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【80%が半年以内に意識回復】意識不明患者が目覚める隠れたサインを発見!


最新の研究により、意識不明とされる患者の約25%が実際には「認知運動解離(CMD)」という状態で、外部刺激に反応している可能性があることが明らかになりました。このCMD患者の意識回復を示す指標として「スリープスピンドル」と呼ばれる脳波パターンが注目されています。研究によると、スリープスピンドルの頻度が高い患者は、6か月以内に意識を取り戻す可能性があります。この発見により、意識不明患者の診断と治療の精度向上が期待されています。

「意識不明」と聞くと、まるで深い眠りに落ちたかのように、外界の刺激に一切反応しない状態を想像するかもしれません。

しかし、最新の研究によると、一見すると意識がないように見えても、実は脳が外部の刺激に反応している可能性があることが明らかになりました。

これは「認知運動解離(Cognitive Motor Dissociation, CMD)」と呼ばれる現象であり、脳の中では意識が残っているにもかかわらず、体が動かず意思疎通ができない状態です。

この「隠れた意識」の存在を明らかにする鍵となるのが、**スリープスピンドル(Sleep Spindles)**と呼ばれる脳波のパターンです。

最新の研究では、このスリープスピンドルが患者の意識回復の可能性を予測する指標になることが示されました。

今回の研究は、米国のコロンビア大学アービングメディカルセンターを中心とした国際チームによって行われ、2025年3月にNature Medicine誌に掲載されました。

目次

  • 脳の「隠れた意識」を探る
  • 意識不明でも脳は外部刺激に反応している!?

脳の「隠れた意識」を探る

過去数十年にわたり、脳損傷を受けた患者の中には、明らかな意識の兆候が見られないにも関わらず、EEG(脳波測定)やfMRI(機能的MRI)で脳の活動が確認されるケースが報告されていました。

これは「CMD(認知運動解離)」と呼ばれています。

最近の調査でも、意識不明と診断された患者の4人に1人はCMDであると報告されています。

「意識不明の勘違い」調査したら4人に1人は体が動かないだけで意識はあった!

こうした症状を聞くと、外部からの呼びかけを認識していて思考もできるのに、体で表現する運動能力は沈黙している「閉じ込め症候群(locked-in syndrome)」という症状をイメージしてしまいますが、CMDはここまで鮮明な意識がある状態ではないので混同しないよう注意しましょう。

ただこのCMDが確認できたとしても、それをどう評価し、治療につなげるかは明確になっていませんでした。

研究チームは、今回、そんなCMDの患者に見られるスリープスピンドルという脳波に着目しました。

スリープスピンドルとは、睡眠中に脳で発生するリズミカルな脳波活動のことで、記憶の固定や神経修復に関与すると考えられています。

今回の研究では、急性脳損傷を負った患者の脳波を測定し、スリープスピンドルの有無と意識回復の兆候が関係しているのではないかという仮説を立てて調査したのです。

まず、過去10年間に蓄積された脳損傷患者のEEG(脳波測定)データを分析しました。

意識を回復した患者と回復しなかった患者のEEGパターンを比較したところ、回復した患者には、睡眠時に特定の12〜16Hzのスリープスピンドルが多く見られることが分かりました。

次に、研究チームは急性脳損傷を負った患者150名を対象に、EEGを用いた長期的な観察を実施しました。

その結果、スリープスピンドルが一定の閾値(1分間に5回以上)を超えた患者は、6カ月以内に意識を取り戻す確率が80%以上であることが確認されたのです。

いつ目覚めるか見当のつかなかった意識不明患者に対して、この研究は特定の脳波パターンから回復可能性を定量的に評価できる可能性を示したのです。

意識不明でも脳は外部刺激に反応している!?

この研究が示した最大のポイントは、外部から見ると無反応に見える患者でも、脳内では外界を認識し、反応している可能性があるという点です。

例えば、過去の研究では「患者の耳元で家族の声を聞かせた際に、脳波が変化する」といったケースも報告されています。

意識はなくとも家族の声に脳が反応している場合がある/Credit:canva

今回の研究では、そうした隠れた意識を発見するための新たな手法として、スリープスピンドルが有望な指標になる可能性を示しました

研究チームは、今後さらに精度の高い診断技術を確立するため、AIを活用したEEGデータ解析にも取り組んでいます。

今回の研究成果を活かせば、スリープスピンドルを指標として、回復の可能性が高い患者に積極的なリハビリを提供することが可能になるかもしれません。

現在、EEG(脳波測定)を活用した診断法の標準化が進んでおり、これにより重度の脳損傷患者の意識状態をより正確に評価し、適切な治療の選択が可能になることが期待されています。

また、この傾向を逆に利用して、意識不明患者のスリープスピンドルを増強する治療法が開発される可能性もあります。

たとえば、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いたスリープスピンドルの誘導や、個別最適化された神経刺激プログラムなどで、意識回復を促進できるかもしれないのです。

意識不明の患者が実は我々の目からは「隠れた意識」を持っているかもしれない——。

この発見が、今後の医療にどのような変革をもたらすのか、注目が集まります。

全ての画像を見る

参考文献

Sleep patterns may reveal comatose patients with hidden consciousness
https://www.sciencedaily.com/releases/2025/03/250303141706.htm

Sleep Brain Waves Linked to Consciousness in Coma
https://neurosciencenews.com/consciousness-sleep-spindles-28453/

元論文

Sleep spindles as a predictor of cognitive motor dissociation and recovery of consciousness after acute brain injury
https://doi.org/10.1038/s41591-025-03578-x

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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