はじめに


鳩間島の小ささには驚きです。その内訳は、ちょっと歩いたらすぐ終わる唯一の集落と、さほど広くない森、以上! 行ってみると、だからこそ目に入る海率と森率の高さに圧倒され、開放的な人々に和みました。体感して初めてわかったことが詰まりすぎた島なのです。

Text&Photo:とまこ

まずは圧倒の鳩間ブルーをどうぞ


鳩間島へは石垣島からフェリーで。日帰りもできちゃいます


鳩間島へは石垣島からのフェリーでどうぞ。離島ターミナルから午前に2便、午後に1便往復しています。料金は往復4,510円(片道2,360円)。

始発は9時30分で、西表島の上原港経由で10時40 分ごろ到着します。次は10時50分で、先に鳩間島へ行き、その後上原へ向かうコースなので、乗船時間は短く到着は11時30分ごろ。帰りに使えるのは鳩間島を16時15分に発つ便のみで、上原を経由して17時25分ごろ石垣に戻ることになります。

滞在時間が短いなと心配になるかもしれません。でもご心配なく! 
鳩間島の小ささは、本気度が違います。なんてったって面積は1㎢ないのですから。もちろん島に泊まればより深く楽しめますが、日帰りでも充分満喫できますよ。

狭い島だからこその、レンタサイクルするメリット


小さな島なので、巡る方法としては自転車か歩きで十分です。もちろん、自転車の方が移動時間は短くはなりますが、集落以外は森に囲まれた土の道なのでスイスイとはいかず、ちょっと疲れるのでそれはご承知おきを。
個人的には自転車がお勧めです。多少なりとも速く目的地について、そこでよりのんびり過ごせるのはうれしいし、ワイルド気味な地帯を行くからこそ、自転車の威力が発揮されたこともあるんです。

生い茂る木々の中を進むのは、たとえ一本道でも自信がなくなるんですよね。これ以上進むか、引き返すかをチラっと考えるとき「自転車だから間違ってても戻ればいい」と強気になれることありました。また、どうやらイノシシの気配を過去一番近くに感じましたが「自転車だから逃げられる!」と命拾いした思いになったこともあります。完全にビビリの意見で恐縮です。

※本当にイノシシとご対面したら、相手を見ながら静かに素早くその場を離れてください。慌てた行動で相手を興奮させてはいけません。

自転車を借りるのも鳩間流。ゆるい感じがすごくいい


自転車は集落内の「あやぐ」で借りられますよ。一見お店の気配はないので、道端にある星砂の無人販売の棚を目印にして下さい、その家です。わたしが行った時は誰もいなかったので「こんにちはー」と何度か声をはったら奥の畑からおじいが出てきてくれました(笑)。料金は1日500円。細かく時間切りしないのもいいでしょう。返却するときは勝手に道端においておけばいいそうです(笑)。

◆あやぐ
住所:沖縄県八重山郡竹富町鳩間39
電話:0980-85-6627

鳩間島巡りスタート。まずは前の浜で青の洗礼をうけて!


港に着いた段階で、きっと目がまん丸になっちゃうと思います。鳩間島の青はハンパないんですよ! その感動のまま、まずは港すぐ隣の前の浜に行くのはいかがですか? 
ちょっとまたいだらすごい色のビーチに着いちゃった感も、ここが他の離島よりも断然コンパクトで、キレイが凝縮されたおとぎ話みたいな島だとしらしめてくれるはずです。

気持ちに任せていつでも海に入れるよう、朝に宿を出る段階で水着を服の中に仕込んでおくのもいいですね。また、動画のようにザブザブ服のまま海に入ってもすぐ乾くので、細かいことは気にせずに初めのインパクトを存分に楽しんでください。

これは島を南側上空から見ています。集落はやさしい浅瀬に囲まれているんですね。

「島茶屋あだなし」で、都会的なハイカラ八重山そばを


続いてランチにしましょうか。前の浜のある集落の「島茶屋あだなし」で、ちょっと変わった八重山そばがいただけますよ。
「オリジナル八重山そば」(700円)が運ばれてきて、見て、食べて、びっくりしました。これまで他の離島で食べたのとは、方向性がだいぶ違ったから。

まず見た目が大胆でしょう。2種のお肉がどっさり、野菜もたっぷり、スープはなんと赤い! いただくと、ふだんの八重山そばとは違う扉を開けているお味でした。ピリ辛味噌と豚の旨味が野菜と麺に絡みつきます。食感いろいろ口の中が楽しい! 不思議とくどさはなく、スマートな後口なのもうれしいところ。都会のカフェランチで今週の沖縄スペシャルとして提供されているのが想像つく、おしゃれな味に仕上がっています。

