犬同士にも人間関係がある
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多頭飼いをしている方であれば、犬同士の関係にも気を遣っている方が多いでしょう。全ての犬が仲良くしてくれたら良いですが、犬同士の上下関係において飼い主さんが注意すべき点があるでしょうか?今回は犬同士の上下関係の秘密に迫りたいと思います。
犬は本来群れで生活する動物です。当然ですが、それぞれに関係性が作られています。多頭飼いしている人は犬同士の間に上下関係があることを知っている人が多いでしょう。もちろん、犬の上下関係と人間の上下関係はことなりますから、ぼんやりとした理解のままの人も多いはずです。これを機会に犬同士の上下関係についてもっとよく考えてみましょう。
犬同士の上下関係はシンプル
犬同士の上下関係とはどのようなものでしょうか?犬同士の上下関係は非常にシンプルです。上位にいる犬はすべての事に対して優先権があります。また下位の犬は上位の犬を優先しますし、自分が下位であることを認めています。
この関係は2頭であっても、3頭以上の複数の関係であっても変わりません。それぞれには明確な上下関係があり、しっかりと力の違いが表れているものです。
犬はもともと集団で生活していました。現在でもその習性が失われているわけではありません。野生動物として生活している犬たちは、その集団のなかで犬社会を築いており、それぞれの犬同士では明確な関係があります。
人間にも社会がありますが、人間の関係性は非常に複雑です。人間の場合は、社会や関係性に思想などが含まれていますので、単に上下関係があるわけでありませんね。
平等であることが主張されていたり、ある部分では資力や武力によって力関係が定まる場合もあります。歴史的には、力による上下関係が定まっていたことが多いですが、近代へと発展していく中で、平等化や公平化、人権の確立がおこり、その関係性は複雑になっていますね。
こうした人間の社会とは全く異なっているのが、犬の社会です。犬の社会では関係性が非常に単純です。リーダーが存在し、それは力によって決まります。それ以外の上下関係もはっきりとしており、それぞれは自分がどの位置にいるかを把握しているものです。
飼い主さんは人間社会の関係性を犬に求めるべきではありません。人間の関係性は人間の思考力あってのものです。動物にそれを当てはめようとするなら、秩序が無くなってしまい犬たちも混乱してしまうでしょう。
ですから飼い主さんに必要なのは、犬特有の関係性を把握することなのです。
犬同士の上下関係の見分け方
犬同士の上下関係はどのように見分けることができるでしょうか?
犬同士では互い分かっていても、それをあえて伝えてくれるわけではないので、飼い主さんは観察によって、互いの犬の上下関係を見分けなければいけないでしょう。といっても、犬の上下関係を見分けることは難しくありません。
一番よくわかるものとして「マウンティング」と呼ばれる行為があります。
マウンティングとは、片方の犬が他方の犬の上に覆いかぶさる行為の事をさします。下位の犬が文字通り下の位置にいて、上位の犬が上から覆いかぶさるのです。
下位の犬は通常と同じように立っていますが、上位の犬は飼いの犬の腰に覆いかぶさるようにするのが特徴です。このマウンティングは性衝動が伴う場合もありますが、ほとんどの場合は「自分の方が上位であることを示す行動」つまり「上位行動」です。
マウンティングが行われるなら、犬同士もはっきりと上下関係を認識することになりますし、それを見た飼い主さんもどちらが上位かが分かるのです。
マウンティング以外にも犬同士の上下関係を見極める方法はたくさんあります。例えば、普段のお互いの態度でもすぐに判断できるでしょう。
一方が吠えて片方がシュンとしているなら、吠えている方が上位です。同じ空間にいるときに堂々としている方は上位ですが、おどおどしたり落ち着きが無かったりする方は下位の可能性があります。
犬同士の上下関係を見分けたなら、飼い主もその上下関係に従ってあげることが大切です。下位の犬を上位の犬のように扱ってはいけません。逆も当てはまります。
子供たちはどんな立場にいるの?
犬社会において、子供たちはどのような立場にいるのでしょうか?子犬たちも社会の上下関係の一部にはいますが、特別視はされています。基本的に子犬たちは何をやっても本気で怒られることはありません。
もちろん、やりすぎたり、上位の犬に不敬な態度をとったりすると怒られたりいじめられてりすることもあるので要注意です。
子犬たちは幼いころに他の犬たちとじゃれ合ったり、成犬たちからたしなめられたりして徐々に社会性や上下関係のルールや程度を身に着けていくのです。
犬同士の上下関係はどのように決まるの?
