犬にマスカットをあげてもいいの?
Monika Wisniewska/shutterstock.com
人間にとって体に良いものが動物の体にも良いとは限りません。場合によっては、動物にとって悪いものである場合もあります。例えば、チョコレートは犬に食べさせてはいけないものとされています。チョコレートについては、カカオに含まれているテオブロミンが中毒を引き起こすことがあるのです。
玉ねぎについても、玉ねぎに含まれているアリルプロピルジスルフアイドという成分が血液の中の赤血球を破壊する場合があります。
同様に、ぶどうの一品種である「マスカット」も危険があると考えられています。マスカットが大好きという方は多いことでしょう。毎年美味しいぶどうを求めて、食べ比べをする人すらいるかもしれません。甘くてさっぱりした味わいがついついクセになり、いくつでも食べたいと思うこともあるでしょう。
マスカットのパリッとした食感やジューシーな果実は、ブドウの中でも大人気な品種です。栄養も豊富ですし、なおかつ美味しさも堪能できます。日本では「シャインマスカット」や「マスカットオブ・アレキサンドリア」といった品種は特に人気が高く、皮をむかずにまるごと食べられるのが特徴です。
自分が食べて美味しかったものはぜひ、他の人にも教えてあげたくなりますね。マスカットを家族に食べさせてあげたいと思うのはもちろんのこと、大切なペットである愛犬にも食べさせてあげたいと思う飼い主さんもいるかもしれません。愛犬は大切な家族の一員でもあり、子どものような存在だからです。
では、マスカットを食べさせても良いでしょうか。健康に何らかの影響を与えてしまうことがあるでしょうか?これらについて取り上げていきたいと思います!実は、犬にぶどう・マスカットを食べさせてはいけないのです。そこには、意外な落とし穴があります。
犬にマスカットを食べさせてはいけない!その理由とは
Irina Filkova/shutterstock.com
実は、犬にはマスカットを食べさせてはいけないと言われています。それは近年になって理解が広まった「ぶどう中毒」による危険性が関係しています。マスカットもぶどうの一品種ですから、同様の危険があると考えられているのです。
犬がマスカットを含め、ぶどうを食べると、急性腎不全になってしまう可能性があると言われています。急性腎不全にまで進んでしまうのは、ぶどうを食べてから大体2~3日後と言われています。
ぶどうやレーズンを摂取した犬の中毒の症状が報告されるようになったのは、2001年頃からです。そんなに昔のことではなく、最近になって指摘されるようになりました。
それは、犬がぶどうを大量に摂取した後に、そろって急性腎不全を起こすという事故があったためです。その後も同様の事故が数年間にわたり各地で報告され続けました。残念ながら命を落とすケースもありました。
そのような被害報告が重なったため、ぶどうは犬にとって危険な食べ物であるという認識が飼い主の間で広まっていったわけです。
何が原因で中毒症状を起こすのかについては諸説あります。例えば、ぶどうに付着したカビ毒、農薬が原因ではないかとする説があります。
他にも、ビタミンDの類似の物質が原因とする説もあり、さらには、まだ解明されていないぶどうの成分が原因とする説や、ぶどうにはシュウ酸が多く含まれており、シュウ酸カルシウム結石を作りやすいために腎臓機能に障害を起こしているのではないかという説もあります。
いずれの説も確証があるわけではなく、原因が特定されているわけではありませんが、一般的な症状としては、食べてから2時間から3時間、あるいは5時間後に食欲不振、水をたくさん飲む、元気がなくなる、下痢や嘔吐、腹痛などの症状が出る可能性があります。
他にも呼吸が荒くなることがあるかもしれません。ぶどうの成分により腎臓などの機能の低下が見られて、脱水症状などから呼吸が荒くなっていることも考えられます。体温調節がままならなくなって、舌を出して体温を調節する犬はこの症状が顕著に現れます。
急に悪化する可能性もあります。それに伴って急性腎不全の症状が発症する場合もあります。それ以外にも脱水症状が見られたり、腎臓の痛みにより背中を丸めてすごしていたり、何かぼーっとしているような状況であれば注意が必要となってきます。背中を丸めているのは、中毒の影響で腎臓に痛みが生じ、そのために背中を丸めて耐えているケースであるとも考えられます。
腎不全とは
Igor Normann/shutterstock.com
そもそも腎不全とは、本来体の毒素や老廃物を尿として排出する役割を持つ腎臓が、その機能の75パーセントを失うことを言います。不全とは、不完全とか不良を意味する言葉です。それで腎不全とは、腎臓の機能が不完全、不良となる状態のことをいい、腎臓機能が弱り役割を果たせなくなる病気のことを言います。
腎不全になると、血液中の毒素や老廃物をろ過する機能が上手く働かなくなり、尿毒症や高カリウム血症を引き起こしてしまい、命に関わる場合もあります。症状が急激に悪化、進行して行くものを急性腎不全と呼びます。
意識がもうろうとしてしているなら危険です。普段気に入っているおもちゃに反応しなくなったり、動くものに反応しなくなったり、声掛けをしても反応が薄い場合、既に意識がもうろうとしている可能性があります。こういう状況になると危険度が高いです。
急性腎不全の場合には、腎臓の機能の悪化がなんと数時間から数日で進むことから、とても危険であると言えます。おしっこの色が変色したり、むくみなどの症状が現れたり、おしっこが出にくくなったりします。最悪の場合死に至る可能性もあります。
おしっこの量が減るのも危険です。中毒により腎機能が破壊され、体内で尿が作られなくなっている可能性があります。そうなると体内の毒素を排出できなくなり、内臓の機能障害へとつながって行く場合があります。最悪の場合死に至る状態であると考えられます。
人もそうですが、犬も一度破壊された腎臓の機能は改善することはないのです。そして慢性腎不全になると、通常腎機能の回復は見込めません。透析になってしまったり、最悪の場合には死に至ったりする場合もあるのです。一方、急性腎不全の場合には、適切な処理を行うことができれば腎機能が回復する可能性があります。
加えて、犬がぶどうアレルギーだったり、ぶどうが体質に合わなかったりする場合は、状況によっては下痢をしてしまう、便が緩くなる、湿疹、食べてすぐに吐いてしまうといった症状が出る場合もあります。
そのため、犬には、マスカットを含めぶどうは食べさせないのが良いでしょう。もしかすると少しなら大丈夫と考え、マスカットを食べさせてあげたいと思ってしまうかもしれません。
犬が中毒症状を起こすぶどうの量に関しては、体重1㎏につき30gとも言われています。体重5㎏の小さな犬であれば150g、つまりブドウ1房ということになります。
しかし、どれくらいの量で中毒症状を起こしてしまうかは、犬種や個体差も関係します。つまり、愛犬がぶどうを食べて中毒を起こすかどうかは、食べさせてみないとわからないというわけです。もちろんそのような危険は冒したくないのではないでしょうか。それで危険が伴うと分かっているのであれば、食べさせないのが安全です。
例えば、イギリスの動物の中毒サービスセンターでは、2005年にぶどうを食べたことによる中毒による死亡は2匹、2006年には5匹報告されています。たくさん食べても大丈夫な犬もいることでしょう。一方、たったの一口食べるだけで重症化してしまう犬もいるかもしれません。犬にはぶどうを食べさせないように気を付けましょう。