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カブトムシはなぜ夜間樹液に集まるのか? 原因はヤツだった


カブトムシは昆虫界の王様とされますが、オオスズメバチの前では太刀打ちできません。山口大学の研究によると、カブトムシはクヌギの樹液場を占拠しますが、明け方になるとオオスズメバチによって追い出されます。スズメバチがいない状態では、カブトムシは昼頃まで樹液場にとどまれることが実験で示されました。これは、彼らが本来の夜行性ではなく、スズメバチの脅威により夜行性に振る舞うようになった可能性を示唆しています。さらに、シマトネリコという異なる木では、オオスズメバチがカブトムシに危害を加えないことも観察されています。

カブトムシといえば、押しも押されぬ昆虫界のスターであり、名実ともに国内では敵なしといった感があります。

しかし、そんな彼らでも頭の上がらない恐怖の大魔王がいるのです。

夜間にクヌギの樹液場を占拠していたカブトムシは、明け方にオオスズメバチによって次々と剥ぎ落とされ、数分のうちに樹液場から排除されることが山口大学による2022年の研究で明らかになっています。

また早朝〜昼間にかけてスズメバチの飛来を阻止したところ、カブトムシはお昼頃まで樹液場に留まるようになりました。

これはカブトムシが、朝になるとスズメバチが襲来するために、夜行性であることを強いられている可能性があるのです。

研究の詳細は、2022年11月6日付で科学雑誌『Ecology』に掲載されています。

目次

  • カブトムシも恐怖する「ヤツ」とは?
  • スズメバチの襲来がないと、どうなる?

カブトムシも恐怖する「ヤツ」とは?

クヌギの樹液場には多種多様な昆虫たちが集まりますが、その顔ぶれは昼と夜とで大きく異なります。

昼間に姿を見せるのはチョウ類やカナブン、ハチの仲間です。

中でもオオスズメバチは、圧倒的な戦闘力でヒエラルキーの頂点に君臨し、他の昆虫を追い払って樹液場を独占します。

他方で夜間に集まるのはカブトムシやクワガタ、ガの仲間です。

この中では、最もサイズが大きく丈夫な体を持つカブトムシがやはり有利な地位を占めています。

それでは、昼の王であるオオスズメバチと夜の王であるカブトムシが遭遇したら、どうなるのでしょうか?

この疑問に答えるべく、研究チームは2022年に山口県内のクヌギ林にて、樹液場に集まるカブトムシを観察することに。

すると明け方の5時頃に、数匹のオオスズメバチが樹液場にやって来て、カブトムシの脚に噛みつき、次々とクヌギから剥ぎ落としていったのです。

早朝の5時9分〜14分の間にカブトムシを完全排除
早朝の5時9分〜14分の間にカブトムシを完全排除 / Credit: 山口大学 –オオスズメバチvsカブトムシ 最強の昆虫はどっち?(2022)

カブトムシは硬い外骨格に守られていますが、ハチの強靭なアゴで脚に噛みつかれると、しがみつく力が奪われ、クヌギからポロリと落下していきました。

さらに凶暴なスズメバチはカブトムシを木から落とすだけでは飽き足らないようで、地上に落ちたカブトムシを執拗に追い回し、攻撃を続けていたのです。

カブトムシの脚に噛みつくオオスズメバチ
カブトムシの脚に噛みつくオオスズメバチ / Credit: 山口大学 –オオスズメバチvsカブトムシ 最強の昆虫はどっち?(2022)

当初10匹以上もいたカブトムシは、ハチの襲来からわずか数分で完全に排除され、樹液場を乗っ取られていました。

オオスズメバチによる排除行動は、観察を行った3日間の早朝すべてで確認されています。

では、もしオオスズメバチの襲来がないとすれば、カブトムシの活動時間帯に変化は出るのでしょうか?

スズメバチの襲来がないと、どうなる?

そこでチームは、スズメバチ除けのスプレー「スズメバチサラバ(株式会社 KlNP)」を使って、オオスズメバチを樹液場から継続的に駆除する実験を行いました。

早朝〜正午にかけて、樹液場にやって来たオオスズメバチにスプレーを噴きかけ、クヌギの木に降り立つのを阻止しました。

その結果、夜行性と思われていたカブトムシの実に半数以上が、そのまま正午まで樹液場に留まり続けたのです。

このことから、カブトムシは根っからの夜行性というわけではなく、オオスズメバチがいなければ、明るい時間帯でも十分に活動しうることを示しました。

オオスズメバチがいる時といない時のカブトムシの個体数の変化
オオスズメバチがいる時といない時のカブトムシの個体数の変化 / Credit: 山口大学 –オオスズメバチvsカブトムシ 最強の昆虫はどっち?(2022)

つまり、カブトムシは鬼の居ぬ間に食事を済ませ、スズメバチのやって来る明け方になると、そそくさとその場を退散しているようです。

これと別に、近年の研究で、シマトネリコという木に集まるカブトムシは、昼間になっても樹液を吸い続けることが明らかになっています。

シマトネリコにはスズメバチもやって来ますが、不思議なことに、彼らがカブトムシに危害を加えることはありません。

その理由について研究者は、シマトネリコはクヌギと違い、1本の木に多数の樹液場が存在するため、少ない餌場を取り合う必要性がないからだと説明します。

この点からも、カブトムシの活動がいかにスズメバチの影響を被っているかがわかります。

日本では”昆虫の王様”のイメージが強いカブトムシも、オオスズメバチには恐れをなして太刀打ちできないようです。

こちらは、樹液場のカブトムシがオオスズメバチによって排除される様子を捉えた映像。

全ての画像を見る

参考文献

オオスズメバチvsカブトムシ 最強の昆虫はどっち?
https://www.yamaguchi-u.ac.jp/weekly/15652/index.html

元論文

Temporal niche shifts driven by interference competition: Giant hornets exclude rhinoceros beetles at sap sites at dawn
https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ecy.3914

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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