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生物学者が困惑した水中写真家がインスタに投稿した謎生物の正体が判明!


2018年、著名な水中写真家の峯水 亮(みねみず・りょう)氏により、沖縄の海で”正体不明の水生生物”が撮影されました。


褐色の球体に糸状のものが生え出た姿は、まるでメドゥーサのようで、世界中の生物学者たちを大いに困惑させています。


しかしこのほど、オーストリア・ウィーン医科大学(MedUni Wien)の研究者により、ついにその正体が突き止められました。


なんとこれは一匹の生物ではなく、寄生性の「吸虫(きゅうちゅう)」が無数に集まって形成されたコロニーだったのです。


研究の詳細は、2023年9月22日付で科学雑誌『Current Biology』に掲載されています。




目次



  • 「乗り手」と「漕ぎ手」に分かれた複合生物だった!
  • 「乗り手」と「漕ぎ手」は同じ種の異なる形態⁈

「乗り手」と「漕ぎ手」に分かれた複合生物だった!


峯水氏(Ryo Minemizu Photography)が発見した謎の生物は、既知のワームや軟体動物、甲殻類のどれにも当てはまらないものとして、多くの生物学者の注目を集めました。


その一人が、ウィーン医科大学の生物学者イゴール・アダメイコ(Igor Adameyko)氏です。


海洋生物の写真愛好家であるアダメイコ氏はInstagramを閲覧していた際に、峯水氏の投稿したこの生物の写真を見つけたと言います。


強い興味を抱いたアダメイコ氏は、峯水氏に標本を提供してもらえないかとお願いしました。


それから間もなく、氏が働いているスウェーデン・カロリンスカ研究所(Karolinska Institute)に生物の標本が届きます。




 












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送られた小瓶の中には、豆粒サイズの小さな標本が入っていました。


アダメイコ氏が慎重に解剖してみると、この生物は単一の生き物ではなく、体長数ミリの生物が無数に集まったコロニーであることが判明したのです。


全体としては”船”のような仕組みをしており、主に「褐色の球体」「半透明の糸状」の2つの部分に分かれていました。


褐色の球体は、精子のような形をした生物が数百匹集まってできた塊であり、自ら推進する力がないことからアダメイコ氏は「乗り手(Passenger)」と呼んでいます。


半透明の糸状は、ワームのようにクネクネと動く生物で、褐色の球体に尾を結び、頭を外側に向けていました。(よく見ると目に当たる2つの黒点が見えます)


そして彼らが泳いで推進力を生み出すことからアダメイコ氏は「漕ぎ手(Sailor)」と呼んでいます。


標本の球体には20匹の漕ぎ手がくっついていました。


アダメイコ氏は「まるでメドゥーサの頭に生えたヘビの髪の毛のようだった」と述べています。


左:球体を作る「乗り手」、右:糸状の「漕ぎ手」
Credit: Igor Adameyko et al., Current Biology(2023)

また、彼らの泳ぐ姿が峯水氏により撮影されています。


漕ぎ手が協力して泳ぐ姿
Credit: Igor Adameyko et al., Current Biology(2023)

それでもこの奇妙な複合生物の真の正体は分かりませんでした。


そこでアダメイコ氏は、体内の解剖学的な構造を調べるため、この生物をさまざまな抗体で染色することに。


その結果、神経系の細胞パターンから、ついにどのグループに属する生物であるかが明らかになったのです。


「乗り手」と「漕ぎ手」は同じ種の異なる形態⁈


調査の結果、この複合生物は軟体動物や環形動物、扁形動物が含まれる冠輪動物(学名:Lophotrochozoa)」の仲間であることが判明しました。


さらにDNA解析を行ったところ、扁形動物の中の「二生吸虫類」の一種であることが特定されています。


二生吸虫類は、脊椎動物の消化管で生活する寄生生物で、幼生のうちに魚やネコ、人間に食べられることで寄生を開始します。


そして宿主の体内で成長し、産んだ卵をフンに乗せて環境中に放出するのです。


また二生吸虫には、他種の小さな生物の動きを模倣するために集団で合体するものがいます。


おそらく、今回見つかった二生吸虫も集団で塊となり、水中をちょこまかと動き回ることで、宿主となる魚に食べられやすくしているとアダメイコ氏は指摘しました。


漕ぎ手による泳ぎ方(動くことで魚に食べられやすくしている?)
Credit: Igor Adameyko et al., Current Biology(2023)

さらに「乗り手」と「漕ぎ手」は互いにDNAの一致する同種であることが判明しており、この種が幼生期に2つの異なる形態を使って協力していることが示されています。


アダメイコ氏は、宿主の感染源となって体内で繁殖するのは「乗り手」の方であり、重労働を担っている「漕ぎ手」の方は宿主に飲み込まれた時点で役目を終えて、自分たちを犠牲にするのでしょうと説明しています。


このように仲間を繁殖させるために自らを犠牲にする習性は、他の吸虫にも見られる行動です。


幼生期に2つの異なる形態を持っていて、互いに協力し合う
Credit: Igor Adameyko et al., Current Biology(2023)

脊椎動物を宿主とする吸虫はこれまでに2万種以上が見つかっていますが、その行動や生態については多くが謎のまま残されています。


アダメイコ氏は次のステップとして、今回見つかった吸虫が互いにどう協力して、コロニーの動きを制御しているかを解明する予定です。


現時点では、漕ぎ手に光を感知できる眼点が認められているため、これが何らかの役割を果たしている可能性があると考えています。


光の差す方に進むことで、個々の漕ぎ手がバラバラの方向に泳ぐのを防いでいるのかもしれません。


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参考文献

‘Mind-boggling’ sea creature spotted off Japan has finally been identified
https://www.science.org/content/article/mind-boggling-sea-creature-spotted-japan-has-finally-been-identified

元論文

Polymorphic parasitic larvae cooperate to build swimming colonies luring hosts
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(23)01170-3
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