.112733
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部