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「触覚に手綱を掛けて昆虫を操縦する技術」が登場!


虫を思いのままに操ることができる世界がくるかもしれません。


今回、シンガポールの南洋理工大学の機械工学チームが、虫を非侵襲的な方法で電子制御して操縦する方法を開発しました。


この画期的な技術では、虫の向きを目的の方向に変えたり、歩くスピードを速くしたり遅くしたりすることができました。


この技術が活用されることで、映画やドラマの世界のように、虫がスパイとして活躍したり、ドローンのように飛び回ったりと、様々な活動を行う日がくるのかもしれません。


一体、研究チームはどのように虫を傷つけることなく操縦したのでしょうか?


なお、研究されたのはゴキブリの一種なので苦手な方は注意してください。


研究の詳細は、2023年9月21日付けで、学術誌『npj Flexible Electronics』に掲載されています。




目次



  • 虫を倫理的に扱いながら操縦可能にした研究

虫を倫理的に扱いながら操縦可能にした研究


虫をラジコンのように操縦すると聞くと、機械でできた足や羽を持っていたり、頭に何かを埋め込んだり、目の代わりにセンサーが付いていたりと、虫の体そのものを機械化するイメージを持ってしまいますが、今回の研究では、虫の体はそのままに操縦することが可能になったようです。


実は以前からも研究チームは、様々な虫をサイボーグ化する技術を開発してきましたが、その方法は虫の神経系に直接プローブ(実験などのために挿入する針)を取り付けるもので、虫に大きなダメージを与えていました


もちろんダメージを受けた虫は、その寿命が短くなり、研究のための労力に対して得られる成果が少なくなってしまうという問題がありました。


さらに、虫に苦痛を与えるこの方法は、倫理的な観点から問題があるとも指摘されています。


そこで今回研究チームは、虫にダメージを与えずにコントロールする方法を開発しました。


これにより、虫を倫理的に扱いながら、研究の効率も向上させることができたのです。


虫を傷つずに操縦する仕組みとは


今回の研究に使われたのは、マダガスカルゴキブリ(Madagascar Hissing Cockroach)という昆虫です。


まず研究チームは、この虫の動きを制御するための新しい方法を開発しました。


これまでの研究で、虫の触角を刺激することで向きを変えることが可能であると示されていたため、虫の触角を傷つけずに刺激するための特製のカバー、通称「スリーブ(下記画像内c)」を作成しました。


このスリーブは金とプラスチックの層からできており、紫外線を照射することでプラスチックが収縮して触角にしっかりフィットします。


このスリーブは虫の背中に取り付けた小さな「バックパック(下記画像内e)」という装置に短いワイヤーで接続されており、操作者はコントローラーを使用して、このバックパックに無線信号を送ることができます。


漫画などには、虫より小さい種族などが登場するファンタジー作品に、触覚に手綱を掛けて虫を馬代わりにする世界などが登場したりしますが、イメージ的にはそれに近いことをするデバイスと言えるでしょう。


信号を受け取ったバックパックは、スリーブを通して触角に微弱な電気刺激を与え、虫の動きを誘導します。


さらに、虫の腹部にも電極を取り付けて、速度をコントロールすることができるようにしました。


aがアンテナを埋め込む従来の方法でしたが、この方法では虫の体を傷つけてしまいます
Credit:Bob Yirka et al.,npj Flexible Electronics (2023).

この新技術を使用して、研究チームは虫を特定のコースで走らせる実験を行いました。


S字型のラインや障害物が置かれた平坦な場所でのテストの結果、虫の動きを正確にコントロールすることが可能であることが確認されたのです。


実際に動きを見てみましょう。


虫の動きを制御してS字のライン状を歩かせている実験動画
Credit:Qifeng Lin et al.,npj Flexible Electronics (2023)

見事にS字のラインの上をなぞるようにトコトコと歩いているのが確認できます。


もちろんこれはマダガスカルゴキブリが黒字の上を好んで歩く習性があるというわけではなく、研究チームが今回のデバイスを用いて操縦したものです。


フル動画は下記YouTubeで見ることができます。



虫や動物などを傷つけなければならない実験は、以前から倫理的な問題があると指摘されていたことでもありました。


しかし、今回の研究結果は、苦痛を引き起こすことなく虫の行動や能力を研究するための新たな可能性を開きました。


原理的には乗馬に近い技術なので、いつでも捕まえた虫を利用でき、その後無傷で自然に返すことも可能になるため、虫をコントロールしようとする研究者たちにとっては大きな進歩となるもしれません。


また、今回の技術を使用することで、人間では立ち入ることが困難な場所への捜索救助任務などの分野にも応用できる可能性があります。


近い将来、思いもよらなかった場面で、虫たちが私たちをサポートしてくれる日がくるのかもしれません。


全ての画像を見る

参考文献

A non-invasive way to turn a cockroach into a cyborg
https://techxplore.com/news/2023-09-non-invasive-cockroach-cyborg.html

元論文

Resilient conductive membrane synthesized by in-situ polymerisation for wearable non-invasive electronics on moving appendages of cyborg insect
https://www.nature.com/articles/s41528-023-00274-z



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