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【これって何?】一瞬で水が消えて大量の粉になる不思議な現象の仕組み


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水を注ぐと雪のような物体があふれ出る / Credit:NileRed(YouTube)_Demonstration of Instant Snow (Sodium Polyacrylate)(2015)

容器に入った少量の白い粉末に水を注ぐと、膨張し、大量の雪のような物質になる


まるで手品のようなこの現象はなんなのでしょう?


この映像を見ると、この粉末は非常に給水能力の高い物質で、少量で大量の水を吸収してしまっているのだと考えられます。


これに該当する物質の候補としては、「ポリアクリル酸ナトリウム」と呼ばれる物質が考えられます。


これは日常生活の様々な場面で活躍しており、赤ちゃんの紙オムツにも使われています。


では、どうしてポリアクリル酸ナトリウムは、少量で大量の水を吸収することができるのでしょうか。今回はその性質について解説します。




目次



  • 魔法の粉の正体は高吸水性ポリマー
  • 水を保持できる理由は「網目構造」
  • ポリアクリル酸ナトリウムは日常生活で役立っている!安全性は?

魔法の粉の正体は高吸水性ポリマー


水を注ぐだけで膨張するこの粉末は、架橋処理を施した「ポリアクリル酸ナトリウムです。


「高吸水性ポリマー(SAP)」とも呼ばれています。


そしてこれは、自重の数百倍から約千倍まで水を吸収・保持できるため、水を注ぐとGIF画像のような現象を起こします。


では、どうして高吸水性高分子(架橋したポリアクリル酸ナトリウム)は大量の水を吸収し、保持できるのでしょうか。


まず、高吸水性高分子のイオン濃度は、水中のイオン濃度よりも高い状態にあります。


そのため、高吸水性高分子が水に接触すると、浸透圧が発生。


浸透圧とは濃度の異なる液体が半透膜を通して接した時、濃度を一定に保とうとして水が移動する力のことです。


この浸透圧により、濃度の低い方から高い方へと水が移動する力が生じ、高吸水性高分子は水を吸水するのです。


また、高吸水性高分子は親水性(水を弾かず、水と相互作用しやすい性質)も持っています。


この親水性は、紙が水をすぐに吸収するのと同じく、高吸水性高分子がたくさんの水を瞬時に吸水するのに役立っています。


ここでまでで、高吸水性高分子が水を吸収しやすいことが分かりました。


次に、その吸収した水をどのように保持しているのか考えてみましょう。


水を保持できる理由は「網目構造」


高吸水性高分子(架橋したポリアクリル酸ナトリウム)は、大量の水を吸収し、保持できます。


その理由は、高吸水性高分子の網目構造にあります。


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高吸水性高分子(架橋したポリアクリル酸ナトリウム)の変化 / Credit:Canva,ナゾロジー編集

これらは乾燥時、高分子の長い鎖が絡まった状態になっています。


しかし水が入ると、網目構造に広がり、その網目の中に水が閉じ込められます。


乾燥状態では、高吸水性高分子はしぼんだ風船のようにコンパクトな状態にありますが、風船に空気を注入するかのように、中身(水)が入ることで立体的になり、急激に大きくなるのです。


一旦吸収された水は、網目の中に保持されるため、力を加えても外に逃げ出しません。


(浸透圧を利用して外部の水溶液のイオン濃度を高くすると、水は外に逃げていきます。例えば、高吸水性高分子を食塩水に入れたり、食塩をかけたりすると、脱水することが可能です)


そして大切なのは、このような現象を生み出すために、ポリマー同士を連結し、性質を変化させる「架橋処理」が必要になるという点です。


そのため、単なる「ポリアクリル酸ナトリウム」では、水を注いでも膨らまず、ゲルやローションのようになるだけです。


一方、架橋したポリアクリル酸ナトリウムは、「高吸水性ポリマー」とも呼ばれ、GIF画像のように膨張するのです。


ここまでで、架橋したポリアクリル酸ナトリウム(高吸水性高分子)がどうして水を吸収して膨らむのか理解できました。


では、この特殊な粉末は、どのような場面で利用されているのでしょうか。


ポリアクリル酸ナトリウムは日常生活で役立っている!安全性は?


ポリアクリル酸ナトリウムは、日常生活の様々な場面で活躍しています。


例えば紙おむつに使用されています。


紙おむつではおしっこを吸水して逃さない必要がありますが、ポリアクリル酸ナトリウムの働きによってそれを可能にしているのです。


昔は分厚い紙おむつに頼っていましたが、ポリアクリル酸ナトリウムの吸水力のおかげで、紙おむつは劇的に薄くなりました。


私たちの多くは、赤ちゃんの頃からポリアクリル酸ナトリウムに助けてもらっていたのです。


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ポリアクリル酸ナトリウムは、紙おむつや水で膨らむビーズ、芳香剤などに利用されている / Credit:Canva

またビーズタイプの芳香剤にもポリアクリル酸ナトリウムが利用されています。


それらビーズには消臭剤が混合された水分があらかじめ吸収させられており、徐々に空気中に放出することで、芳香剤としての効果を発揮しています。


使用し続けた芳香剤のビーズが小さくなるのは、内部の水分が外へ逃げたからであり、交換時期がひと目で分かります。


また100円ショップなどで見かけるおもちゃ「水で大きくなるカラフルなビーズ」も、ポリアクリル酸ナトリウムです。


そして驚くかもしれませんが、少量のポリアクリル酸ナトリウムは、食品添加物としても使用されています。


主に増粘剤や乾燥材としての役割が期待されており、加工食品や冷凍食品などに幅広く使用されています。


食品に使用されていることから分かる通り、ポリアクリル酸ナトリウムは、毒性が低く安全性が高い成分です。


少量であれば食べても問題ありません。


しかし、食用でない「ビーズタイプのポリアクリル酸ナトリウム」を、子供や赤ちゃんが誤飲するアクシデントが生じることがあります。


その場合、ビーズが体内で水を吸収して大きくなるため、過去には誤飲が原因で手術が必要になったケースもあります。


ポリアクリル酸ナトリウムは非常に便利で、身の回りにたくさん存在していますが、なんでも口に入れてしまう子供たちの手が届かない場所に保管しておくべきでしょう。






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参考文献

Super-Absorbing Polymer Powder
https://www.cmu.edu/gelfand/lgc-educational-media/polymers/polymer-and-absorption/super-absorb-powder.html

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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