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犬同士の上下関係はどのようにして決まるのでしょうか?もともと弱肉強食の世界ではあるので、力というシンプルなものによって関係が変わってきます。加えて年数なども大きな影響を及ぼします。
性格
犬の性格は様々です。気弱で大人しい性格もあれば、気性が荒く押しの強い性格もあります。より上位になりやすいのは、やはり気の強い犬が多いように感じます。
性格の強さは、精神的な強さにも直結します。どんなときでも勇敢さを示したり、逃げなかったりするなら、その犬は他の犬からも認められるようになり、自然と上位の立場になります。逆にどんな相手であっても弱々しい反応を示す犬は、下位の扱いをされるようになります。
年齢
犬の社会を観察していると、年功序列が基本となっていることが多いようです。幼い犬は下位になり、年齢が高ければ高い方が上位の存在として認められることが多いようです。
もちろん、すべてにおいて年功序列なわけではないでしょう。年齢は高くても非常に高齢のおじいちゃん犬がリーダーになることはありません。高齢でありながらもみんなを引っ張り、皆に対して力を示せるものが上位に位置するのです。
犬の上下関係は比較的幼い時から定まっている場合が多いようです。幼い犬は当然ながら力も弱いですし、気も弱くなります。年上の犬の方が強いので、上位になりやすいでしょう。この関係が続くので自然と年功序列になっていくのでしょう。
飼育され始めた時期
野生の犬と飼い犬では大きな違いがあります。それは1人の飼い主というリーダーのもとで生活しているという点です。新しく子犬が生まれた場合も、新しく買われたり貰われてきたりする場合も、いわゆる新入りが一番下位の存在になります。
すでに飼い主との関係を築いている方が当然地位が高く、新しく飼育されるにつれて、どんどんと下に入ってくるのです。
大切なのは飼い主さんもそのように扱ってあげることです。新しく飼い始めた犬の方を特別扱いしたり、他の犬よりも優先させたりすると他の犬は混乱してしまいます。飼い主さんの行動がきっかけで攻撃されたりいじめになったりすることがあるので注意しましょう。厳しく感じるかもしれませんが、新しい犬は一番下位でいるしかないのです。それが一番安全でもあります。
ケンカ
力の強さが直接上下関係に影響することも多々あります。犬同士がケンカしている場面に遭遇するかもしれませんね。これで犬同士の間で決着がついて、上下関係を分からせている場合が多いです。
ケンカに負けたほうが勝った側の下になります。力が強いものが上に立つ社会なので、当然と言えば当然です。これも犬社会のルールであり、可愛そうに思わないでいいでしょう。上位の犬やリーダーの犬は下位の犬を守る役目と責任を負うものです。当然力がないと守ることができませんし、他のものを従わせることもできません。
ケンカつまり、力の強さは一番分かりやすいルールであり、必要なルールでもあるのです。
情報交換にて
多頭飼いをしていると、犬同士がお互いに挨拶したり「情報交換」したりしている場面を見るでしょう。犬は相手のニオイから情報を仕入れる動物です。犬同士でも相手のおしりや身体などのニオイを嗅ぎ合います。その時には人間が言葉で語る以上の情報をやり取り出来ているのです。
ニオイによって、相手の性別、身体の大きさ、年齢、性格などを理解します。相手がどんなポジションにいるかもこの情報交換でわかるのです。
犬同士もケンカばかりで上下関係を決めるのではありません。この情報交換で互いにケガすることなく、自然と認めあうことが多いのです。
ニオイを嗅いで「あなたは私よりも上位です」と自分から認めたり、「自分よりも下位だね。分かってるよね」と自分が上位であることを認識しつつ、相手に立ち位置を伝えたりします。
この情報交換で互いの相性が分かる場合もあります。すぐに仲良くなる場合もありますし、お互いにじゃれ合う関係に発展することもあります。気弱な犬は情報交換した後にすぐ、お腹を見せて降参のポーズを取ることもあるのです。
犬にとってこの情報交換やあいさつはとても大切なことであり、欠かせない習慣でもあります。その度にお互いの立ち位置を認識できるので、上下関係がブレて不安定になることもないのです。