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RPGは人に自信をつけさせる効果がある


人気ゲームジャンルの1つ「RPG(ロールプレイングゲーム)」で、勇気をもらったという人は少なくないでしょう。

ある人は、ゲーム内の主人公の勇気ある行動に触発され、現実世界でも人助けをしたり、仕事の難局を乗り越えることができたりしたかもしれません。

新しい研究は、そんな「RPGが人に自信をつけさせる」という考えを支持するものとなりました。

イギリスのプリマス大学(University of Plymouth)心理学部に所属するグレイ・アサートン氏ら研究チームは、自閉症の人々がテーブルトークRPG(TPRG)として有名な『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をプレイすることで、ゲーム外でもキャラクターの特徴の一部を取り入れて自信をつけることができたと報告しています。

研究の詳細は、2024年8月21日付の学術誌『Autism』に掲載されました。

目次

  • RPGに勇気をもらう人々
  • 自閉症の人々はTRPGのプレイにより現実世界で前向きになる

RPGに勇気をもらう人々

RPGをプレイすると、現実でも主人公のように行動したくなる
RPGをプレイすると、現実でも主人公のように行動したくなる / Credit:Canva

RPGの主人公になりきったり、その行動に感化を受けたりすることがあるものです。

例えば、「ある少年が、RPGの主人公の勇気ある行動に触発され、いじめられている友達を助けるために立ち上がる」なんてことがあるかもしれません。

また、普段は人見知りで、人と話すことを苦手に感じていても、RPGでよくある「酒場で情報収集する主人公」になりきるなら、バーや居酒屋でも気軽に声かけたり会話を楽しんだりできるかもしれません。

プレイヤーは何十時間も、時には何百時間も1つのゲームとその物語に没頭します。

そのため、ゲーム内での体験が、自分の考え方や行動に影響を及ぼすということも当然ありえるのです。

今回、アサートン氏ら研究チームは、自閉症の人々に焦点を当て、RPGの影響を調べることにしました。

コミュニケーションを苦手に感じる自閉症の人々
コミュニケーションを苦手に感じる自閉症の人々 / Credit:Canva

自閉症」とは、生まれつき対人関係がうまくできず、コミュニケーションが取れなかったり、言語の発達が遅かったりする障害です。

(現在では、自閉症だけでなく、アスペルガー障害、広汎性発達障害などを含む疾患概念として、「自閉スペクトラム症(ASD)」という表現も用いられます)

世界中で100人に1人の子供が自閉症と診断されますが、大人になった患者たちは自閉症の特徴を隠そうとし、自分に大きな負荷をかけながら生活することが多いようです。

彼らは、社会的な交流を求める気持ちと、その難しさや不安に挟まれ、苦しんでいるのです。

では、そんな状況をRPGが少しでも変化させることはできるのでしょうか。

研究チームは、8人の自閉症の人々(成人)を参加者として募集し、6週間のテーブルトークRPG(TPRG)に参加してもらいました。

そして参加者へのインタビューを通して、RPGが及ぼす影響について調べました。

自閉症の人々はTRPGのプレイにより現実世界で前向きになる

「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をプレイする人々
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をプレイする人々 / Credit:Wikipedia Commons_ダンジョンズ&ドラゴンズ

TRPGとは、テーブルゲームのジャンルの1つであり、紙や鉛筆、サイコロなどの道具を用いて、人間同士の会話とルールブックに記載されたルールに従って遊ぶゲームです。

プレイヤーは、ゲーム内のキャラクターを演じながら物語を楽しむことができます。

例えば、普段は温厚で慎重な性格な人でも、ゲーム内では「勇敢で向こう見ずな戦士」を演じることがあるわけです。

ちなみに現在、「RPG」と言えば、一般的に『ドラゴンクエストシリーズ』などのコンピュータを用いたゲームのことを指しますが、これらはTRPGをコンピュータで再現したものであり、ゲームの根幹は同じだと言えます。

そして今回の実験に使用されたのは、世界初のTRPGであり、現在でも広くプレイされている『ダンジョンズ&ドラゴンズ』です。

では、自閉症の人々がこれらTRPGでキャラクターになりきってゲームをした結果、どのような変化が生じたのでしょうか。

TRPGをプレイした人々は、キャラクターの特徴を現実世界に持ち出し、自信を得た
TRPGをプレイした人々は、キャラクターの特徴を現実世界に持ち出し、自信を得た / Credit:Canva

研究チームの報告によると、参加者たちは、「TRPGをプレイすることで友好的な環境が得られ、参加している他の人たちへの親しみを感じることができた」と語ったそうです。

また彼らは、「ゲームのキャラクターから得た特徴のいくつかを、ゲーム外にも持ち出すことができ、そこで自分自身に関してこれまでとは違った感覚を持つことができた」とも語っています。た

例えば参加者たちは、勇敢なキャラクターでプレイすることで、現実でもいくらか勇敢になれたと感じたわけです。

アサートン氏も、「参加者の多くは、このゲームの一部を日常生活にも応用しようとしている」と語りました。

RPGには確かに、人に自信をつけさせる効果があるのです。

今回の研究は自閉症の人々を対象に行われましたが、「コミュニケーションが苦手だ」「社会に馴染めるか不安だ」「自分が他の人にどう受け止められているのか怖い」「日常生活が辛い」と感じるのは、彼らだけではありません。

診断の有無に関わらず、私たちの多くは現実世界における生きづらさを噛みしめています。

だからこそ私たちも、RPGをプレイすることで少しでも自分を変革し、自信をつけることができるかもしれません。

主人公の考えや行動に感銘を受け、自分もそうあろうとすることで、現実世界が少しでも明るくなることに期待したいものです。

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参考文献

Dungeons and Dragons can help autistic people gain confidence and find their inner hero
https://www.plymouth.ac.uk/news/dungeons-and-dragons-can-help-autistic-people-gain-confidence-and-find-their-inner-hero

元論文

A critical hit: Dungeons and Dragons as a buff for autistic people
https://doi.org/10.1177/13623613241275260

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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