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ブラックホールの解像度を50%向上!史上最高解像度の観測技術を達成


宇宙の観測技術が飛躍的な進化を遂げました。

アメリカ航空宇宙局のジェット推進研究所(NASA-JPL)らはこのほど、地球上からブラックホールを撮影する「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」という観測技術において、史上最高の解像度を達成したと発表。

これは高周波の宇宙からの電波を検出する技術が達成されたということであり、特定の天体の撮影はまだされていません。

しかし、この技術を用いることで、これまでに撮影されたブラックホールの解像度を最大50%も向上させられるとのことです。

研究の詳細は2024年8月27日付で科学雑誌『The Astronomical Journal』に掲載されています。

目次

  • 地球を巨大な望遠鏡にする「EHTプロジェクト」
  • ブラックホール観測のシミュレーション画像を公開!

地球を巨大な望遠鏡にする「EHTプロジェクト」

イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope:EHT)は、地球上の各地に配置された電波望遠鏡を組み合わせて、仮想的な地球サイズの望遠鏡として使う観測技術のことです。

複数の電波望遠鏡を一つに集約させることで非常に高い感度と解像度を実現し、遠く離れた天体を観測することができます。

地球上に配置されている電波望遠鏡を組み合わせる
地球上に配置されている電波望遠鏡を組み合わせる / Credit: ja.wikipedia

特に主な観測対象としているのは、天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール「いて座A*(いてざエー・スター)」や、地球から約5500万光年離れた楕円銀河「M87」の中心にある超大質量ブラックホールです。

実際に2019年には、EHTプロジェクトによりM87の中心にあるブラックホールの撮影に史上初めて成功し、大きな話題を集めました。

それがこちらの画像。

M87の中心部にある巨大ブラックホールを直接撮像した画像
M87の中心部にある巨大ブラックホールを直接撮像した画像 / Credit: ja.wikipedia

ただこのときの画像は波長1.3ミリの周波数230GHz(ギガヘルツ)で観測されたもので、まだまだ解像度が低く、実際の姿よりもぼんやりと写されていました。

例えるなら、視力が低いので、対象物がぼや〜と広がって見えているようなものです。

研究者によると、EHTの解像度をさらにアップさせるには2つの方法しかないといいます。

1つは「望遠鏡のサイズ自体を大きくすること」です。

しかしEHTはすでに地球サイズに達しており、人間の力で地球を大きくすることは無理なので、この案は現実的でありません。

そこでもう1つの「周波数を高くすること」が最良の選択肢となります。

研究主任の一人で、NASA-JPLの天体物理学者アレクサンダー・レイモンド(Alexander Raymond)氏は「波長0.87ミリの周波数345GHzで観測すれば、画像はより鮮明なものとなり、これまでの観測では見られなかったブラックホールの構造が明らかにできるでしょう」と話します。

チームはEHTでこのレベルの観測が可能かどうかをテストしました。

ブラックホール観測のシミュレーション画像を公開!

しかし周波数345GHzの電波を捉えるには、技術的に困難な側面もありました。

というのも345GHzの電波は大気中の水蒸気による吸収が以前までの230GHzの電波よりも強く、地上からの観測を困難にするからです。

そこでチームはEHT装置の帯域幅を増加させ(簡単に言えば、通信速度を速めること)、さらに地上の全観測地点での好天を待つことで、この難点を解決しました。

その結果、345GHzの周波数で遠方銀河の中心からの電波信号を検出することに成功し、地上から観測されたものとしては過去最高の解像度を達成できたとのことです。

今回は何らかの対象を観測したわけではないので、具体的な画像はありません。

しかし研究者らは、もし345GHzの周波数でブラックホールを撮影した場合のシミュレーション画像を作成しています。

こちらの左が従来の230GHzで撮影されたブラックホールで、右が345GHzで撮影したブラックホールです。

ぼやけの範囲が少なくなり、鮮明度が高くなっていることがわかります。

230GHzと345GHzでブラックホールを撮影した際のシミュレーション画像
230GHzと345GHzでブラックホールを撮影した際のシミュレーション画像 / Credit: Event Horizon ‘Scope(X, 2024)

チームによると、この解像度は月面上にあるペットボトルのキャップを地上から鮮明に観測できるほどの精度であり、ブラックホールでいうと、これまでの画像より最大50%も解像度を高められるといいます。

また同チームのシェパード・ドールマン(Sheperd Doeleman)氏は今回の観測技術の進歩について「白黒写真からカラー写真に変わったようなものだ」と評しました。

この飛躍的な進歩により、ブラックホールについて今までに予想されていたけれど目に見えていなかった構造、それから予想されていなかった構造までもが見つかるようになるかもしれないと述べています。

こちらは3種類の周波数ごとに撮影したブラックホールを組み合わせたシミュレーション画像です。

赤:86GHz、緑:230GHz、青:345GHz
赤:86GHz、緑:230GHz、青:345GHz / Credit: Event Horizon ‘Scope(X, 2024)

チームは今後もさらなる改良を重ねて、EHTの観測技術を高めていきたいと話しています。

またブラックホールをより詳細に観測した暁には、そのデータを元にしてブラックホール周辺の動きを忠実に再現した動画の作成も目指しているとのことです。

EHTの進化により、宇宙に対する人類の視野が大きく開けてくるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Event Horizon Telescope Makes Highest-Resolution Black Hole Detections from Earth
https://www.cfa.harvard.edu/news/event-horizon-telescope-makes-highest-resolution-black-hole-detections-earth

Observations From Earth’s Surface
https://www.sciencealert.com/black-hole-telescope-makes-record-observations-from-earths-surface

元論文

First Very Long Baseline Interferometry Detections at 870 μm
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ad5bdb

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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