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体長が3mもあった史上最大の類人猿「ギガントピテクス」が絶滅した理由がついに判明!


絶滅種のギガントピテクスは身長約3メートルに達する”史上最大の霊長類”です。

映画でお馴染みのキングコングは、このギガントピテクスから進化した超大型類人猿という設定になっています。

その一方で、ギガントピテクスがどうして絶滅したのかは考古学上の謎でした。

そんな中、中国科学院(CAS)や豪マッコーリー大学(Macquarie University)を中心とする国際研究チームは、ギガントピテクスが環境の変化に適応できず、深刻な食糧難に陥っていたことを発見しました。

どうやら彼らは自然が与えた試練に耐えられなかったようです。

研究の詳細は2024年1月10日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。

目次

  • なぜ強大なギガントピテクスは絶滅したのか?
  • 絶滅年代を特定!衰退の理由は「環境変化」にあった

なぜ強大なギガントピテクスは絶滅したのか?

左端がギガントピテクス。現生する霊長類との比較
左端がギガントピテクス。現生する霊長類との比較 / Credit: NPG Press –The Rise and Fall of a Vulnerable Giant(2023)

ギガントピテクス(学名:Gigantopithecus blacki)は約200万年前に出現し、20〜30万年前まで中国に生息していた大型類人猿です。

見つかっている化石の種類は少ないものの、これまでに4つの顎骨と数千本の歯が回収されており、大臼歯(奥歯)などは25.4ミリ四方もありました。

下顎骨の長さはホモ・サピエンス(現生人類)の2倍以上に達し、こうした規格外の数値から身長約3メートル、体重300〜500キロに達したと推定されています。

間違いなく、地上に存在した史上最大のヒト科動物です。

また歯の調査から主に果実を餌とする植物食であったことが分かっており、生態は現在のオランウータンに近かったと見られています。

ギガントピテクスの奥歯
ギガントピテクスの奥歯 / Credit: ja.wikipedia

しかしながらギガントピテクスが最終的にいつ、どんな理由で絶滅に至ったのかは解明されていません。

いくつかの先行研究から、ギガントピテクスの化石分布を見ると、彼らの生息域が絶滅時期に近づくにつれて著しく縮小していたことは示されていました。

しかしこの衰退の正確な時期や理由までは明らかになっていません。

ホモ・サピエンスを含む他の霊長類が繁栄に向かう中で、どうして最も強大なギガントピテクスは絶滅してしまったのでしょうか?

この謎を解き明かすべく、研究チームは調査を開始しました。

絶滅年代を特定!衰退の理由は「環境変化」にあった

チームは中国南部にある22カ所の洞窟から新たにギガントピテクスの歯を含む化石試料および堆積物サンプルを採集し、分析しました。

さらにこの絶滅物語を明らかにするため、ギガントピテクスが出現した約200万年前の生息環境と、絶滅時期に当たる更新世中期(約20〜30万年前)の生息環境を堆積物サンプルから再構築。

その時代ごとのギガントピテクスの生息環境や歯の変化を調べました。

化石の採集地
化石の採集地 / Credit: Yingqi Zhang et al., Nature(2023)

まず花粉分析の結果、約230万年前の中国南部は「鬱蒼とした森林」「豊富な水や果実」など、ギガントピテクスにとって最適な環境だったことが分かりました。

このような樹冠の閉鎖した森林環境においては食餌の季節変化が小さく、利用可能な水の量も安定していたと研究者は指摘します。

ところが絶滅時期の中国南部は「木がまばらにしか生えていない疎林」が大部分を占めており、より開けた景観から乾燥しやすい状態になっていたのです。

そのせいで水資源や果実の量も大幅に減っていたことが予想されます。

この環境変化の影響はギガントピテクスの歯に明瞭に表れていました。

200万年前は食餌の多様性や水の摂取量が多かったのに対し、絶滅時期になると栄養不足による慢性的なストレスの兆候が見られたのです。

チームはこれらのデータと年代測定の結果を合わせて、ギガントピテクスの絶滅時期は29万5000年〜21万5000年前の間であると結論しました。

180万〜20万年前における森林景観とギガントピテクスの個体数の変化を再現したもの
180万〜20万年前における森林景観とギガントピテクスの個体数の変化を再現したもの / Credit: Yingqi Zhang et al., Nature(2023)

その一方で、同時期に同じ地域に生息していたオランウータン(学名:Pongo weidenreichi)は、この環境変化にも関わらず、歯の状態も良好で、生息範囲も広く、見つかった歯の本数から個体数も高い水準で保たれていたことが分かりました。

これは彼らが環境変化にうまく適応できたのに対し、ギガントピテクスの方は食餌の好みや行動を変えられなかったことを示唆します。

おそらく、絶滅時期のギガントピテクスの生活はひどく辛いものだったでしょう。

居心地のいい森林も豊富な水も、そして主食としていた果実もなくなり、その変化に対してなすすべもないまま、栄養不足に陥ったと思われます。

もしかしたら、あまりにガタイが大きすぎるせいで、柔軟な行動の変化や移住ができなかったのかもしれません。

その一方でギガントピテクスの存在は、条件さえ整っていれば霊長類もここまで大型化できることを雄弁に物語っています。

もし豊かな自然が失わらずに彼らがその後も進化を続けていれば、本当にキングコングのような超大型類人猿が誕生していたかもしれませんね。

全ての画像を見る

参考文献

What Wiped Out The Largest Ape Ever to Roam Earth? We May Finally Have an Answer
https://www.sciencealert.com/what-wiped-out-the-largest-ape-ever-to-roam-earth-we-may-finally-have-an-answer

The extinction of the giant ape;a long-standing mystery solved
https://www.scimex.org/newsfeed/the-extinction-of-the-giant-ape-a-long-standing-mystery-solved

元論文

The demise of the giant ape Gigantopithecus blacki
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06900-0

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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