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嘘をつかずに「率直に真実をいう子ども」は大人に悪い評価をされる


大人は子供に「嘘をついてはダメ!」と教えるものです。

しかし実際ところ、嘘をつかずにすべてを率直にいう人はおそらくかなり生きづらいのが現代社会でしょう。

アメリカ・テキサス州立大学サンマルコス校(Texas State University-San Marcos)の刑事司法・犯罪学部に所属するローレ・ブリンバル氏ら研究チームが調査したところでは、特定のケースでは、大人は上手く嘘をつく子供よりも正直な子供に対して厳しい目を向ける傾向があることを報告しています。

言葉とは裏腹に、実際大人たちも嘘を上手に使って相手に配慮できる子どもを求めているようです。

研究の詳細は、2022年10月11日付の学術誌『Journal of Moral Education』に掲載されました。

目次

  • 大人は「子どもの嘘」をどう感じている?
  • 大人は子どもにも「優しい嘘」や「社交辞令」を求めていた

大人は「子どもの嘘」をどう感じている?

嘘を言わずに本当の事を言ってほしい、というのは誰もが抱く感情でしょう。

「上司に仕事で嘘の報告をする部下」「お世辞ばかりで陰口を言う人」には当然嫌気がさします。

だから大人たちは、子どもたちには「嘘をつかずに正直であるべきだ」と教えます。

大人は子供に嘘をつかないよう教える
大人は子供に嘘をつかないよう教える / Credit:Canva

しかし実際のところ、社会という場は正直さを求めているでしょうか?

面接で本当ことだけ言う人はいないでしょうし、目上の人の問題点を率直に指摘するのも難しいことでしょう。

そう、社会とは嘘を上手に使いこなさないと生きていくことが難しい場所なのです。

この矛盾に対して、ブリンシバル氏ら研究チームは、大人が子どもたちの正直な態度に対してどのような反応をしているか調査することにしました。

アメリカ北東部に住む大人267人を対象に、6~15歳の子どもたちがさまざまな状況で真実を語ったり嘘をついたりする動画をいくつか見せたのです。

ある動画では、親と喧嘩した妹がどこに隠れているか、親が子どもに尋ねます。

子どもたちはビデオの中で、以下の4種類の嘘または真実を語りました。

  • 率直に真実を語る
  • 真実をいくらか曖昧にして語る
  • 微妙な嘘を織り交ぜる
  • 露骨に嘘をつく

例えば上記のシナリオで子どもたちは、「妹は玄関の外に隠れている」と率直に真実を語ったり、「宿題をしに図書館に行った」とあからさまな嘘をついたりしました。

また「外にいるかもしれない」と真実をいくらか曖昧に語ったり、「寝たかもしれない」と言い切らない形式の微妙な嘘をついたりするケースもありました。

あるシナリオでは、子供が妹を守ろうとして嘘をつく
あるシナリオでは、子供が妹を守ろうとして嘘をつく / Credit:Canva

そして参加者たちは、それぞれの動画を見た後に、信頼性、優しさ、有能さ、好感度、知性、誠実さなど、その子どもの特性を評価。

さらに参加者には、子どもの親だった場合、その嘘や正直さを咎めたり誉めたりするかどうかも尋ねました。

大人は子どもにも「優しい嘘」や「社交辞令」を求めていた

実験の結果、いわゆる「思いやりのある嘘・社交辞令」に該当するケースでは、大人たちは曖昧な真実や微妙な嘘を語る子どもよりも、真実を率直に語る子どもを厳しく評価すると判明。

また大人たちは、「隠れている妹」のシナリオで、「彼女は外にいるかもしれない」と真実を曖昧に語った子どもをもっともよく褒める傾向にありました。

つまり大人たちは「嘘はダメ」と言葉では言いつつ、「思いやりのある嘘」「社交辞令」「真実を曖昧に伝えること」が上手い子どもを高く評価していたのです。

親のこうした感情は、表情や態度など普段の言動で子どもに伝わります。

大人の嘘に対するスタンスは子供にも伝わる
大人の嘘に対するスタンスは子供にも伝わる / Credit:Canva

子どもたちは幼いころから、真実と嘘に関して非常に複雑な環境で成長しているのです。

ブリンシバル氏も、「大人が抱える正直と不正直に関する矛盾が、社交的な影響として子どもの初期の行動を形成しているのかもしれない」と述べました。

子どもは成長の過程からして、大人の教育方針の建前と本音に向き合っていかなければならないわけです。

この微妙なニュアンスがうまく飲み込めず、嘘ダメと教わったから正直になろうとすると、逆に大人に叱られやすい状況になってしまうかもしれません。

昔から周囲に馴染めず、大人からも不条理な扱いを受けたという人は、こうした問題に実感があるかもしれません。

一貫性のない意見の中で子どもは育ち、複雑な価値観を持った人間へと成長していきます。

この大人たちの態度に対処できない子どもたちは、人生の最初のところで躓いてしまうかもしれません。

嘘と建前の使い方はどのように教えるのが正しいのでしょう? 今のところこの点については子どもが自分で気づいてくれるのを期待するしかなさそうです。

今後チームは、真実や嘘を語ることについて、子どもたちが受ける影響をさらに詳しく調査する予定です。

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参考文献

Children who tell blunt truth, as opposed to lying, are judged more harshly by adults
https://www.sciencedaily.com/releases/2022/10/221012103144.htm

元論文

Inconvenient truth-tellers: Perceptions of children’s blunt honesty
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/03057240.2022.2109606?journalCode=cjme20

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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