猫の介護を考える
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どれほど可愛がってきたとしても、猫は人間より寿命が短く、いずれは先に旅立ってしまいます。いつかは猫の介護のことも考えなければなりません。しかし人間の場合と違って、ペットの介護や老後の生活については、さほどサービスやシステムが整っていないのが現状です。
年老いてきた猫を世話するにあたって何ができるでしょうか?まずは、介護するにあたって一番最初に導入するであろう「猫用のオムツ」から考えてみましょう。
猫専用のオムツはない
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実は猫専用のオムツは販売されていません。理由は定かではありませんが、犬と身体の作りにそれほど違いがないため、コスト削減になるのかもしれません。
基本的に、猫には「超小型犬用」「犬・猫兼用」と書かれているものを使用します。つまりは、サイズさえあってしまえばどんな製品でも使用できるということになります。
もし市販のオムツを購入するのであれば、胴回りのサイズと形状が合ったものを選んでください。胴回りのサイズが合っていなければ、当然ですが隙間から漏れ出します。オス用は腹巻のような形で、メス用は尻尾を出してすっぽりと覆う形になっているため、やはり形状が合わないと漏れ出してしまいます。
メスの小型犬用を使用すれば、オス猫でもメス猫でも大抵はカバーできます。
オムツの手作りに挑戦しよう!
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それでも、粗相が多くなってくるにつれ費用が問題になることがあります。30枚入りで2,000円前後の犬猫用オムツも、毎日2~3枚と使用枚数が多くなってくると馬鹿になりません。特に人間用と比べると割高に感じるため、手作りで代用オムツを作る飼い主は少なくありません。
そこで、今回は猫用オムツを手作りするアイデアをご紹介します。
新生児用のオムツを活用する
新生児用のオムツは、猫用オムツに代用する定番アイテムです。
新生児のオムツのメリットは、犬猫用に比べるととにかく安いということで、84~90枚入りで1,300~1,400円です。
圧倒的に安く、しかもどこでも手に入れられるため、身近にペットショップがない地域に住んでいる方でも簡単に猫用オムツを調達できます。大きいタイプと小さいタイプがあり、サイズも柔軟に選べるのが特徴です。
まずは新生児用のオムツを広げて、張り付けるテープの面が上に来るように広げます。そして、尻尾が当たる部分に切り込みを入れます。犬猫用オムツを見本に買っても良いでしょう。あるいは実際に当ててみて、位置を確認しながら切り込みを入れても構いません。
あまりに緩いと漏れてしまいますが、キツイと動きにくくなるため、適度なサイズの切れ込みを探っていきましょう。新生児のオムツなら、1~2枚切るのに失敗したところで無駄になる費用は知れています。
切れ目を入れたら、そこから綿や素材が落ちてこないよう、必要なら補強しましょう。紙テープやセロハンテープで貼り付けます。
これで準備完了ですが、オムツの端に付いているギャザーが気になり、歩きにくくて自分で外してしまう猫もいるようです。吸水パッドが密着できるように、体にフィットして包み込むのがギャザーの目的ですが、内側と外側の2枚構造になっているものがほとんどです。
猫の場合は排泄物の量も少ないため、外側のギャザーは切ってしまっても問題ないでしょう。切った面が気にならないように、出来るだけまっすぐに切ってやると良いでしょう。
オムツを装着した後は、気になっていないか、動きにくそうにしていないかを観察してください。気になるようであれば形状や切り方の工夫を、動きにくそうにしていればサイズの変更が必要かもしれません。
上手くいけば、粗相をして脚やでん部を濡らしてしまうよりも快適に過ごせるはずです。
100円ショップで工夫する
100円ショップで手に入るアイテムを使って、猫用おむつを自作する飼い主もいます。費用が安く済むことと、新生児用のオムツパッケージのように何十枚も必要としない場面で役立ちます。
100円ショップにある紳士用靴下やストッキング、レッグウォーマー、尿取りパッド、女性用の生理用ナプキンなどを使用し、排泄物を吸収する部分と、全体を覆う部分を自作します。
靴下やレッグウォーマーはフィット感があり、動いても取れないのが利点だそうです。これに尿取りパッドやナプキンを組み合わせれば、確かに簡単に猫用オムツを自作出来ます。
