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「南極点のルンバ」ペット禁止の南極基地で異常に可愛がられるお掃除ロボ


地球最南端の南極点には、アメリカの科学研究基地「アムンゼン・スコット基地」があります。

そこはおそらく、地球で最も孤立した「寂しい基地」ですが、南極条約によってペットを飼育することはできません

そんな特殊な環境において、基地で働くスタッフたちが愛情を注いでいるのは、お掃除ロボット「ルンバ」なのだそうです。

スタッフたちはまるでルンバを生き物のように扱っており、この基地では、ルンバの「友情」「失踪事件」「身代金の要求」など、ちょっと笑えるエピソードが展開されています。

ここでは、そんな「南極点のルンバ」のストーリーをご紹介します。

きっと、ルンバや南極で働くスタッフたちのことが好きになるはずです。

目次

  • 南極点のルンバ
  • 南極基地ルンバ「アーニー」と「バート」の引き裂かれた友情
  • 南極基地での「ルンバ失踪事件」、そしてスタッフから要求される「身代金」

南極点のルンバ

1956年11月、アメリカは南極の科学研究基地である「アムンゼン・スコット基地」を建設しました。

アムンゼン・スコット基地がある南極点付近
Credit:Teetaweepo(Wikipedia)_Amundsen–Scott South Pole Station

この基地の中には、地球の最南端に当たる南緯90度地点「南極点」が含まれています。

ここでの生活は非常に過酷であり極端です。

半年間は太陽が沈まない「白夜」が続き、もう半年間は太陽が全く登らない「極夜」が続きます。

特に極夜では、気温が-73℃を下回ることもあり、吹雪が頻繁に発生します。

アムンゼン・スコット基地(2009)
Credit:Mradyfist(Wikipedia)_Amundsen–Scott South Pole Station

そして150人の基地スタッフも、2月中旬から10月下旬までは、40人ほどまで減り、世界の他の地域から完全に隔離されるのだとか。

この間、スタッフたちは、食料、燃料、予備部品、その他何1つ届けられることなく生き延びなければいけません。

ちなみに、ここで働くスタッフたちは季節ごとに交代していくのが一般的です。

しかし基地に常駐し、長年働き続ける特殊なスタッフが4名だけ存在します。

その4名(もしくは4台)とは、ロボット掃除機の「ルンバです。

ロボット掃除機「ルンバ」は、南極でも働いている
Credit:Guzugi(Wikipedia)_ルンバ(掃除機)

ルンバはアイロボット社が製造・販売するロボット掃除機であり、「ロボット掃除機と言えばルンバ」と考える人が多いほど有名な存在です。

家の中を自動で掃除してくれる丸いルンバの動きには、どこか愛らしさを感じる人も少なくありません。

そんなルンバは、アムンゼン・スコット基地にも導入されており、日々基地内の掃除を頑張っているのだとか。

そして変化と気晴らしが極めて少ないスタッフたちは、ルンバに対して、私たち以上の「愛情」を傾けているようです。

それもそのはず、南極では「南極条約」によって、ペット、植物、土でさえも持ち込むことが禁止されているのです。

そして、この特殊な環境で、「スタッフとルンバの面白いストーリー」が繰り広げられています。

南極基地ルンバ「アーニー」と「バート」の引き裂かれた友情

アーニーと名付けられたアムンゼン・スコット基地のルンバ
Credit:BRR

南極基地で働くルンバのうち1台は、「アーニー」と名付けられています。

彼には同じフロアを掃除するパートナーのルンバ「バート」がおり、スタッフたちから「ソウルメイト」として扱われていました。

バートとアーニーという名前は、アメリカのテレビ教育番組「セサミストリート」に登場するキャラクターおよびコンビ名です)

しかし2019年、アーニーが別のフロアを掃除するようになると、「彼らはすれ違いになり、階段という障壁によって永遠に引き離された」というジョークがスタッフたちの間に広がりました。

この言葉は、南極点望遠鏡(SPT)チームの1人であるエイミー・ロウィッツ氏のものです。

彼女によると、「毎年、夏に新しいグループがやってくるときに、私はこのジョークを語りました」とのこと。

ちなみにロウィッツ氏によると、現在アーニーとバートは同じフロアで働いており、「彼らの願いは叶った」ようです。

しかし、アーニーの喜びは長続きしませんでした。

2020年1月、アーニーが突如姿を消し、行方不明となったのです。

「自宅を掃除するルンバが、ベッドの下に入ったまま出てこない」など、一時的な行方不明はたまにあるものですが、南極基地内でも同様のことが生じたようです。

そして、ルンバが大好きなスタッフたちにとって、アーニーの行方不明は「黙ってはいられないビッグイベント」となりました。

南極基地での「ルンバ失踪事件」、そしてスタッフから要求される「身代金」

「アーニー失踪事件」は、スタッフたちの間で瞬く間に広がりました。

南極点望遠鏡チームのX(当時Twitter)には、「最愛のアーニーが行方不明です」という張り紙の画像が投稿されるほどでした。

その投稿の中では、「パートナーのバートは取り乱しており、人々はアーニーを探すためにビラをまいたり、小さな記念碑を用意したりしている」とも述べられています。

そしてこの事件は、(悪ノリするスタッフたちによって)さらなる展開を迎えます。

「クッキーモンスター」と名乗る2人組とアーニーの写真(おもちゃの銃を突きつける写真、アーニーを階段から突き落とそうとする写真)が載せられた張り紙が、基地調理室の外に張られたのです。

そこには、「アーニーが生きている姿をもう一度見たければ、チョコチップクッキーの入ったトレイを指定の場所に置け。そうすれば無事に返してあげよう」という、身代金の要求も書かれていました。

アーニーは基地のどこかで発見されたのでしょう。しかし愉快な誘拐犯の手に渡ってしまったようです。

スタッフたちはこのことで大いに盛り上がり、中には「誘拐犯によって、既にアーニーは命を落としている」と述べて、そのことを悼む替え歌を作る人もいたようです。

とはいえ最終的に、アーニーはチョコチップクッキーと引き換えに返還され、バートと再会することができました。

ロウィッツ氏によると、このような「悪ノリ」は、基地で働くスタッフたちにとって必要なことなのだとか。

南極の基地では、人々が考える以上にやるべきことがたくさんありますが、変化は稀です。

そのため、スタッフたちは努めて自分たちを楽しませる必要があり、アーニーの失踪事件は、彼らを大いに興奮させるユニークなイベントとなったのです。

アーニーを含む「南極点のルンバ」はこれからもスタッフたちに愛されていき、様々なストーリーを紡いでいくことでしょう。

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参考文献

Roombas at the End of the World Robotic romance, ransoms, and raccoon suits at the South Pole https://spectrum.ieee.org/south-pole-roombas
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