人気ゲーム機「プレイステーション5」(PS5)は、ゲームハードとして高い性能が評価されている。一方で、インターネット掲示板では「PS5の専用ソフトが少ない」との嘆きを見かける。
前世代機の「プレイステーション4」や、米マイクロソフトの「Xbox Series X」「Xbox Series S」、あるいはパソコンでも遊べるソフトばかりとの指摘だ。発売からもうすぐ1年。PS5専用ソフトが少ない理由を調べた。
「移行期間」はPS3→PS4でもあった
ECサイトアマゾンの「売れ筋ランキング」で、PS5用ソフトを見てみた。21年10月22日18時現在、ランキング上位10本のうち、PS5でしか遊べないゲームタイトルは「ラチェット&クランク パラレル・トラブル」のみだ。
他の9タイトルは、前世代機のPS4版も同時に展開されているいわゆる「縦マルチ」ソフトか、他のハード版も出ている「横マルチ」ソフトかのいずれかだった。
ゲームライターの松井ムネタツ氏に取材した。PS5でしか遊べないソフトは現状少なく、やはり「PS4や他機種でも遊べる」ものがほとんどだと裏付けてくれた。
ただ、これまでも新ハードが発売されてから2年ほどは「移行期間」のような形で、「前世代」機と「現世代」機の両方で同じタイトルのゲームがリリースされることが多かったと松井氏は話す。PS3からPS4への移行時も、同様だったとのこと。
普及しきっていない段階で、最新のハードのみに対応したソフトを出しても、高い収益を期待しづらい事情があるからだ。現在のPS5も、PS4からの移行期間にあたるとの指摘だ。
またPS5は、PS4と高い互換性がある。ゲームソフトメーカーからすれば、ひとまずPS4用にゲームを開発すれば、PS5でも動くゲームを作りやすいという。複数のハードで遊べるなら、多くのユーザーが触れられるメリットもある。こうした理由から、現状は、無理をして作り慣れていない「PS5でしか遊べないソフト」を開発する必要性が薄いのではないかと松井氏は話した。
多くの機種対応にする事情
なぜ他メーカーのハードでも遊べるタイトルも多いのか。
松井氏によると、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)、マイクロソフト、任天堂といった「プラットフォーマー」(ゲームハード会社)からリリースされるソフトは、そのメーカーのハードでしか遊べないものがほとんどだという。冒頭の「ラチェット&クランク パラレル・トラブル」も、PS5を手がけるSIEが販売するソフトだ。
一方、サードパーティー(ゲームハードメーカー以外のソフト会社)のソフトだと、「横マルチ」での展開が主流になりつつあるという。PC版も含め、なるべく多くの機種で出した方が、より多くのユーザーが楽しめる。そうなれば当然、より多くの販売本数を期待できるからだ。ここ数年で特にその傾向は強まっていると松井氏は述べた。
ゲームグラフィックの向上などにより、ソフト1本の制作にかかる人件費といった開発コストが増大。より高い収益性を求めるのには、こうしたコストを回収し利益を上げたいという事情のようだ。一方、1ハードで販売された1ソフトが売れる本数は、PS2(2000年発売)やPS3の時代と比べて減少しているという。
「以前は特定の機種だけで十分な売り上げが立つ場合もありました。今は開発費の高騰により1本でも多く売りたいので、1つの機種だけでは目標達成が難しいと判断すれば、他機種で展開する必要があります」
特定のハードで発売されたソフト単体の売り上げが落ちているのは、ゲーム市場が縮小したからではない。「今はゲームの種類も多く、遊び方も多様化していることが要因だと思います」。
「PS5欲しい」入荷不明でも開店前から並ぶ日曜日 行列に向かって店員がひと言