「うれしょん」には2つのパターンがある
うれしょんは、飼い主さんと犬の関係で変わります。
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うれしょんの要因は、文字通り「うれしいから、興奮しすぎて失禁」といった状態ですが、中にはちょっと違う反応が絡んでいることがあります。
まず、飼い犬を長年飼ってきた人だと、犬と人間の関係は常に主従関係が出来上がっていますが、そうでない家庭は、家族の中にちょっと対応が違う人がいるかもしれません。
犬を服従させようとか、ちょっと自分よりも犬を下に見ている人は、愛情もその時々で変わりやすいことが多いです。犬が何となく、その人と散歩するときは、「仕方がないから、付き合う」というような、あまり嬉しい感情を示しません。
卑屈に見えるほど犬に依存している場合は、飼い主さんが一人で犬を飼育している場合に、飼い主さん自身の精神が不安定なので、嬉しい時でも飼い主さんへの脅威と嬉しさが入り混じって、うれしょんをしているケースがあります。
気を付けたいうれしょんの対応
犬がうれしょんしたときに、誰でも少なからず慌てます。
おしっこが衣服にかかればビックリしますし、思わず声を上げたり飛びのいてしまうかも知れません。
冷静な人でも、濡れた衣服や床を早く掃除しなければならないとドタバタ雑巾を取りに行くことでしょう。けれどもこれらの行動は、犬を余計に興奮させ、なかなかうれしょんが直りません。
もちろん叱ってもいけません。最初は難しいことかも知れませんが、子犬の時期にはよくあることですので、犬の興奮が落ち着くまで静かに見守ってあげましょう。
着替えや掃除をしている姿はなるべく犬に見せないで、もし家の間取りの都合で犬が見ている場合でも、無言で淡々と片づけましょう。
めったに会わない大好きな人に会った時
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犬が飼い主さんを見て喜ぶ原因には、2つのパターンがあります。
まずは1日の中で滅多に見れない家族の存在です。飼い主さんが外で長時間働いている場合、その人自身も犬に接する機会が少ないために、帰宅したら思いっきり遊んであげたいという気持ちはあるはずです。
しかし飼い主さんが興奮してしまうと、それが逆に犬の興奮を増大させます。留守番の時間が長いかどうかに関わらず、犬は飼い主さんが帰宅すると大興奮です。
帰宅した飼い主さんが犬に構わなくても、飼い主さんの姿を見ただけで、あるいは帰って来る足音や車のエンジン音をきいただけでうれしょんしてしまう犬もいます。
けれども飼い主さんはどんなに愛おしくても、帰宅してすぐに犬に構うことはやめましょう。先ずは飼い主さん自身が荷物を置いて着替え、手を洗い、一服してから犬に声をかけてあげましょう。
悠然とした飼い主さんを見ていれば、犬は冷たいなんて思いませんからご心配なく。むしろ飼い主さんが出かけることが普通のことになり、遅くなっても必ず帰って来るということを確信できるようになります。
この確信は信頼とも言えます。うれしょんだけでなく、もし留守番中に部屋の中を荒らすとか、ベッドやおもちゃを噛み壊すといった問題行動がある犬でも、飼い主さんが必ず帰って来ると思えるようになれば解決することが多いのです。
飼い主のことを怖いと思っている時
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もう1つのパターンは服従による原因のものです。このときの犬の気持ちを言葉にすると、「私はかよわい犬です。ほら、おしっこも漏らします。お手柔らかにお願いします。」というものです。
飼い主さんにここまで自分を卑下して訴えなければならない犬は、なんだかかわいそうですね。飼い主さんが犬に対して叱り過ぎたり、飼い主さんが家族に対して声を荒げるのをよく見ている犬にこのようなうれしょんが見られることがあります。
子犬のころでも叱ることは避けてください。特に大きな声を出して、犬を委縮させるのはしつけとして逆効果です。
家族に子どもがいる場合は、犬が見ているところで厳しく叱ることもやめましょう。
家族どうしのけんかも犬を不安にさせますので犬のいない所で話し合うようにしてくださいね。
うれしょんの対策
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犬を喜ばせるしつけ、態度で充分。
嬉しくて飼い主さんに突進してきて、飛び上がって喜んでも、一緒になってその場で遊ぶのはやめましょう。大型犬ではこれが怪我のもとになります。
飛びつきは犬の足腰に負担をかけ、何年も経ってから歩くことができないような犬の病気を招きかねません。犬に飛びつかれて人間が転倒してしまうこともあります。
もし外で、よその人や幼い子どもに犬が飛びついて相手を傷つけてしまってはその人はもちろん、犬も飼い主さんも不幸になってしまいます。
まずは犬に対して冷静に対応し、帰宅したならしばらくは構わず、日常の作業を淡々と行ってください。吠える場合は、無視したまま犬を残して部屋を出るか表情を変えず「おすわり」などの指示を与えます。
他には喜んで突進して来たら、低姿勢で受け止めて体を抱きしめる方法も有効です。その際に背中や胸、額や顔全体をなでるのも有効です。慣れてくると、両手で優しく顔を覆って視界を遮ると、ある程度落ち着いてくれます。
おとなしくなってから、ゆっくりボディタッチすると、犬も満足し興奮から覚めることが多いです。
しつけで叱ると、余計にうれしょんしやすくなる。
最も間違った対応が、喜んでいる時でも、怒って吠えている時でも同様に、「大声で叱ること」です。
これは、経験の浅い犬の管理者がお店でもよくやります。
犬に「人間の言葉」は通用しませんし、意味はありません。
犬は状況を見て行動するため、人の言葉は合図でしかないのです。犬が興奮して騒いでいるときに大声を出して叱っても、犬にはそれは「ワンワン吠えている」ようにしか見えません。
犬は一緒に遊んでくれる人が大好きですが、犬の興奮をあおるように一緒に興奮している人間を頼もしいリーダーとして尊敬することはできません。いつまで経っても犬と同じかそれ以下のレベルの存在としか認識してくれません。
だからと言って喜んでいる犬を怖がらせるようなことをするのも、犬が混乱する元ですからもちろんいけません。言葉で服従させようとすると、必ず失敗します。
犬のうれしょんは、服従も意味しています。それに対し、「怒って対応」というのは間違っていませんか?
自分が昔の恩師に街で遭遇して、近づいたらビンタを食らったとしたらどうでしょうか?犬の興奮を抑えるのは、ハイテンションをシラケさせることです。
自分も一緒になって興奮していれば、効果は全くありません。
犬をあまりオーバーな態度で接するのは正しくありません。まずは飼い主であるあなたが、一番落ち着いて大人の対応をしてあげるのが大切なのです。