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人類は地下に住むことで気候変動を生き抜くことができるのか


先日、欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」は、「2023年7月が観測史上最も暑い月となった」と発表しました。

日本でも猛暑日が連続しており、東京では猛暑日数の最多記録を更新しています。

もしもこのまま地球が灼熱の世界になったら。

私たち人間は、地下生活などの対応策を真剣に考えなければならない時が来たのかもしれません。

実は世界には生活のほとんどが地下にある町や、かつて2万人もの人々が生活していた失われた地下都市が存在します。

一体そこにはどのような生活があるのでしょうか。そしてそこでの生活は気候変動を耐え抜くための有効な解決策となるのでしょうか。

目次

  • 実在する地下都市
  • 地下生活の厳しさ
  • 地上の活動に左右される地下の環境

実在する地下都市

「クーバーペディ」穴蔵の白人

クーバーペディの地下住宅
Credit:en.wikipedia

南オーストラリア州にあるクーバーペディは、オパール採掘の町として知られるだけでなく、町の住民の約60%が地下に暮らす独特な生活スタイルでも注目を集めています。

クーバーペディという名前は、アボリジニの言葉で「白人が潜る穴」を意味する「クパ・ピティ」に由来しています。

この地域の地上では、夏には気温が52°Cまで上昇し、冬には2°Cまで冷え込むことがあります。しかし、地下の住居、通称「ダッグアウト」は、一年を通して約23°Cの安定した温度を保っています。これによりエアコンなどの高価な冷暖房設備を必要とせず、生活するうえでのコストが抑えられるのです。

クーバーペディの地下モーテル
Credit:en.wikipedia

地上の暑さは非常に厳しく、鳥が落下したり、電子機器が壊れたりすることもあるほどですが、対照的に地下では広々としたラウンジやプールを持つ住宅もあり、一部の住民は安定した環境で贅沢な生活を楽しんでいます。

ただし、地下ならではの制約もあります。この地域は砂岩やシルト岩などの柔らかい岩で形成されているため、崩落を防ぐ目的から、住居は地表から少なくとも2.5メートルは離して建設しなければならないという規則があります。しかしながら、それでも時々陥没事故が発生してしまうようです。

なお、この町ならではのエピソードとして、ある男性が自宅のシャワーを設置する際、150万豪ドル(98万米ドル)相当のオパールを発見したという逸話が存在しています。

地下にあるクーバーペディの宝石店
Credit:ja.wikipedia

失われた都市デリンクユ

デリンクユ地下都市の通路
Credit:en.wikipedia

1963年、トルコのカッパドキア地方に住んでいた男性が自宅の改築中、地下の壁に空いた穴からニワトリが次々と消えていくのを目撃しました。

この穴の先を調査した男性は、巨大な地下迷路を発見。これこそ古代の失われた都市デリンクユの入り口でした。

紀元前2000年頃に築かれたこの地下都市は、地上から76メートルも下に広がっており、階数にすると18階にもなります。

驚くべきことに、この地下迷宮には教会、厩舎、倉庫、住居などが含まれており、最大で2万人もの人々が住むことができるとされています。また、地上の空気や光を効果的に取り入れるために、実に1万5000もの坑道が巧妙に配置されています。

デリンクユ深部の換気井戸
Credit:en.wikipedia

デリンクユは数千年に渡り、戦時を含む様々な時期に避難所として使われてきたと考えられています。しかし、1920年代にギリシャ正教徒が追放された後、この都市は放棄されることになりました。

カッパドキア地方は、地上の気温が夏には30℃、冬は0℃と大きく変動する中、この地下都市は一年を通して約13℃の涼しい環境を保っています。そのため、食材の保存には理想的な場所となっており、現在トンネルの一部は、様々な果物や野菜の保存に使用されています。

クーバーペディと同じく、カッパドキアの岩石も加工しやすく、また、乾燥した土壌もトンネルの建設に適したものとなっています。

地下生活の厳しさ

人間は地下での生活に適していないのかもしれません
Credit: canva

計画的に作られた地下都市であれば快適に過ごせそうな気もしますが、一時的に地下に身を寄せるのと、そこを永遠の住まいとするのはまったくの別物でしょう。

多くの文化の場合、地下は死や終わりを象徴しています。狭くて換気が難しい場所での生活は、想像以上の厳しさがあるのからなのかもしれません。

『アンダーグラウンド:地下世界の人類史(Underground: A Human History of the Worlds Beneath Our Feet)』の著者、ウィル・ハント氏はLiveScience誌で「私たちの体は、生物学的にも生理学的にも地下での生活に適していない」と指摘しています。

太陽の光を受けない地下での長期生活は、人間の概日リズムを乱し、睡眠障害をはじめ、様々な健康問題を引き起こすことが考えられるでしょう。

さらに、地下には水害のリスクも潜んでいます。

アメリカ・ラスベガスに張り巡らされている地下トンネルは、雨水の排水を目的として作られたものですが、滅多に雨が降らない気候であることから、約1,500人のホームレスが住み着いています。しかし、突然の大雨が降った際には鉄砲水が発生し、多くの人々が命を失っているのです。

さらに地下建築には通常、地下の圧力に耐えられる頑丈な材料が必要とされます。また、掘削に取りかかる前には、大規模な地質調査も必要となってきます。

地下というその特殊な環境で生活するには、数々のリスクを伴うことを認識する必要がありそうです。

地上の活動に左右される地下の環境

地下生活の快適さは、地上の環境にも左右されそうです。現代の場合は、地下だからといって涼しく過ごしやすいとは限らないのかもしれません。

例として、アメリカ・シカゴの中心、シカゴループのビジネス地区を見てみましょう。

このエリアでは1950年代から、駐車場や地下鉄、地下室といった地下施設が次々と作られ、地上は高層ビルに覆われています。

こうした多くの施設が密集する地域では、地下の温暖化が問題となっているのです。

左の図は温度の変化、右の図は収縮(赤)と膨張(青)の変化を表します。
Credit:Alessandro Rotta Loria/Communications Engineering

日本でも東京などの都市部で地下鉄を利用する人たちは気づいているかもしれませんが、地下だからといって低い温度が保たれるわけではありません。

放熱する設備が密集すれば、例え太陽などの影響を受けない地下であっても熱がどんどんこもっていくことになるのです。

都会では「地下の温暖化」が起きていると判明!建物が不安定になる危険も?

私たちは地下に適応できるのか

私たちが地下空間に適応していくためには何が必要でしょうか。

安全性はもちろん、快適な温度、自然光が入り風通しの良い環境、そして何より地上とのつながりを感じられる空間が求められるでしょう。

この理想を実現した例として、カナダに存在する世界最大の地下街「モントリオール地下街(通称:RÉSO)」が挙げられます。

総延長32kmもの長さを持つこの地下街は、オフィスや店舗、ホテル、学校、駅、バスターミナル、アリーナなどの様々な施設と繋がっており、地上との一体感を保っています。

モントリオール地下街の噴水
Credit:fr.wikipedia

しかし、今後も地球の気温が上昇し続けるのならば、地下の温度も上がり続ける可能性があり、ただ単に地下都市を作るだけでは、そこは快適な空間とはならないのかもしれません。

結局のところ、私たちには長期的な視点での持続可能な環境対策が不可欠なのかもしれません。

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参考文献

Could Humans Live Underground to Survive Climate Change? https://www.sciencealert.com/could-humans-live-underground-to-survive-climate-change The silent impact of underground climate change on civil infrastructure https://www.nature.com/articles/s44172-023-00092-1#Abs1
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