はじめに


「銭湯アート」といえば、昔から描かれてきたレトロな筆致の「富士山」が印象的ですが、絵画作家・Gravityfreeのお二人が描くアート作品はひと味もふた味も違います。まるで、野外フェスの会場に来たかのような軽快なタッチで人々の心を踊らせる彼らが描いた、都内の銭湯アートを5つご紹介します。

Photo:Gravityfree


①大黒様と弁天様が見守るパワースポット「ふくの湯」@千駄木


本駒込駅から徒歩約5分、田端駅から徒歩約15分の場所にある「ふくの湯」は1972年に創業、2011年にリニューアルオープンしました。多くのメディアに取り上げられてきたこちらは、モダンなデザイナーズ銭湯。風水を用い、七福神をモチーフとしたご利益がありそうな気分が味わえます。ラジウム温泉使用の「大黒天の湯」と薬湯中心の「弁財天の湯」があり、男女週替わりで楽しむことができるのも魅力です。
「めでたく華やかな福のある雰囲気で⼈気のお⾵呂ですね。9年前に男湯⼥湯の間仕切りに、⼤⿊天と弁財天を、2019年に鳳凰の天井画を制作しました。追加依頼の理由は分かりませんが、気に⼊ってもらえたんだと信じたいですけどね〜(笑)。もちろん僕らは気に⼊ってますよ」と、Gravityfreeのデジョーさんは話します。
▲鳳凰の天井画を描くGravityfreeのエイジさん

六角形のカランやタイルで作られた松の木のモザイク絵など、見どころいっぱいな浴場の中でもひときわ存在感を放つ、陶器製のつぼ湯に描かれた天井画にも注目です。


◆ふくの湯
住所:東京都文京区千駄木5-41-5
電話番号:03-3823-0371
定休日:年中無休
時間:11:00〜24:00(毎週土日祝祭日は8:00〜24:00)


②美人の湯が湧くシックな浴場でカッパの大宴会「戸越銀座温泉」@戸越


「戸越銀座温泉」は1960年に「中の湯」として創業し、2007年に改名・リニューアル。戸越駅から徒歩約3分、戸越銀座駅から徒歩約5分と駅チカな銭湯です。こちらの特徴は何といっても、美人の湯で知られる黒湯(炭酸水素塩冷鉱泉)が湧き出ること。露天風呂や電気風呂、スーパージェットバス、サウナなどさまざまなお風呂も楽しめます。
デジョーさんは、「オーナーさんに『⻑く湯に浸かっていられるように重い⾊や⾚い⾊は使わないのが銭湯絵の基本なんだけど、まぁ⾯⽩いじゃない』と、僕らの⾃由さと無知さをおもしろがってくれたことを覚えています。また描き替えの相談もいただけそうなので今度はもっと清涼感のある⾯⽩い絵を提案したいですね」と、次作への意欲を覗かせます。
▲日本を代表する銭湯絵師・中島盛夫さんとのコラボレーション

都内でも最古級の大型商店街・戸越銀座に佇む銭湯なので、ひとっ風呂浴びた帰りに食べ歩きができることも嬉しいポイント。温泉もアートも食も楽しめるスポットです。


◆戸越銀座温泉
住所:東京都品川区戸越2-1-6
電話番号:03-3782-7400
定休日:金曜
時間:15:00~25:00(日・祝は8:00~12:00の朝湯営業あり)


③大正ロマン×現代が調和する東京の道後温泉「蓮沼温泉」@蒲田


2017年にリニューアルオープンしたばかりの「はすぬま温泉」は、新しいはずなのに外観を見ただけでホッとする銭湯。それは、古き良き日本文化を彷彿とさせる、漆喰と木を効果的に使っているから。さらに、奥へ進むと大正ロマンが薫る道後温泉を彷彿とさせる内装に。ロビーのステンドグラスからは美しい光が注ぎます。
「新しくもどこか懐かしく旅の趣がある銭湯。仕切りの⽻⽬板に“旅情”をテーマにした花⿃⾵⽉に、四季を加えたさまざまな⽇本の⼟地を男湯⼥湯、合わせて10型描きました」とエイジさん。 こちらは、入り口の横にある看板に、外国人客が中はどういう構造かを動画で見られるようQRコードが掲示してあったり、ロビーの床に円形にくり抜かれた池があり、水音をBGMに鯉が気持ちよさそうに泳いでいます。実はこの池、デジタルサイネージ技術による映像なんだとか。和の雰囲気と現代技術が息づく、贅沢な造りも人気の銭湯です。


