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ホースを触手のように伸ばして消火活動するロボット「ドラゴンファイヤーファイター」


大量の水をまき散らしながら、蛇やミミズのようにのたうち回るホースを見たことがあるでしょう。


これを自在に制御すれば、まるで龍のように空を飛び、口から火ではなく水を吐かせることができるようです。


秋田県立大学の山内 悠氏や東北大学の田所 諭氏らからなる研究チームは、空を飛んで消火活動するロボット「ドラゴンファイヤーファイター」を公開しました。


このロボットが実用化されれば、消防士を危険にさらすことなく消火活動を行えるかもしれません。


研究の詳細は、2023年12月22日付の科学誌『Frontiers in Robotics and AI』に掲載されています。




目次



  • 消防士の代わりに火元に近づく消火ロボット
  • 空を飛んで消火する「ドラゴンファイヤーファイター」

消防士の代わりに火元に近づく消火ロボット


炎に近づく消防士たち
炎に近づく消防士たち / Credit:Canva

火事が生じるとすぐに駆け付ける消防士たちは、燃え盛る炎に近づき、消火活動を行ってくれます。


しかも消火中は、強い力で消火ホースをしっかりと固定していなければいけません。


ホースが一度手放されてしまうと、周囲に水をまき散らしながら制御不能になるからです。



上の動画では笑い声も含まれており、コミカルな場面として扱われていますが、時には暴れまわるノズルが頭部に当たって大怪我をすることもあるようです。


そのため消防士たちは消火ホースを手放せず、結果として、命を危険にさらしながら消火対象に近づかざるを得ません。


ビルの高い階層で火災が発生した場合などでは、効率的に消火していくことも難しいでしょう。


消防士の代わりに火元に飛行して近づく「ドラゴンファイヤーファイター」
消防士の代わりに火元に飛行して近づく「ドラゴンファイヤーファイター」 / Credit:山内 悠(秋田県立大学)ら, Frontiers in Robotics and AI(2023)

こうした課題に対処するために考案されたのが、まるで龍のように空を飛ぶ消火ホースロボット「ドラゴンファイヤーファイター」です。


このロボットの開発は2016年から始まっており、研究者たちは日本の消防士と連携をとってニーズを理解しながら改良を続けてきました。


空を飛んで消火する「ドラゴンファイヤーファイター」


ユニットそれぞれに4つのノズルがあり、空中に浮かびながら水を噴射する
ユニットそれぞれに4つのノズルがあり、空中に浮かびながら水を噴射する / Credit:山内 悠(秋田県立大学)ら, Frontiers in Robotics and AI(2023)

ドラゴンファイヤーファイターは、胴体と頭のユニットをホースで繋いだ構造になっており、各ユニットには4つの水噴射ノズルがあります。


ロボットは、ノズルから下方向に水を噴射することで飛ぶことができ、ノズルの微妙な調整により、暴れまわることなく空中でもバランスを保てます。


消防車と繋げたロボットのノズルは、最大1メガパスカルの圧力と毎秒6.6リットルの速さで水を噴射することが可能であり、消火ポイントまで飛んでいって迅速に火を消すことができます。


デモンストレーションの様子。4倍速
デモンストレーションの様子。4倍速 / Credit:山内 悠(秋田県立大学)ら, Frontiers in Robotics and AI(2023)

またロボットの頭部カメラには、通常の視覚と熱視覚の両方が備わっており、オペレーターがロボット視点で周囲を確認したり、火元を探したりするのに役立ちます。


以下はデモンストレーション中のロボット視点の映像です。



水しぶきで視界は悪いものの、的確に火元を見つけて消火することができていますね。


研究チームはこれまでの開発期間で、ロボットに備わっているホースや電気ケーブルの耐火性、機体の防水性、噴射する水流の調整など、様々な点を改良してきました。


とはいえ、さらなる開発を行う必要があり、彼らによると「実際の消防活動で使用するには、あと10年かかる」ようです。


主な課題点は、「ロボットの長さ」です。


現在のドラゴンファイヤーファイターの長さは4mなので、確かに、実践で使うには短すぎるように思えますね。


ドラゴンファイヤーファイターの長さは4m。延長が目標
ドラゴンファイヤーファイターの長さは4m。延長が目標 / Credit:山内 悠(秋田県立大学)ら, Frontiers in Robotics and AI(2023)

チームは将来的に、ドラゴンファイヤーファイターを10m以上の長さにすることを目標にしています。


もしその目標が現実になったなら、私たちはまさに「空を昇る龍」を見ることになるでしょう。


消防士たちを危険にさらすことなく、建物の階上へと昇っていき、体と口から水を噴射して火を消してくれるのです。


ちなみに、ドラゴンファイヤーファイターの設計はオープンサイエンスとして公開されているため、世界中の研究者たちが独自の開発に利用できます。


もしかしたら将来、世界中で、火を消す様々なドラゴンが見られるようになるかもしれません。


全ての画像を見る

参考文献

Flying ‘dragon’ robot could fight fires from a distance
https://www.scimex.org/newsfeed/flying-dragon-robot-can-fight-fires-from-a-distance

“Flying dragon”robot harnesses the “crazy hose”effect to fight fires
https://newatlas.com/drones/flying-dragon-firefighting-robot/

元論文

Development of a remotely controllable 4 m long aerial-hose-type firefighting robot
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/frobt.2023.1273676/full

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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