暗闇に輝く「黄金の洞窟魚」が発見されました。
中国・貴州師範大学(GNU)の研究チームはこのほど、同国南西部の貴州省の洞窟内で、これまでに知られていなかった「シノシクロケイルス属」の新種を確認したと発表。
シノシクロケイルス属はほぼ全種が洞窟やその周辺に生息しているグループです。
今回見つかった新種は、今まさに洞窟環境に適応しながら進化している最中だといいます。
研究の詳細は2025年2月24日付けで科学雑誌『Zoosystematics and Evolution』に掲載されました。
目次
- なぜ洞窟魚はウロコや目を失うのか?
- 新種の「黄金の洞窟魚」を発見、進化の途上にある
なぜ洞窟魚はウロコや目を失うのか?

コイ科のシノシクロケイルス(Sinocyclocheilus:金線䰾)属は、中国南部のカルスト地形の洞窟に生息する洞窟魚のグループです。
この属にはこれまでに約80種類が知られており、そのほぼ全種が洞窟内部かその周辺に生息しています。
またシノシクロケイルス属のほとんどは、ウロコがない・色素が薄い・目が小さいか消えているといった洞窟環境ならではの適応を示しています。
光の差さない洞窟内ではものを見ることができないので、目がどんどん退化していき、体の色素も薄くなっていきます。
それから洞窟内では捕食圧が低くなるため、自らの身を守るウロコも徐々に消失していきます。
それよりもむしろ、ウロコをなくして柔軟な体を手に入れることで、洞窟内の狭い岩場などをすり抜けることが可能になります。
加えて、洞窟内は低酸素環境になるため、ウロコをなくすことで、皮膚からの直接的な酸素吸収率を高めるのにも役立ちます。
そして新たに見つかった新種のシノシクロケイルス属もまた、中国南西部の貴州省・興仁(こうじん)市にある洞窟内部に生息していました。
ところが、他のシノシクロケイルス属とは一風変わった見た目をしていたのです。
新種の「黄金の洞窟魚」を発見、進化の途上にある
新種の洞窟魚は体長約15センチで、ウロコがなくなっている他に、胸ビレや腹ビレが短めで、動きが制限される洞窟環境に適応しているといいます。
しかし一方で、他のシノシクロケイルス属と異なる鮮やかな黄金色の皮膚と大きな両の目を持っていたのです。
これらは彼らがまだ完全な洞窟の暗闇に適応しておらず、今もなお洞窟の開口部を通じて光を感じる生活習慣にあることを示しています。
研究チームは本種を新たに「興仁金線䰾(学名:Sinocyclocheilus xingrenensis)」と命名しました。

今回の発見は、洞窟魚の進化がどのように進むのかを解明する手がかりとなります。
洞窟魚は通常、何百万年もの時間をかけて環境に適応していきます。
新種の洞窟魚は、まだ完全に暗闇に適応しきっていない進化の途上にあると考えられます。
つまり、今後さらに目が退化するのか、あるいは何らかの理由でこのままの状態を維持するのか、進化のプロセスが現在進行中なのです。

次のステップとしては、この魚の生活サイクルや洞窟環境でどのように繁殖しているのかについての詳細な調査が必要です。
また、なぜこの魚だけが黄金色を保っているのか、その謎も解明されるかもしれません。
洞窟魚の進化の過程を追うことで、生物がどのように環境に適応していくのか、その壮大なストーリーが明らかになっていくでしょう。
参考文献
Golden scaleless cave fish discovered in China shows evolution in action
https://www.livescience.com/animals/fish/golden-scaleless-cave-fish-discovered-in-china-shows-evolution-in-action
元論文
Sinocyclocheilus xingrenensis (Cypriniformes, Cyprinidae), a new underground fish from Guizhou Province, Southeastern China
https://doi.org/10.3897/zse.101.141444
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部