◆はすぬま温泉
住所:東京都大田区西蒲田6-16-11
電話番号:03-3734-0081
定休日:火曜
時間:15:00~25:00


④ブルーで統一されたクールな空間はホテルスパさながら「改良湯」@渋谷


第⼀次世界⼤戦中に建てられ、103年の歴史をもつ⽼舗。渋⾕と恵⽐寿の間に位置する「改良湯」は一見するとシンプルなマンションタイプの銭湯ですが、明治通りから歩くと見える横の外壁いっぱいに描かれた巨大なクジラの絵が目印です。2018年のリニューアル後、近代的な浴場に一変。
デジョーさんは「絵のテーマは、改良湯のコンセプトでもある "渋⾕CROSSING"。その昔、⽔⾞⼩屋がたくさんあったころの渋⾕と、さまざまな⽂化が交わる現代の渋⾕の街とが渋⾕川を中⼼に交差する図です」と、制作時のイメージを明かしてくれました。 間接照明にブルーライトが取り入れられた天井に、桶や椅子もブルーで統一された内観は、銭湯というよりホテルのスパのような雰囲気。男湯は100度、女湯は90度前後に設定されたサウナには木の優しい香りが漂い、ジャズが流れる洒脱さがまさにホット&クールです。


◆改良湯
住所:東京都渋谷区東2-19-9
電話番号:03-3400-5782
定休日:土曜
時間:月〜金曜15:00〜24:30、日・祝日13:00〜23:00


⑤都会の真ん中にある屋上露天風呂が大人気「光明泉」@中目黒


中目黒駅から徒歩約3分、都会のオアシスといえば「光明泉」です。1970年創業の親子三世代で継承するこちらは、2014年に全面改装オープン。ビビットオレンジの看板が電車からもよく見えるので、東横線ユーザーは見覚えがあるはず。
エイジさんは、「若者にもエブリデイ⼤⼈気の銭湯。こちらは富⼠⼭と光をテーマに依頼をいただきました。とにかくお⾵呂全体が淡いブルーの世界観だったので、絵も清涼感のあるブルーと太陽の光が不思議な形を成して、はじけるような絵にしました」と、お風呂全体の雰囲気とアートをマッチさせたそうです。 マンションタイプの2階が入り口で、その上にはなんと屋上露天風呂が! 周りは木製の枠で囲まれているので、女性でも安心して入浴できます。天気がいい夜には、吹き抜けの露天から星空を眺めるられることも。開放感バツグンのお湯で、きっとリフレッシュできるはず。


◆光明泉
住所:東京都目黒区上目黒1-6-1
電話番号:03-3463-9793
定休日:不定休 ※詳しくは、ホームページまたはお電話でお問合せください
時間:15:00〜25:00(最終受付入場24:30)


全5作品を制作した絵画作家・Gravityfreeとは…


Gravityfreeは、8g(エイジ ※写真左)さんとdjow(デジョー ※同右)さんから成る2人の絵画作家。 2002年活動開始以降、FUJI ROCK FESTIVALを中心とする野外音楽フェスやローカルイベントにて、バンドのようなフットワークでライブペイントショーや壁画制作などを行っています。アウトドアフットウェアブランド「KEEN」のアンバサダーとしても活躍中です。
最近のアート界の関心事は、ライブペイントするアーティストが一気に増えたこと。「今ではバトル形式のペイントイベントもよく見かけます。平行してアート業界にストリートアートがしっかり定着したの理由の一つに、Banksyの影響が大きくあったからだと思います」とデジョーさんは言います。

▼今後の予定は以下の通り
4月4日-5日 SYNCHRONICITY @ SHIBUYAO-EAST
4月11日 縄の市 @ 縄 , 長浜市滋賀県
4月26日 HEABESTA ROOM Vol.2 @ Thumbs up 横浜
5月10日 山鳴りFESTIVAL @ かかしの里 , 佐野市、栃木県
11月1日-10日@恵比寿Gallery KATAにてExhibitionを開催予定

おわりに


今回は、お湯に浸かって壁画を眺めると、夢のような時間が過ごせる…そんな癒しのひとときを満喫できる銭湯アートを5つご紹介しました。「ギャラリーや美術館に行くにはハードルが高い」という方は、お風呂とセットで楽しめる銭湯アートを気軽に楽しんでみませんか?
情報提供元: 旅色プラス