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統計学者や数学が得意な人ほど「円グラフの使用は避ける」その理由とは?


世の中には様々なデータや統計があふれており、それらを視覚的に示す「グラフ」を見かけることも増えました。

仕事や学校でグラフを作成する人も少なくないでしょう。

そして、よく見かけるグラフの1つに「円グラフ」があります。

しかし、円グラフに対して否定的な意見を持っている人は少なくないようです。

オーストラリアのクイーンズランド工科大学(QUT)統計学部に所属するエイドリアン・バーネット氏は、「数学が苦手な人は数字を避けるが、数学が得意な人の多くは円グラフを避ける」と述べています。

世間で円グラフが多用されているにも関わらず、統計学者や専門家、数学が得意な人のほとんどは円グラフを使わないというのです。

それはどうしてなのでしょうか?

バーネット氏の主張から円グラフのメリットとデメリットを考えてみましょう。

目次

  • 円グラフは割合の違いを見分けるのが実は難しい
  • 円グラフは色覚異常の人にやさしくない
  • 「3次元円グラフ」は最悪のデータ提示方法
  • 円グラフが輝くのは「2つのカテゴリを比較する場合」

円グラフは割合の違いを見分けるのが実は難しい

円グラフのイメージ
円グラフのイメージ / Credit:Canva

円グラフとは、円全体を100%とし丸い図形を扇形に分割して、そこに当てはまる構成比率を表したグラフです。

この円グラフは、マスメディアにおいて「最も一般的な統計図表」と言えるほど、頻繁に使用されています。

しかし、多くの統計学者は円グラフを使用しないよう推奨しており、バーネット氏も同様です。

彼によると、円グラフにはいくつかの欠点があります。

まず円グラフには、「カテゴリが3つ以上になると正確に判断しにくい」というデメリットがあるようです。

例えば、以下のグラフはそのことを示す良い例です。

3種類のデータ群を円グラフと棒グラフで表現
3種類のデータ群を円グラフと棒グラフで表現 / Credit:Wikipedia Commons_円グラフ

棒グラフと比較するとよくわかりますが、円グラフではそれぞれのカテゴリの微妙な違いを見分けることが難しく、上記のようなデータでは、「どのカテゴリの割合も似ている」程度の情報しか得られないのです。

これには、「人間の目は、角度や面積を測るのが得意ではない」という要素が関係していると考えらます。

一方、同じデータでもシンプルな棒グラフを用いるなら、瞬時にカテゴリごとの違いを見分けることができるでしょう。

円グラフは色覚異常の人にやさしくない

データのカテゴリ数が大きく増えると、円グラフのデメリットはさらに強調されます。

下の円グラフには数十のカテゴリが含まれていますが、非常に見づらく、得られる情報もほとんどありません。

数十のカテゴリを含む円グラフ
数十のカテゴリを含む円グラフ / Credit:Milka Trajkova(University of Indianapolis)et al, Exploring Casual COVID-19 Data Visualizations on Twitter: Topics and Challenges(2020)

しかも円グラフは、それぞれの領域を「異なる色で分ける」場合がほとんどのため、カテゴリが多ければ多いほど、人々の目を惑わすようになります。

そしてこのデメリットは、人と色の見え方が異なり、色の判別が難しい「色覚異常」を抱える人にとっては一層問題となります。

下のグラフは、「色覚異常の人に上記のグラフがどのように見えているか」を示したものです。

上記のグラフを、一般的な色覚異常を持つ人にどのように見えるかを示したもの
上記のグラフを、一般的な色覚異常を持つ人にどのように見えるかを示したもの / Credit:Milka Trajkova(University of Indianapolis)et al, Exploring Casual COVID-19 Data Visualizations on Twitter: Topics and Challenges(2020)_Here’s why you should (almost) never use a pie chart for your data (The Conversation, 2024)