靴下やレッグウォーマーには、足と尻尾を通す穴を開けます。サイズが重要なため、愛猫の胴回りや太ももの太さを計っておきましょう。
これはどちらかと言えば一時的な措置です。マーキングの癖が治らない猫や、家を空ける間に粗相を防ぐなど、一時的にオムツを使用するシチュエーションで利用するようです。
確かに、毎日100円ショップのアイテムを加工するとなると手間と時間がかかるため、老齢や病気で毎日オムツが必要な猫には新生児用のおむつを買った方が、経済的で時短にもなるでしょう。
猫の介護は増える
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以前の日本では、ペットを飼育する環境は酷いものでした。犬や猫にネギの入った味噌汁を与えることは普通で、そもそも十分なエサを与えることすら出来ていなかった時代に比べると、現代のペットを取り巻く環境ははるかに改善されていると言えます。
しかし、ペットの寿命が延びたことでそれに伴う問題も発生しています。寿命こそ延びたものの、その寿命まで若さを維持できるということではありません。人間社会でも「人生100年時代」が到来したと言われるように、猫の世界でも高齢に伴って今までになかった苦労が増えていきます。
現在では、家庭で飼育されている猫は平均で15年ほど生きます。1980年当時は3~4年だった寿命と比べると、現代との著しい違いが分かります。
もちろん、介護に伴う苦労は猫を世話する飼い主の努力の結果であると考えると素晴らしいことです。
しかし、実際の介護や生活にはどのように取り組めばいいのでしょうか?今現在愛猫が元気にしているという飼い主の方でも、将来必ず訪れる介護の内容を知っておくべきです。
介護の内容
高齢になるにつれて、歩行が難しくなります。関節の痛みを伴う疾患や、糖尿病に起因する歩行困難、あるいは老化による筋力低下などもあるでしょう。
猫も今まで高いところに簡単にジャンプできていたのに、年を取るにつれてあまりジャンプしなくなります。高いところはもちろん、走ることも何かを追いかけることも少なくなり、一日中寝ているかじっと休んでいることが増えるでしょう。
そして、やがては歩くことも満足にできなくなり、その場で粗相してしまうことも増えていきます。もちろん死ぬ直前まで元気な猫もおり、個体差が非常に大きく関係します。
歩けない猫には排せつ介助やマッサージが必要です。一日に数回トイレに連れて行ってあげることや、床ずれや血行不良を防ぐためにマッサージを施すことも想定しなければなりません。
エサはどうでしょうか?自分で食事できるうちは問題ありませんが、やがて食欲の低下だけでなく、自分で食べることも難しくなることがあります。好物を与えても食べようとせず、むしろ何かを与える度に嘔吐してしまうこともあるかもしれません。
いよいよ食欲がなくなってくれば、強制給餌という手段もちらつくかもしれません。文字通り餌を強制的に食べさせるのが強制給餌ですが、大抵食欲が全くないほど弱ったり老化が進んでいたりする状態の猫は、食べるのも嫌がります。
その上、物をある程度咀嚼して飲み込む力が残っていなければ、強制給餌さえ役に立ちません。
まずは今与えているフードを見直して、より食欲をそそるものがないかどうかを調べてみましょう。ドライフードをウェットフードに切り替えたり、ミルクでふやかしたり、上からウェットフードをトッピングしたり、あるいはまたたびや茹でたささみを混ぜることで食いつきがある程度良くなるかもしれません。
食欲はあるものの、体を動かせずフードボウルまで口が届かない場合はどうでしょうか?手やスプーンで、または注射器のようなシリンジなどで与えられるはずです。この方法で与えてみて嫌がらないようであれば、しばらくは食事介助で栄養補給できます。
最終的には、チューブで栄養を摂るなどの方法もありますが、愛猫の健康状態や費用などと現実的な折り合いをつけなければならないでしょう。
運動能力の低下と関係がありますが、排泄介助も猫が高齢になるにつれて取り組まなければならない問題です。トイレまで歩く力がなくなったり、排泄する体力や筋力の衰えてしまったり、痴ほうなどでトイレの場所が分からなくなったり、トイレまで我慢できなくなったりなどの理由が想定されます。
このような状態では粗相することが増えるばかりか、起き上がれないまま漏らしてしまうと自分の体も汚してしまうため、毎日何度もオムツをかえたりペットシートを変えたりする必要があります。
冒頭で紹介したような工夫を取り入れると、オムツの交換や調達も少しは簡単になるかもしれません。それでも、来る日も来る日もオムツを取り替えてやらなければならないのは、苦労であるとともに苦しみを生じさせる面もあるでしょう。