「ハゲたらスキンヘッドにしてしまえ」はジェイソン・ステイサムのようなイケメンだけに許される対処法では無いようです。
米ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのアルバート・マンネス氏(Albert Mannes)らの研究チームは、スキンヘッドの人とそうでない人の印象の違いを検討しています。
結果、スキンヘッドの男性は、髪の毛が濃い、あるいは薄い男性と比較して、より男性的で、身長が高く、身体的に強い印象を与える傾向が確認されました。
また、薄毛の男性よりも、スキンヘッドの男性はリーダーシップがあると思われるようです。
この現象は、髪型をスキンヘッドにする選択を取ることが、人物の大胆さを象徴しているという印象を受けるからだと考えられます。
この研究の詳細は、学術誌「Social Psychological and Personality Psychology」にて2012年8月16日に掲載されました。
目次
- 身長が低く色白の男性ほど薄毛になりやすい
- 毛の濃い男性よりもスキンヘッドの方が印象は良い
- スキンヘッドは性格の大胆さを相手に伝達する
身長が低く色白の男性ほど薄毛になりやすい
薄毛のデメリットとしてイメージしやすいのは、印象の悪化ではないでしょうか。
実際、薄毛の人は、そうでない人よりも5-10歳老けて見え、協調性が低く、相手の意見を肯定することが少なく、魅力度が低いという印象を抱かれる傾向があることが報告されています。
その影響を受けてか、薄毛の人は、自尊心や身体イメージの低下を招きやすく、強いストレスや抑うつを経験する傾向もあるようです。
近年の調査によると、薄毛に悩む人の割合は、30-40歳代男性の約50%前後いるとされ、日本での薄毛治療の市場規模は約1兆円を超えると言われています。
そして近年では10-20代で発症する「若年性脱毛症」も増えてきています。
2017年に「Nature Communications」に投稿されたボン大学の研究では、若年性脱毛症の男性10846名とそうでない男性11672名の遺伝子を比較し、身長が低く色白の男性ほど若くして薄毛になりやすいことが報告されています。
このような身体的な特徴を事前に把握し、早期発見と改善で予防できるのであれば、薄毛の進行を遅らせることができるかもしれません。
しかし薄毛が進行し、もう既に重度なレベルまで達している場合にはどうすればよいのでしょうか。
米ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのマンネス氏は薄毛による印象のマイナス面を対処したいのであればスキンヘッドにすることを提案しています。
実際にマンネス氏自身が30代前半に薄毛になり始め、スキンヘッドにしたときに周りから以前よりも「優れた品格がある」との印象を抱かれることが多くなった経験を基に、その実感値が本当なのかを実験で検討しています。
実験にはオンラインで募集した一般人367名が参加しました。
そして参加者を、①髪の毛をデジタル処理で消しスキンヘッドにした男性の顔画像を見る人と②そのままの髪の毛がある顔画像を見る人の2つのグループに分け、人物の印象評価してもらいました。
印象評価では支配性、男性らしさ、協調性、魅力度、見た目の年齢とリーダーシップの高さなどの項目がありました。
さて男性の髪型によって形成される印象に違いはあったのでしょうか。
毛の濃い男性よりもスキンヘッドの方が印象は良い
実験の結果、スキンヘッドに加工された男性は、髪の毛がある元の男性と比較して、支配的で、年齢が高く、身長が大きく(約2.5 cm)、身体的に強い(ベンチプレスを約13%重く持ち上げる)印象を抱かれる傾向がありました。
しかしこの実験デザインでは、印象形成の違いが実験で用いた顔画像に依存している可能性が否定できません。
そこで後続の実験では、参加者に人物に関する記述を読ませ、印象を評価してもらいました。
以下の文章は実験で用いた人物に関する記述の例です。
「ジョンは35歳の白人です。彼は大学院卒で、健康ケアセンターで働いています。彼は中央西アメリカに住んでいます。身長は180 cmで、体重は89 kgでスキンヘッド(薄毛、あるいは髪の毛が濃い)です。」
このように人物の髪の毛の量に関する最後の記述のみに違いを設け、人物の印象形成に差が生じるかを検討しました。
実験の結果、スキンヘッドの男性は、髪の毛が濃い・薄い男性と比較して、より男性的で、身長が高く、身体的に強い印象を与える傾向が確認されました。
また、薄毛の男性よりも、スキンヘッドの男性はリーダーシップがあると思われる傾向があるようです。
これらの結果はスキンヘッドが他の髪型よりも精神的・身体的な強さを相手に伝達し、男性らしい印象を形成するシグナルになる可能性を示唆しています。
スキンヘッドは性格の大胆さを相手に伝達する
なぜスキンヘッドにすると男性的で、身長が高く、身体的に強い印象を相手から抱かれるのでしょうか。
理由のひとつとして、髪の毛を剃り、スキンヘッドにする選択を取ることは、性格の大胆さを象徴しているからだと考えられています。
ただ単に髪の毛が薄いことを放置するよりも、自分自身で髪の毛を剃るという行動は、その人物を表すうえで重要な要素として捉えられるのです。
研究チームは「スキンヘッドという髪型を選択することは、人物の印象を決めるうえでの非言語的なシグナルとなっている。髪型は人物に関する情報を伝達する表現の一形態だと言えるだろう」と述べています。
髪の毛が薄くなってきた男性は、思い切って髪の毛を剃り、スキンヘッドにしてしまうのはどうでしょうか。
そうすることで、薄毛による自尊心や身体イメージの低下、ストレスやうつ病のリスクを防ぐだけでなく、より男性らしい印象を形作ることができるでしょう。
特にビジネスの場面などでは、自らのリーダーシップの能力や身体的な強さを表現することで、こちら側の有利な条件で交渉を進めることができるかもしれません。
逆に子どもと接するような相手に威圧的な印象を与えてはいけない場面では、髪型をスキンヘッドにするのは最善の選択ではないと言えます。
将来薄毛になってしまったときの対処法の一手段として頭の片隅に留めておいてください。
参考文献
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Shorn Scalps and Perceptions of Male Dominance https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1948550612449490 Meta-analysis identifies novel risk loci and yields systematic insights into the biology of male-pattern baldness https://www.nature.com/articles/ncomms14694 Social Perceptions of Male Pattern Baldness. A Review https://www.semanticscholar.org/paper/Social-Perceptions-of-Male-Pattern-Baldness.-A-Henss/c4d72bdb4ee3e06d2be2a0940d586760a30dae6e