似たような色が多く、さらに理解しにくいですね。

このような細かく区切られた円グラフに出会うことは稀でしょうが、これならカテゴリ名とそのパーセンテージを文字で羅列しただけの方が、まだ分かりやすいでしょう。

現在、世界の4.6%の人が色覚異常を抱えていると言われており、それら多くの人にとって、「色に頼る円グラフ」は優しくないのです。

ちなみに、ただでさえデメリットの多い円グラフの中には、「最も使ってはいけない円グラフ」が存在するようです。

「3次元円グラフ」は最悪のデータ提示方法

バーネット氏が「円グラフのデメリットをさらに悪化させるもの」として挙げているのが、「3次元円グラフ」です。

標準の円グラフは2次元ですが、「オシャレなデザイン」として、プレゼンなどでは3次元円グラフを作る人もよく見かけます。

しかし3次元円グラフには、「正確な割合を表現できない」という大きな問題があります。

2次元円グラフと2つの3次元円グラフ。どのグラフでもカテゴリの割合は同じ
2次元円グラフと2つの3次元円グラフ。どのグラフでもカテゴリの割合は同じ / Credit:Victor Oguoma_Here’s why you should (almost) never use a pie chart for your data (The Conversation,  2024)

例えば、上記の円グラフのカテゴリの割合はすべて同じ(3分の1)です。

そのことを正確に感じ取れるのは左端の2次元円グラフだけであり、3次元にすると、割合に違いがあるような印象を与えてしいます。

そのため3次元円グラフで視覚的に比率を提示するプレゼンターに出会った場合は注意しなければいけません。

もしかしたら、「作者が誤った印象を持たせようとしている」かもしれないからです。

単に「作成者が3次元円グラフのデメリットを考えられていない」ケースもあるかもしれませんが、複数の比率をこの方法で提示するプレゼンターは統計学や数学に疎い人である可能性が高いでしょう。

3次元円グラフは、誤った印象を与える
3次元円グラフは、誤った印象を与える / Credit:Canva

ここまで、統計学者であるバーネット氏が述べる円グラフのデメリットをお伝えしました。

とはいえ、円グラフにもそれなりのメリットがあるはずです。

どんなケースであれば円グラフを用いても良いのでしょうか。

円グラフが輝くのは「2つのカテゴリを比較する場合」

バーネット氏によると、円グラフはカテゴリが少数で、パーセンテージがはっきりと異なる場合に役立つようです。

またカテゴリが2つだけなら、その違いが小さくても、円グラフのメリットが生かされます。

例えば下の円グラフは、オーストラリアの2大政党(保守連合と労働党)の支持率を示しています。

支持率は労働党(Labor)が55%であり、保守連合(Coalition)が45%でした。

オーストラリアの2つの主要政党の支持率を示す単純な円グラフ
オーストラリアの2つの主要政党の支持率を示す単純な円グラフ / Credit:Victor Oguoma_Here’s why you should (almost) never use a pie chart for your data (The Conversation, 2024)

円グラフを見ると2つのカテゴリはそれぞれ半円に近く、この戦いが接戦であったことを瞬時に理解できます。

またカテゴリが2つしかないため、比較的僅差でも違いが分かりやすく、労働党が勝利したという点も瞬時に把握できるでしょう。

否定的な意見が多い円グラフにも、確かにメリットは存在するのです。

とはいえ、円グラフが輝くケースはかなり限定的です。

それぞれのグラフのメリットとデメリットを知ってから選択すべき
それぞれのグラフのメリットとデメリットを知ってから選択すべき / Credit:Canva

そのためバーネット氏は、「全体的に、円グラフの使用は控えめにするのがベストです」と結論付けています。

多くのデータを扱ったり、僅かな違いを明確に示したりする必要がある専門家たちにとっては、特にそう言えるのかもしれません。

いずれにせよ、データを視覚的に示すグラフには様々な種類があり、それらのメリットとデメリットをはっきりと知ってから、ケースバイケースで使い分けるのが最善でしょう。

全ての画像を見る

参考文献

Here’s why you should (almost) never use a pie chart for your data
https://theconversation.com/heres-why-you-should-almost-never-use-a-pie-chart-for-your-data-214576

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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