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目標は「節目」に立てると達成率が高くなる「フレッシュ・スタート効果」


皆さんは新年の目標は立てましたか?

おそらく多くの人が新年という区切り目を利用し、新たな目標を設定しているのではないでしょうか。

運動の習慣化や、資格を取得する、習い事を始めるなど去年達成できなかったことから、新たにはじめることまでさまざまだと思います。

実はこのように区切り目に新たな目標を立てると、達成率が高くなるようです。

この現象は「フレッシュ・スタート効果」と呼ばれ、新年や月のはじめなどの節目に目標を立てると、その後のモチベーションが高まり、目標に向かって行動を起こす可能性が高くなるのです。

フレッシュ・スタート効果がはじめて報告されたのは、2014年に「Management Science」に投稿されたペンシルべニア大学のウォートン・スクールのヘンチェン・ダイ氏(Hengchen Dai)らの研究です。

目次

  • 物事の節目に目標を立てると達成率が高くなる
  • 節目は過去の失敗との決別できる

物事の節目に目標を立てると達成率が高くなる

研究チームは、Googleが提供している検索ボリュームの調査ツールである「Google Insights for Search(現在はGoogle Trendsに改名)」を用いて、「ダイエット」に関する検索数が年や月、週、誕生日、仕事(学校)始まりと前日でどれくらい差があるのかを比較しています。

分析の結果、それぞれの始まりに当たる日は前日(終わりの日)と比較して、「ダイエット」に関する検索が増加する傾向が確認されました。

実験の結果を改変。()の時期との比較を行った。
実験の結果を改変。()の時期との比較を行った。 / Credit: Dai et al, (2014)

この結果は、週や月のはじめなどの節目、特に新年の初めに多くの人がダイエットを始めようと情報を集めようとしていることを意味しています。

しかしこれ結果だけでは情報をただ検索しているだけで、実際に行動に移しているかはわかりません。

そこで研究チームは大学にあるジムで運動をした大学生の数を調べ、ジムに訪れた人数が年や月、週、誕生日、仕事(学校)始まりと前日でどれくらい差があるかを比較しました。

分析の結果、やはり週や月などのはじめの日には前日よりもジムの利用者が多く、多くの人が運動をしに来ていたことが確認されたのです。

実験の結果を改変。()の時期との比較を行った。
実験の結果を改変。()の時期との比較を行った。 / Credit: Dai et al, (2014).

これらの結果は、多くの人が節目に新しい行動を始めようと情報を集めるだけでなく、実際に行動に移している事実を示唆していると言えるでしょう。

ではなぜ「フレッシュ・スタート効果」は生じるのでしょうか。

節目は過去の失敗との決別できる

ヘンチェン・ダイ氏(Hengchen Dai)らは後続の研究で「フレッシュ・スタート効果」のメカニズムについて検討するため実験を行っています。

彼らはオンラインで募集した参加者165名を以下の2つのグループに分け、近いうちに達成したい個人的な目標を立て、行動を促すリマインダーをいつ受け取るのかを決めてもらいました。

統制群:3月18日(火)から24日(月)の間でリマインドメールを受け取る日を決める

実験群:3月18日(火)から24日(月)の間でリマインドメールを受け取る日を決める。リマインドを受ける日にチェックをつける紙に「3月20日(木)は春が始まる日です。」というハイライトがついている

実験の結果、20日が「春が始まる日」であることを知った人は、知らなかった人と比較して、目標を達成するための行動をその日に始めるためにリマインダーを受け取るよう設定する傾向がありました。

実験の結果を改変。
実験の結果を改変。 / Credit: Dai et al, (2015)

どうやら私たちは「特別な日」だと思うとその日に目標を達成するための行動を起こすモチベーションが高くなるようです。

また後続の実験では、オンラインで募集した参加者300名を以下の2つのグループに分け、まだ達成していない目標を思い浮かべた後に、①新しい都市に初めて引っ越した日を想像する人と、②何回も引っ越しを繰り替えし、9回目になる日を想像する人の2つのグループに分けました。

そして過去の自分と比べ、現在の自分が過去の自分(特に過ちや失敗がする自分)と比較して、どれくらい心理的に離れているのかと、引っ越した後にどれほど目標達成のための行動を起こすやる気があるかを回答しています。

実験の結果、9回目の引っ越しをした日を想像した人と比較して、初めて引っ越しをした日を想像した人は、過ちや失敗をした過去の自分とは心理的な距離が遠く感じ、目標に向けて行動を起こすやる気が高いことが確認されました。

実験の結果を改変。
実験の結果を改変。 / Credit: Dai et al, (2015)

これらの結果から、新しい週や四半期の始まり、誕生日をはじめ、引っ越した初日などの節目となりうる日付は過去の失敗や不完全さから精神的に分離させ、モチベーションを高めるのに寄与する可能性が考えられます。

研究チームはこの節目を「時間的なランドマーク」と呼んでおり、「新たな気持ちでスタートを切ることで、過去の失敗と決別し、ポジティブな目標に向かって行動する機会も増える。」と述べています。

「フレッシュ・スタート効果」の興味深い点は、新年や月初めなど明確な区切りではなく、「春の初めの日」などの特別な意味づけをされた場合にも、やや効果は下がりますが目標達成のモチベーションが高まるところです。

つまり新たに何かを始めたい場合には、明日を「自分が決心をした」特別な日を定めて行動に移すもありだということです。

なので元旦でもいいですし、過去の自分と決別できるのにふさわしい日を「時間的なランドマーク」と定め、目標達成に向けた再出発の機会としてみるのも何かを始めるのによい機会になるでしょう。

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参考文献

Fresh Start Effect: How to Motivate Users with New Beginnings
https://www.nngroup.com/articles/fresh-start-effect/

Why Now Is the Time for a Fresh Start
https://www.psychologytoday.com/intl/blog/stretching-theory/202012/why-now-is-the-time-fresh-start

元論文

The Fresh Start Effect: Temporal Landmarks Motivate Aspirational Behavior
https://pubsonline.informs.org/doi/abs/10.1287/mnsc.2014.1901

Put Your Imperfections Behind You: Temporal Landmarks Spur Goal Initiation When They Signal New Beginnings
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0956797615605818

ライター

AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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