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ノルウェーの山岳氷河が溶けて「1300年前のスキー板」が発見される! 【スキー板は人類の○○力を示していた】


ノルウェーの山岳地帯で1300年以上氷に閉ざされていたスキー板が発見され、過去の人類がどのように厳しい環境に適応していたかに関する新たな知見を提供しました。これは「Secrets of the Ice」というプロジェクトの一環で、ノルウェーのディゲルヴァルデン山で見つかったものです。発見されたスキー板は過去に見つかった片方のスキー板と対を成すもので、保存状態も非常に良好です。このような発見は、氷河の融解が新たな歴史資料を提供する一方で、現在の気候変動による環境への影響をも示しています。今後、こうした発見が気候変動に対する対策や理解を進める上で重要な役割を果たすと考えられています。

氷が解けて現れるのは、水たまりだけではありません。

ノルウェーの山岳地帯で、1300年以上も氷に埋もれていたスキー板が姿を現しました。

しかも、それは過去に発見された片方のスキー板と完全に対を成すものであり、現存する中で最も保存状態の良いスキー板のペアと考えられています。

この発見は考古学的に貴重であり、過去の人類がどのように厳しい環境へ適応していたかを教えてくれる重要な手がかりとなりました。

この報告は、2025年4月4日、コロンビア大学の気候学校(Columbia Climate School)のニュースサイトに掲載されました。

目次

  • ノルウェーの山岳氷河から1300年前のスキー板が発見される!
  • スキー板から垣間見る「寒冷化に対する人類の適応」

ノルウェーの山岳氷河から1300年前のスキー板が発見される!

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氷河の融解による遺物の発見を目的とした「Secrets of the Ice」プロジェクト / Credit:Secrets of the Ice

今回のスキー板発見の背景には、「Secrets of the Ice」という氷河考古学プロジェクトの存在があります。

このプロジェクトは、ノルウェー・インランデ県議会とオスロ大学に属する文化歴史博物館(Museum of Cultural History, Oslo)が共同で運営しており、氷河の融解によって現れる貴重な遺物の発見と保護を目的としています。

2006年、気候変動による氷の大量融解で数百点の遺物が発見されたことをきっかけに始まり、2011年には資金提供を受けて本格始動。

2016年からは”Secrets of the Ice”として公式ウェブサイトとSNSを通じて一般向けの情報発信を強化し、国際的な注目を集める存在となりました。

このプロジェクトでは、人工衛星画像、現地のハイカー、トナカイ牧夫たちの協力を得て、有望な氷河地点の探索が行われています。

そうした活動の中で発見されたのが、今回の1300年前のスキー板です。

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1300年前のスキー板が発見される。過去に発見されたスキー板と対になるもの / Credit:Secrets of the Ice

この発見の舞台は、ノルウェー中部のディゲルヴァルデン山(Digervarden Mountain)です。

ここでは2014年に約1300年前の片方のスキー板が発見されており、今回発見されたもう一方の板と見事に一致しました。

このスキー板は長さ約187cm、幅約17cmで、革製のストラップや木の繊維、接合部の細部に至るまで極めて良好な保存状態を保っています。

当時の人々が、過酷な冬の高地環境での移動や狩猟に備えて高度な道具を用いていたことが、この遺物からはっきりと読み取れるのです。

この発見について、「Secrets of the Ice」プロジェクトの共同ディレクターであるラース・ホルガー・ピロー氏は「私たちが過去に見つけたどのスキー板よりも状態が良く、完全な形で発見されたことに驚いています」と語っています。

では、この発見から私たちは何を学ぶことができるのでしょうか?

スキー板から垣間見る「寒冷化に対する人類の適応」

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気候変動が新たな歴史資料の扉を開いている / Credit:Secrets of the Ice

発見されたスキー板から学べることのひとつは、気候変動が新たな歴史資料の扉を開いているという皮肉な現実です。

氷河の融解によって、長年封じられていた過去の人類の営みが次々と明らかになっています。

狩猟具や衣服の断片、道具、そして今回のようなスキー板が姿を現し、考古学に革命をもたらしているのです。

特に今回のように、左右セットでのスキー板の発見は極めて珍しく、使用法や技術的背景を推定する上で非常に貴重な資料となります。

さらに、このスキー板が使われていたと考えられる時期は、後期古代小氷期(約紀元535年〜660年)に当たります。

この時代は大気中に浮遊した火山灰や気候変動の影響により寒冷化が進行し、山岳地帯での農耕は困難になったとされています。

人々は生き残るために氷上でのトナカイ狩りなどを強化する必要があり、こうした道具はその手段の一端を担っていたと考えられます。

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スキー板は1300年前の人類の適応力を示すもの / Credit::Secrets of the Ice

そして発見されたスキー板は、自然環境への適応力と高い技術力の証拠です。

過去の人類が単に耐え忍んでいたのではなく、柔軟に環境変化に対応していたことを物語っているのです。

しかし当然ながら、この発見には警鐘も含まれています。

山岳氷河が過去にないペースで融けていることを示すからです。

つまり私たちは、新たな歴史を知るのと同時に、貴重な氷河や生態系が失われつつあるという現実も突きつけられています。

「Secrets of the Ice」プロジェクトは、こうした現象の記録と保存を通して、現在そして未来の気候変動への知的資産を残すことを目的としています。

人類の歴史は、氷の中に眠っているかもしれません。

そして今、氷が解けるたびに、私たちが知るべき過去と、備えるべき未来のヒントが顔を出しているのです。

私たちが今できることは、そうした貴重な声に耳を傾け、気候変動に対する行動へとつなげていくことかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Melting Glaciers Reveal Clues to Climate Adaptation in Norway’s Mountains
https://news.climate.columbia.edu/2025/04/04/melting-glaciers-reveal-clues-to-climate-adaptation-in-norways-mountains/

The Best-Preserved Pair of Skis from Prehistory
https://secretsoftheice.com/news/2021/10/05/the-best-preserved-pair-of-skis-from-prehistory/?utm_source=chatgpt.com

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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