陶芸とは、陶器と磁器を中心とする、いわゆる「焼物(やきもの)」の技術史的、美術史的な展開についての呼称です。そんな陶芸ですが、Twitterにて、堀 貴春ceramic artist(@_taka_0130)さんがご投稿された、未来的な「昆虫」の陶芸作品が多くの方の熱視線を集めています。その作品は、見るものを惹きつける圧倒的存在感を放っているのです。今回は制作秘話を伺いました。
昆虫の陶芸作品が超絶かっこいい!
自分が持ってる昆虫の知識と焼成技術を活かし、進化を経た未来的な昆虫を陶芸で作っています。#陶芸 #磁器
#作品を載せて自分の作品を知ってもらおう pic.twitter.com/9mgmIAHRDZ— 堀 貴春 ceramic artist (@_taka_0130) December 20, 2022
「自分が持ってる昆虫の知識と焼成技術を活かし、進化を経た未来的な昆虫を陶芸で作っています。」というコメントと共に、陶芸作品の写真が掲載されたツイートを発見しました!陶芸作品なのに生命力が感じられ、今にも動き出しそうなリアルさです。
昆虫には、間接肢、触覚、羽など細やかなパーツもあり、繊細な陶芸作品を仕上げられるのはとてもご苦労があったのでしょうね。作品への情熱やこだわりを感じられるセンスあふれる作品の数々です。
制作者さんインタビュー
陶芸家の堀 貴春 ceramic artist(@_taka_0130)さん(以下、堀さん)にお話を伺いました。
■昆虫の陶芸を始められたきっかけは?
ーー小学生の頃に作家を目指すと決め、美術高校で将来自分が扱う素材を探り、陶芸の土に出会いました。その後、自分にしか作れない作品を考えた時に、昔から今も好きな昆虫を未来というテーマで作るようになりました。そのため、形が良く見える、素材としての美しさが際立っている磁器で作ることになりました。
■昆虫の作品は、図鑑などご覧になられて作られるのですか?
ーー私は昆虫を飼育しているので、基本的には自分が飼育してる物しか作りません。制作工程が長い為、それだけモチーフに対する想いが強くないと、制作途中で断念することになるので、必ず本物を見て、生態をしった上でその中から好きなモチーフを制作しています。画像を見ながら作ることは絶対にしないですね。
■特にこだわられているところは?
ーー常に心掛けているのは「本物を尊重すること」です。本物には今まで積み重ねてきた進化という「背景」があるからこそ形や色が美しいのであり、いくら外見を忠実に模刻、スキャンしてもそれと同じレベルに並ぶこともなければ、上回ることもない。
だからこそ同じ土俵では無く、その進化で形成された造形的な美しさや構造的な面白さを私なりに強調させることで、新たな昆虫、何億年後の進化の形を想像して本物が持つ「背景」を超える形を作る挑戦をしています。
■昆虫のフォルムも洗練されていて魅力的ですが、どのような道具を使用して造形されるのですか?
ーー造形の際は削る仕事が多いので、超硬カンナというタングステンでできた刃物で造形を作っていきます。磁器を削る際は、これでないと直ぐに刃がだめになってしまいます。
■クワガタの作品は、どのようなイメージで制作されたのでしょうか?
ーー5年前にクワガタの作品は一度作りましたが、その頃は造形や進化の過程をそこまで考えて作れていませんでした。2022年に入り、その辺をしっかりクリアした物を作りました。このクワガタは「音」がテーマになっており、超音波による空間認識能力を持った未知のクワガタをイメージしました。体の造形もそれに合わせた作りになっています。
■今後制作してみたい作品はございますか?
ーー今まで足し算をする作り方をしていて、このまま続けても、物が細密になるばかりで「わー凄い」というだけの作品になってしまうので、引き算を使いこなすためパーツ1つで作品として見せれるものを今年、来年とメインで制作、個展をします。
引き算を使いこなせるようになれば、今の作品もまた違うステップに行ける気がするので、まずは引き算だけの作品を作り、学び、最終的に引き算と足し算を組み合わせた雰囲気の作品を3年後に作る予定です。
堀さんお忙しい中、陶芸の奥深い世界を知ることができる素敵なお話をしていただきありがとうございました。
堀さんの陶芸作品は、さまざまな表現の可能性を日々追求されており、実物をご覧になりたい方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。来年も個展をされるということで、作品にお目にかかれる日を心待ちにしています!
昆虫といえば、椿象←は何と読む?昆虫の超難読漢字過ぎて頭を抱えますよ!
取材協力:堀 貴春 ceramic artist(@_taka_0130)