すぐに人を好きになる恋愛体質の方っていますよね。
そうした方々は「エモフィリア(emophilia)」という心理特性の持ち主かもしれません。
ノルウェー・ベルゲン大学(UB)はこのほど、2600名以上の参加者を対象に「エモフィリア」の度合いを測定する調査を実施。
その結果、エモフィリア度のスコアが高い人ほど、生涯に経験する恋愛関係が多く、不倫の頻度が高くなる傾向が確認されました。
エモフィリアとは一体どのような特性を指すのでしょうか?
研究の詳細は2024年4月26日付で心理学雑誌『Frontiers in Psychology』に掲載されています。
目次
- すぐに恋に落ちる「エモフィリア」とは?
- エモフィリア特性が強いと、不倫に走りやすい
すぐに恋に落ちる「エモフィリア」とは?
恋のしやすさは人によって様々です。
何度も簡単に恋に落ちる人もいれば、人を好きになるまでに時間がかかり、恋愛経験がほとんどない方もいます。
どちらが良い悪いというものでもありませんが、一部の心理学者たちはこの「恋に落ちる基準の個人差」に興味を持っていました。
中でも特に、すぐに人を好きになり、頻繁に恋に落ちる恋愛体質の人々に注目し、この心理特性を「エモフィリア(emophilia)」と命名しています。
エモフィリアとは、恋愛感情に対して非常に敏感であり、頻繁かつ容易に恋に落ちる心理特性を指し示す用語です。
エモフィリアを持つ人は恋愛への感受性が高いために、恋の炎が短期間で激しく燃え上がることもあれば、すぐに鎮火してまた別の人を好きになる傾向があるとされています。
その一方で、エモフィリアは近年になって提唱され始めた心理学用語であり、研究報告もほとんどありません。
エモフィリア特性が恋愛経験の頻度や不貞行為、および他の性格特性とどのように関連しているのか、まだ十分に明らかにできていないのです。
特に数少ない研究の大部分は北米の人々を対象としたものであり、他の文化圏での調査はほぼありませんでした。
そこでベルゲン大学の研究チームは、ノルウェーとスウェーデンの北欧圏の人々を対象に新たな調査を行いました。
エモフィリア特性が強いと、不倫に走りやすい
研究チームは今回、「エモフィリア特性の高さがその人の恋愛経験の数や浮気の頻度を予測できる」と仮説を立て、調査を開始。
ノルウェーとスウェーデンから集めた2607名の被験者(女性75%・男性25%・平均年齢44歳)を対象にオンライン調査を行いました。
まず最初に、2011年に開発された「エモーショナル・プロミスキュティ・スケール(EPS)」という測定ツールを使って、被験者のエモフィリア度合いを評価しています。
具体的には、各個人が恋に落ちる容易さと頻度を測定するものです。
その後、エモフィリアと関連する性格特性があるかどうかを明らかにするために、被験者の「ビッグファイブ」と「ダークトライアド」も評価しました。
ビッグファイブは、人の性格を5つの主要な特性で評価するもので、
・外向性:社交的でエネルギッシュな傾向
・神経症傾向:感情的に不安定でネガティブな傾向
・開放性:新しい経験やアイデアに対する好奇心が高い傾向
・協調性:他人に対して思いやりがあり、共感性や協力性が高い傾向
・誠実性:責任感があり、計画的に行動する傾向
の5つに分けられます。
一方のダークトライアドは3つの暗い性格特性を示すもので、
・自己愛が強いナルシシズム
・他人を操ることに快楽を覚えるマキャヴェリズム
・反社会的な行動を繰り返すサイコパシー
に分けられます。
そしてデータ分析の結果、EPS測定ツールは北欧圏の集団に対しても、エモフィリア特性を評価する上でちゃんと機能することが確かめられました。
具体的には、エモフィリア特性のスコアが高かった人ほど、これまでに経験してきた恋愛関係の数が多く、さらに不倫をしている数も多かったのです。
これは男女ともに見られた傾向で、恋愛感情への感受性が他の人に比べて非常に高いことが要因と考えられます。
その一方で、エモフィリア特性の高い人は神経症的傾向やナルシシズムの傾向をわずかに示したものの、その関連性は大して強いものではありませんでした。
よって、エモフィリアであるからといって、ビッグファイブのどれかの特性が強かったり、あるいはダークトライアドを必ず持っているわけではないようです。
しかしエモフィリアのように恋愛感情の起伏が激しいと、色恋沙汰が発生しやすく、本人にとっても周囲の人にとっても良からぬ事態を生む可能性があります。
恋に落ちやすいこと自体は悪いことではないでしょうが、それがきっかけで不倫魔になってしまうなら、警戒すべき心理特性として認識する必要があるかもしれません。
参考文献
Emophilia is a distinct psychological trait and linked to infidelity
https://www.psypost.org/emophilia-is-a-distinct-psychological-trait-and-linked-to-infidelity/#google_vignette
元論文
Emophilia: psychometric properties of the emotional promiscuity scale and its association with personality traits, unfaithfulness, and romantic relationships in a Scandinavian sample
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1265247
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部