刺繍は糸と針を用いて布や革などに装飾を施す技術のこと。小物や洋服などに刺繍があるとワンランク上のアクセントになります。立体感のあるデザインや、見た目にも華やかさがプラスされて素敵ですよね。そんな刺繍ですがTwitterにて、刺繍造形作家のあらいあさみ (@_utura_utura_)さんがご投稿した「手鞠金魚」が注目を集めています。全て刺繍で仕上げられている分、幾度も細かい作業工程を経て完成した力作なのです。今回は制作秘話を伺いました。
圧巻!刺繍だけで立体的な金魚を制作
#Twitter文化祭2022
フォロワーさんが増えたので、素敵なタグをお借りして自己紹介します
刺繍だけで手鞠のような立体金魚を作っています。
経年劣化が怖いので、接着剤は目のスワロフスキーのみ。
それ以外はパーツ作りから組み立てまで一本取りの糸でがんばって縫います pic.twitter.com/qwuKNgwPWN— あらいあさみ/刺繍造形作家 (@_utura_utura_) September 20, 2022
刺繍だけで手鞠のような金魚を制作されたというツイートを発見しました。ぷっくりとした愛くるしい金魚のフォルムや、今にも泳ぎ出しそうな躍動感もあり、素晴らしい作品ですね。細かい作業工程を経て完成しているのが素人目で見ても分かり、筆者はすっかり魅了されてしまいました。
ツイートのリプ欄には「刺繍だけで仕上げられているなんてすごい」「とても素敵な作品」「可愛い」といった声が寄せられ、高い技術力で仕上げられた、造形刺繍の金魚に絶賛の声と熱視線が集まっています。
制作者さんインタビュー
刺繍造形作家のあらいあさみ(@_utura_utura_)さん(以下、あらいさん)にお話を伺いました。
■ プロフィールや、刺繍造形を始められたきっかけを教えてください。
2014年から羊毛フェルトで作家活動をスタートさせました。ただ、私の製作方法では手首や指の神経を痛めてしまうため、5年前から刺繍の活動に切り替えました。手首を痛める前から刺繍には興味があって、特に「スタンプワーク」というワイヤーを仕込むことで刺繍を立体化する(主に花の作り方が広く知られています)技法に惹かれました。
その手法を応用して、刺繍で立体の動物を作ればみんなをビックリさせられるんじゃない?刺繍で造形するって言葉おもしろくない?って漠然と考えたのがきっかけです。
■手鞠金魚は、どのように作られているのでしょうか?
手毬金魚は22個のパーツから成り立っています。各種ヒレ(尾、背、胸、腹、尻)を上記の立体刺繍で、顔や胴体部のウロコは一般的な平面刺繍で作り、羊毛フェルト製の土台に縫い付けています。経年劣化が怖いので、組み立ての際に接着剤は使いません。
パーツを糸で固定し、パーツ間の隙間も刺繍で縫ってひたすら埋めていきます。言葉だけでは想像しにくいかもしれませんが……。
制作時間はリュウキンであれば、アクセサリーに使える小さめサイズで7日、レギュラーサイズで10日程度かかります。作る度に「こうすればもっと良くなる」って作業工程が増えて、作業時間短くなるどころかどんどん延びてます。
■制作する際にこだわられている点、難しい点を教えてください。
実は一番要になるのは、表から見えない羊毛フェルトの土台なんです。この形と大きさが正確でないとパーツの位置がずれ、見た目の印象も大きく変わります。羊毛フェルト作家は名乗れなくなってしまいましたが、かつて培った技術がひっそりと生きています。
■いいねやRTされるなど、反響がありますが今の心境は?
ひとりでチクチクちまちま作ってると、正直「何やってるんだろう自分……」と正気になる瞬間もありますし、果たして意味はあるのか?と頭に過ることもあります。Twitterで反応をたくさんいただけるとそれが払拭できると言いますか、続けてていいんだって安心する気持ちが大きいかもしれません。コメントなどもいただき励みになります。ありがとうございます。
あらいさんお忙しい中、造形刺繡制作の裏側を垣間見れるお話をしていただきありがとうございました。
今後の夢を最後に伺ったところ「もっとリアルな金魚や、鳥類、花の髪飾りなど、何年も前から構想だけは練り続けているので、それらをひとつひとつ形にしていきたいです。前職は演劇や映像作品に関わっていたので、自分の作品をなんらかの形で使ってもらえたらいいなぁと、ふんわり夢見ています。」と語られたあらいさん。
今後もあらいさんのワクワクするような心に響く作品が見られるのを楽しみにしております。
刺繍といえば、ゲームボーイソフトの基板の刺繍にも驚きますよ。
取材協力:あらいあさみ/刺繍造形作家(@_utura_utura_)