針と糸を駆使することで芸術的な作品を生み出すことが出来る刺繍。洋服やバッグなどに刺繍が施されていると、華やかで目に留まりますよね。そんな刺繍ですが、立体刺繍PieniSieni(@kippermum)さんがご投稿した「根が付いた立体刺繍の植物」が話題を集めています。それは今までの刺繍の概念を覆すほどの圧巻の作品。根が付いた植物の立体刺繍の発想も斬新で面白く一際、存在感を放っています。今回は制作秘話を伺いました。
生命力溢れる植物の立体刺繍のがすごい!
立体刺繍で制作した根っこ付きの植物たち。
あわよくば・・・よろしくお願いします#作品をみてくださいあわよくばフォローしてください祭 pic.twitter.com/99Mnx6XgUv— PieniSieni(ピエニシエニ)12月ひらかた手芸展@枚方蔦屋書店 (@kippermum) November 21, 2022
「立体刺繍で制作した根っこ付きの植物たち」という一言とともにツイートされた、立体刺繍作品を発見しました!この作品が目に入ったら、きっと皆さんの第一声は「すごい!」ではないでしょうか。手の込んだ、こだわりの作品に魅了されてしまいますね。
ツイートのリプ欄には、あまりにも素晴らしい立体刺繡に見惚れてしまう・植物の生命力を感じられて素敵といった絶賛の声が続々と寄せられ、注目を集めています。
・面白い!地表の綺麗さだけでなく、地中の根っこまで表した事で命を感じる!
・根っこまであるの初めて見ました。なんか、周りを惹き付ける綺麗さと生きるための貪欲さが同居している感じでいいですね!
・お花が素敵なのはもとより、野草の細くても生えるぞ!という感じや球根から出た根やそれぞれの表現に見入ってしまいました。アザミ?が一等好きです。
・お家に飾りたいです!可愛い。
制作者さんインタビュー
制作者さんの立体刺繍PieniSieni(@kippermum)さん(以下、PieniSieniさん)にお話を伺いました。PieniSieniさんは、コンテストで多数の受賞歴や、NHK「あさイチ」「すてきにハンドメイド」にも出演されたことがあるすごいお方です。
■プロフィールを教えてください。
PieniSIeni(ピエニシエニ) オフフープ®立体刺繍・フェルタート®刺繍・フェルタート®フラワー・オフニードル🄬フラワー作家。 日本フェルタート®協会代表理事をしています。
大学卒業後、電機メーカーのハード設計エンジニアとして勤務。 夫の留学を機に渡英しました。 2013年よりオフフープ®立体刺繍、フェルタート®フラワーの技法を考案、作品作りを開始し、花や昆虫をモチーフとした作品や緻密な刺繍と得意としています。
近年は台湾の伝統工芸・春仔花(纏花)をアレンジしたオフニードル🄬作品に力を入れています。 現在は日本フェルタート®協会代表理事として技法の普及に励み、講座、商品開発も精力的に行っています。
※より詳しいプロフィールの詳細はこちらをご覧ください。
■刺繍を始めたきっかけは?
帰国後に家を建てた時にカーテンやベッドカバーなどを手作りしました。 それを誰かに見てもらいたくてブログをはじめ、家の中を紹介したりしていました。そんな時ハンドメイドコミュニティサイト「アトリエ」に出会いレシピをあげるように……。
可愛いレシピが人気だったため、身近にあるフェルトを使った簡単に作れるお花などのレシピを紹介していました。 ただ続けていく上でどうしても作品が単調になってしまったので、フェルトに刺繍を施すなど装飾を加えていたら、我流の立体刺繍になりました。当時フェルトを土台にした立体刺繍という例が無く、作品をブログやSNSで公開していたら出版に繋がり、商標を取るなど今に至っています。
■根っこ付きの植物の刺繍は初めて目にしました。なぜ制作しようと思われましたか?
私は制作する事はもちろんですが、それ以上に「新しい技法を考える事」に喜びを感じるタイプのようです。植物などを表現する上で、それまで表現できなかった部位の「表現をする方法」のアイデアをブラッシュアップして技法として確立し、作品となった時の姿を見る喜びを得る為に手を動かしています。
そんな制作スタイルなので同じ作品を複数制作する事にあまり興味が無く生産性を求められるのは苦手です。また現状の非効率な制作スタイルが悩みのタネでもあります。(1つの大きな作品制作の為に同じ花を複数制作するのは苦にならないのですが……)根付きの作品を制作しようと思ったのは「根を表現する方法を見つけたから」であり、その根に花や葉を加えたらどうなるか?という好奇心を満たすために制作しました。
■根が付いた植物の刺繍作品でこだわられたところ、難しかったところなど教えてください。
こだわったところは、根は細いワイヤーに刺繍糸を1本どりで巻いて制作されています。手間はかかりますがワイヤーを入れる事により根の先から1本1本思い通りに成形する事が出来ます。
制作で難しかったところは、太いワイヤーに糸を巻くのは簡単なのですが、細いワイヤーは曲がってしまうため糸を巻く時の力加減が難しいです。
立体刺繍の講師もしているのですが、ワイヤーへの糸巻きは生徒が最も苦戦する技法の一つです。作品で注目して欲しいところは、根はもちろん花弁、葉の全てにワイヤーを入れているので各パーツの先端まで表現された動きを見ていただきたいですね。
■制作について教えてください。どのように作られていますか?
使用道具している道具は、刺繍針、ハサミ、ペンチ、ニッパー、目打ち、ピンセットなどです。刺繍糸の太さは、愛用しているのはDMCの25番刺繍糸です。これを1~3本どりで刺繍しています。
シートフェルトを裁断→ワイヤー入れ→刺繍→組み立てという流れで制作。制作時間は、全て手作業なので今回の根付きの花ですと1作品に2~3日かかります。
■大きな反響について、今の心境は?
Twitterをはじめて10年になりますが、最近になってやっとタグの重要性を知りました。基本的な事なのでしょうが魅力的なタグに対して適切な内容をタイミングよく出す。Twitterは生ものであり自分から参加する姿勢が必要なのだと痛感しています。
タグの重要性に気付く前は「Twitterでは私の作品は受け入れてもらえないのかも」と思っていました。ですが反響をいただけてからは「良い作品を制作し続ければ受け入れてもらえる可能性がある」という心境に変化してきました。
■今後制作してみたい作品は?
最近、新しい技法でラディッシュの試作をしました。この方法を使ってさらに大根やカブなど野菜のモチーフを増やしたいと考えています。また来年はタコやイカや貝類など海の生き物にも手を伸ばす予定です。
PieniSieniさん、お忙しい中、立体刺繡の奥深い世界をお話しいただきありがとうございました。
最後に、PieniSieniさんに今後の夢は?というご質問を投げかけたところ「おばあちゃんになっても楽しく制作を続けることです。できればストレスフリーが良いですね。」と語られていました。これからもPieniSieniさんの心に刺さる素晴らしい作品を長くお目にかかれるのを楽しみにしています。
見ているだけでワクワクするPieniSieniさんの作品から今後も目が離せませんね。作品はHP(https://pienisieni.com)・ Blog(https://pienisieni.exblog.jp)・Twitter(@kippermum)・instagram(@pienikorvasieni)などでぜひご覧ください。
圧巻といえば、途方もない時間をかけて制作されている「神業の紙マイクラ」にも驚かされますよ。
取材協力:立体刺繍PieniSieni(@kippermum)