はじめに
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猫と暮らしていると、ときおり鳴き声が人間の言葉を真似ているかのように聞こえることがあります。人間の聞き間違えかもしれませんが、同じようなイントネーションとアクセントで鳴き声を出されると、まるでしゃべっているかのように聞こえてきます。
いったいなぜ猫たちはしゃべるのでしょうか?参考の動画も紹介しながら、猫がしゃべる理由について紹介していきます。
猫はなぜしゃべるの?
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猫たちは、野生で暮らしている時はもともとあまり鳴かない生き物でした。野良猫たちを見ていてもわかるように、手を差し伸べてもニャーニャー言いながら近づいてくる猫ちゃんよりも、無言で警戒しながらこちらを見てくるような猫ちゃんのほうが多いのではないでしょうか。
猫たちはどうして野生だとあまり鳴かないのでしょうか。それは、猫たちは野生の場合は単独で生活していることが多く、鳴き声を使ったコミュニケーションを仲間たちとする必要がないためです。
さらに、猫たちは獲物たちに居場所がバレてしまうことや、猫よりも強い他の捕食者たちに行動範囲を知られてしまうことを嫌がります。
また、猫たちは仲間を見つけても鳴き声ではなく、ボディランゲージやにおいを使ってコミュニケーションをとるため、あまり鳴かないともされています。
加えて猫たちは人間には聞こえない周波数の音域で鳴いたり、それを聞き分けたりすることができるため、人間からは鳴き声が聞こえないということもあります。
それに比べて犬たちは群れで暮らしているため、鳴き声を使って群れの仲間と頻繁にコミュニケーションを交わします。そのため、犬は何かあるとすぐに鳴き声を発するのです。
そんな猫ですが、最近ではイエネコとして人間の家族となって生活しているため、鳴き声を使ってコミュニケーションをとろうとする個体も増えてきたようです。
もちろんよく鳴くかあまり鳴かないかは、人間と同じように性格の差があります。社交的で甘えん坊さんの猫はよく鳴きますが、物静かで独立心の強い猫はあまり鳴きません。また、猫の種類によってもおしゃべりが好きなタイプとあまり鳴かないタイプの猫ちゃんもいるようです。
このように、猫たちは野生ではあまり鳴き声を発さない生き物ではあるものの、人間と暮らしていくイエネコとなっていく中で、便宜上鳴き声をよく発するようになったと考えられます。
そんな猫がときおり発する、しゃべっているように聞こえる鳴き声の原因は何なのかを以下に紹介していきます。
飼い主さんとコミュニケーションをとるために学習した
猫はイエネコとして生活していく中で、猫同士では当たり前に通じるボディランゲージやにおいによるコミュニケーションがうまくいかないために、鳴き声を使って飼い主の人間たちとコミュニケーションをとる方法を学習していきました。そのため野生の猫たちとは違い、鳴き声をよく発するようになったのです。
一般的に猫の鳴き声は「甘えているとき・要求があるとき」「不安や恐怖を感じているとき」「発情期やケンカをするとき」に発せられるとされています。
猫らしい声で「ニャー」とか「ニャーン」とか鳴くときは何かを要求しているときで、長く「ニャーーーーン」と鳴くときは甘えているときだとされています。
これらの鳴き声が徐々に変化した結果、人間の言葉に似たイントネーションやアクセントになり、しゃべっているように聞こえる鳴き声を発するようになったのではないかとも言われています。
飼い主さんが返事をしてくれる鳴き方や、反応してくれやすい鳴き声の出し方を記憶して、それを繰り返しているということもあるかもしれません。
このような鳴き方は、トイレが汚れているときやドアを開けてほしいとき、体調が悪いときなどにも発することがあるようです。
飼い猫は野生の猫とは違って、自分で食料を確保したり、行きたいときに行きたい場所へ自由に移動できたりするわけではないので、飼い主さんとのコミュニケーションは必須です。