ほとんど食べ終え、カメラのモニタで写真チェックをしていたら
「写真キレイですね、見えちゃいました」と爽やかな店員さん。
「あれ? この島の方じゃないですよね?」雰囲気が都会的な男性なんです、顔つきも違う。
「生まれは違うけど、この島が故郷です。ここのオーナーが里子にしてくれたんですよ。今は東京で働いてるけど帰省中でお手伝い」

この島は「瑠璃の島」というドラマのモデルになったと聞きました。廃校寸前の小学校を存続させるために里子として迎えられた少女のお話。

一気にいろんな合点がいきました。実は来る前、小さい島だから多少は排他的な雰囲気かも? と予想していたのです。なのに上陸して短い間に感じたのは、むしろ他よりウエルカム。そばさえ他文化を取り入れた味な気がするし。それは、各地の子供を受け入れ、同時に文化も受け入れ、包容力のある島になっていった経緯があるのですね。歴史に感動。まあ、あくまで推察なんですけど。

◆「島茶屋あだなし」
営業時間: 8:00~17:00 
電話: 0997-76-0619

他では味わえない、ワイルドな孤独感をぜひどうぞ! 船原浜へ


この辺で前述の自転車を借りましょう。あだなしの入り口のある道を山の方へ少し進んだ右手です。借りたらまずは、島の東側にある船原浜まで行きましょうか。島をぐるっと囲んでいる土の道を進みます。5分も漕ぐと、二股に別れる道があって「船原浜へ」という木の矢印がありますからそちらへどうぞ。
到着です。小さくて、人もおらず、プライベート感半端ないビーチ。
ここは、前の浜や、この後ご紹介する屋良浜と断然違う雰囲気です。他に島が見えないんです! ぽつねんと大海原に浮かんだ岩だらけの陸地に、ぽつねんと立ち尽くしている感覚。冒険物語がスタートしそうな異空間なんです。
これは島を北の上空から見ています。北の海は深い! それもあり南側に集落ができたのですね。

のんびり輝く南の島らしいビーチを堪能。平和な屋良浜へ。


さて、島の西側へ移動しましょうか。再び集落へ戻ったら西へ抜け外周する土の道へ。東側よりは広めでわかりやすいですよ。5分も走れば、左手に「屋良浜」と書かれた木の看板を見つけられます。
午後は西に陽が当たる時間、この浜も青が際立って見えます。砂は白くやわらかで、波はとっても穏やか。文句のつけようがありません、これぞ南の島のビーチ!

前に見えているのは西表島です。この辺りが一番西表と近いんです。実際ここに立つと、あの島に大きな安心感をおぼえるんですよ。前に島影のない船原浜ではなかった感じ。鳩間は小さな島だけど、すぐそこに西表島があって、いろんな人や動物が生きている。それを思うだけで、とっても頼もしい気持ちになるんです。

絶景を高台から。御嶽(うたき)経由で灯台へ


きっとそろそろ、帰りの便の出航まで、あまり時間は残っていません。最後は自転車を返す「あやぐ」の近くへ行きましょう。
あやぐの前を通り過ぎて坂を登っていくと、まず右手に「御嶽(うたき)」が。ここは琉球王国の時代から敬われてきたとても神聖な場所ですので観光客は入れません。でも階段の下から見上げるだけでなにか迫力を感じまして。この島の歴史と信仰に興味が湧くかも?
そのまま進むとすぐ左手に「鳩間中森」と書かれた石碑があるのでそちらへどうぞ。森林浴そのものの小道を進むと灯台が。ここからの眺めも爽快です! 緑を挟んで眺める海の絶景も、また違う情緒があるんです。

さぁ、そろそろ出航時間を気にしないと。でも港まで500mほどの下り坂で、自転車を返す(道に停めるだけ、手続きなし)あやぐもその途中にあるので慌てすぎなくても大丈夫。半日の出来事を振り返りつつ、今回の鳩間最後の道を楽しんでください。

おわりに


鳩間島は、極端に小さい島だからこその「初めて」がいっぱい待っていてくれる、他にはなかなかない島です。ぜひいろんな驚きと感動を体感していただきたいです。

◆とまこ
明治大学在学中からバックパッカーとしてデビューし、卒業後は秘境ツアーコンダクターに。現在は旅作家&おしゃれパッカーとして本の執筆や講演、TV出演など多方面で活躍中。著書に『離婚して、インド』(幻冬舎文庫)、『世界の国で美しくなる!』(幻冬舎)、『台湾で朝食を 日常よ、さようなら!』(メディアパル)など既刊12冊。2018年5月14日には奄美観光大使に就任。


情報提供元: 旅色プラス