しゃべっているように聞こえる鳴き声を発するのは、飼い主さんとのコミュニケーションを円滑に進めるためともいえるでしょう。
怒ったときの鳴き声が独特でしゃべっているように聞こえる
猫は、怒ったときにも威嚇するような大きな鳴き声を上げるものです。怒っているときには唸るような声で「アオーン」と鳴いたり、「ワウーー」と鳴いたりします。
鳴き声を発するときの口の動かし方も特徴的で、鳴きながら口を動かして「アオーアオー」と鳴くこともあります。
いつもとは違う声のトーンで鳴き、しかも鳴いている途中で口を動かすために、猫が何かをしゃべっているように見えたり聞こえたりすることがあるのです。
クラッキングしているのがしゃべっているように聞こえる
猫は口を素早く開閉して、「カカカ」とか「ケケケ」というような聞こえ方をする鳴き声を出すことがあります。これを日本では「クラッキング」と呼び、英語では「チャタリング」と呼びます。
ネコ科の中ではトラやライオンなどの大型の動物はクラッキングをしないとされていて、イエネコだけがクラッキングをすると言われています。
そんなクラッキングは、猫たちがもどかしさを感じたときや獲物を見つけたとき、不安や警戒心を抱いた時に発する鳴き声であるようです。
窓の外に小鳥が舞っているときや、爬虫類が窓の外側に張り付いているときなど、狩りの対象となる動物を見つけても捕まえに行くことができない時などに、もどかしさのあまりクラッキングをすることがあります。
また、おもちゃで遊んでいるときに興奮すると、獲物を捕まえたい気持ちが高まってクラッキングをすることがあります。さらに、暗闇から得体のしれないものが向かってきたときや、縄張りに見知らぬものがあるときなどにもクラッキングをするようです。
そのようなクラッキングの鳴き声も、猫ちゃんの発声方法や鳴き声の音程によってはしゃべっているように聞こえるかもしれません。
飼い主さんの言葉の意味が分かっているから
猫がしゃべっているような鳴き声を出す別の理由は、飼い主さんの言葉の意味がわかっているからである可能性もあります。
成猫には人間の子どもと同じ程度の知能があると言われています。正確には人間の1歳半から2歳程度の知能と言われていて、飼い主さんが猫ちゃんの名前を呼んでいるのか、怒っているのか、褒めているのかというのを感じ取ることができるようです。
飼い主さんがあいさつをするとあいさつで返してくれたり、褒めたり撫でたりすると嬉しそうな声を出したり、おしゃべりしたりするのは、飼い主さんの言葉の意味合いがわかっているからでしょう。
いつもエサを与える前に「ごはん」と言っていると、「ごはん」と言うだけでエサのお皿の前にちょこんと座って待つようになることでしょう。
それと同じように、飼い主さんが何かの言葉をかけてそれに返事をすると良いことが起こったという記憶が繰り返されていくと、飼い主さんの言葉を学習していくようになります。
そのため、飼い主さんの鳴き声に反応して一定の鳴き声を発するようになり、しゃべっているように聞こえるような鳴き声を発することがあるのです。
飼い主さんの感情がわかるから
猫たちは社交的な動物で、ある猫は数百の猫たちとコロニーを作って過ごしていたというデータもあるようです。そのため、一緒に暮らしている飼い主の感情を読み取ることもできるとされています。
ある実験によると、飼い主が落ち込んでいるときには猫が人間に頭をこすりつける回数が増えたようです。そのため、飼い主が喜んでいるときや悲しんでいるときを見きわめることができると言えます。
猫ちゃんが発する特定の鳴き声によって飼い主が幸せな表情や声を出したという経験が蓄積されていくと、猫ちゃんにとっては意味のないような鳴き声であったとしても、その鳴き声を記憶し、おしゃべりしているような鳴き声を使うということもあるようです。
また、猫は構ってほしいときにも鳴き声を発するものですが、特定の鳴き声を使った結果、飼い主が反応してくれたという経験が積み重なると、その鳴き声をますます使うようになります。
偶然にしゃべっているように聞こえる鳴き声を使った結果、飼い主さんにたくさん構ってもらえたという場合には、その猫はたくさんその鳴き声を使うようになるでしょう。